【京成杯AH回顧】ソウルラッシュが59キロを背負いV 松山弘平騎手はサマージョッキーズシリーズ優勝
勝木淳
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サマーマイルシリーズはメイショウシンタケ
サマーシリーズは2000が該当馬なし、スプリントはジャスパークローネが最終戦を前に優勝を決め、残るはマイルとジョッキーの2部門だった。京成杯AHはもとからGⅠの前哨戦というより、サマーシリーズの集大成という位置づけであり、今年は例年以上に力の入る一戦だった。
マイルシリーズの優勝の権利はウイングレイテスト、ラインベック、メイショウシンタケ、ミッキーブリランテが保有しており、結果的には最先着の2着ウイングレイテストに4着メイショウシンタケが4ポイント差をつけ勝利した。サマーシリーズはポイントのほかに対象レースの勝利が条件でもあり、米子Sを勝ったメイショウシンタケは本レース勝利が優勝条件ではなく、ウイングレイテストやラインベックは勝たなくてはいけなかった。この立ち位置の違いもレースに影響しただろうか。
対してサマージョッキーズシリーズは日曜日に韓国で騎乗した首位の川田将雅騎手に対し、このレースに出走したなかでは、松山弘平騎手、西村淳也騎手らが逆転を狙った。ソウルラッシュの勝利によって、松山騎手は10ポイントを加算し、シリーズ逆転優勝を飾った。
ソウルラッシュ、5歳秋に完成の予感
終わってみれば、サマーシリーズには出走していない実績馬ソウルラッシュが勝利を収めたが、ゴール寸前で先に抜け出したウイングレイテストをねじ伏せたところに底力をみた。競馬の展開としては完全に同馬のものだった。これ以上ない手順で抜け出しただけに、悔しい結果だった。一方、ソウルラッシュは内枠を利して、ウイングレイテストの背後のインというポジションを確保し、同馬の動きを巧みに利用した。そんな戦略もさることながら、これに対応したソウルラッシュの変化には注目だ。
ソウルラッシュの条件戦脱出は中山芝1600mを連勝したことによって成し遂げられた。このときは好位から器用な立ち回りを見せていたが、続くマイラーズCでは後方から直線一気を決め、これ以降、末脚を生かす方向へ競馬をシフトさせていった。重賞とならば、さすがにそこまで自由に立ち回らせてもらえなかったかもしれない。しかし、富士S2着、マイラーズC3着は位置取りが少し前になったときであり、これがソウルラッシュの強みだ。
ルーラーシップ産駒の特徴は器用な立ち回りと最後のしぶとさ。これで相手の瞬発力を封じる。ルーラーシップも5歳でGⅠに手が届いたように、産駒も若いころはちょっとじれったいぐらいの晩成型が多い。ソウルラッシュもピークはまだこれからではないか。それだけに秋初戦をこの形で勝利したことは大きく、今秋の楽しみにつながっていく。
レースを支配したウイングレイテスト
2着ウイングレイテストはこれ以上ない競馬を展開した。レースを支配したのはこの馬だったといっていい。スタートを決め、飛び出したグラニットの背後を外枠から手早くとり、引っ張る逃げ馬を利用して、タイミングを計っていた。前半800m45.8でマイル戦らしいスピード勝負になり、後半800mは11.2-11.2-11.8-11.6。直線手前まで速いラップが続いたため、後ろの末脚をうまく削りとることもできた。ツキがなかったのは、背後をソウルラッシュにとられたことのみで、これ以外は完璧だっただけに勝ちかった。
3着ミスニューヨークはコース巧者らしい立ち回りで伸びてきた。終い一手だった馬が次第に流れに乗れるようになり結果を出せたが、近2戦は後ろに回る競馬が目立っていただけに、今回、好位をとれたことは収穫だ。6歳牝馬であり、もう現役生活は長くはないだろうが、得意な舞台であれば、もうひと花あってもいい。
メイショウシンタケは4着に入り、サマーマイルシリーズ優勝を決めた。後方からレースを進めることになり、展開としては勝利から遠ざかる形ではあったが、上がり最速33.2でただ1頭、伸びてきた。腹をくくった騎乗はメイショウシンタケの力を信じた競馬だった。理想は米子Sのようにもう少し消耗戦になることだろう。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
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