【札幌記念】歴代最速上がりはアドマイヤムーンの33.5秒 最多勝騎手など「記録」を振り返る

緒方きしん

歴代最速上がり3Fなど、札幌記念に関するデータ,ⒸSPAIA

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北海道で無敗のアドマイヤムーン

夏競馬の盛り上がりがピークを迎える札幌記念。過去には様々な名勝負が繰り広げられてきたが、札幌競馬場というコースでブエナビスタといった末脚自慢が惜しくも届かない…という波乱も数々あった。

その中で、1986年以降の札幌記念で最速の上がり3Fを記録したのが、アドマイヤムーンだ。2番手のサクラプレジデントが33.7で、上がり3F33秒台はわずか5頭のみ。あとは34以上というなか、33.5という圧倒的なタイムで差し切った。

アドマイヤムーンはデビュー戦を函館で勝利し、その後はクローバー賞、札幌2歳Sを連勝と、北海道開催を得意としていた。特にデビュー3戦目の札幌2歳Sはマツリダゴッホ、フラムドパシオンといった実力馬が顔を揃えた一戦だったが、2着に1馬身半差をつけ快勝した。

北海道開催が終わり、アドマイヤムーンはラジオたんぱ杯2歳Sでサクラメガワンダーにハナ差届かず初の黒星を喫した。しかし、鞍上が武豊騎手に変わると共同通信杯、弥生賞と連勝。クラシック初戦・皐月賞を1番人気で迎えるも、6番人気メイショウサムソン、10番人気ドリームパスポートの馬連139.8倍という波乱劇で4着に敗れた。その後、ダービー7着ののちに3歳馬ながら挑んだのが、この札幌記念である。

7歳馬が6頭、9歳馬も出走するベテラン揃いの一戦だったが、3歳のアドマイヤムーンは後方からの競馬を選択。スローペースとなったが、鞍上・武豊騎手の期待に応えるように、外から素晴らしい末脚でそのまま一気に差し切った。クラシックでは悔しい思いをした同馬の将来が楽しみになるような直線だった。

アドマイヤムーンは翌年にドバイDF、宝塚記念、ジャパンCとGⅠを3勝し、年度代表馬にも選出された。種牡馬としてもセイウンコウセイやファインニードル、ハクサンムーンといった一流のスプリンターを輩出。自身の秀でたスピードを色濃く伝えた。

本馬にとって、上記の札幌記念が最後の北海道でのレースでもあった。結局、北海道では4戦4勝で、全て上がり3F最速という抜群の相性を見せたまま引退となった。もし札幌にGⅠがあれば、タイトルをひとつかふたつ増やしていたのではないか。

レジェンド武豊騎手は圧巻の8勝

アドマイヤムーンでも本レース制したレジェンド・武豊騎手は、エアグルーヴの連覇をはじめ、ファインモーションやマーベラスサンデーらと合計8勝を挙げている。これは札幌記念における最多勝である。

特に札幌記念初制覇となった1993年から99年までの間に4勝2着1回3着1回と、ほぼパーフェクトと言って良い戦績を残している。唯一、参戦がなかった1995年は中京に参戦していて、メインの東海Sではユキノサンシャインで3着に好走している。

1~3着に範囲を広げると、8勝から数を2つ増やして10度となるが、これも1位タイ。同数で並ぶのは同じくレジェンドの横山典弘騎手だ。同騎手はセイウンスカイ、タスカータソルテ、ノームコアで3勝をあげているほか、ダービー馬ロジユニヴァースで2着になるなど、同じく相性の良さをみせている。2014年には名馬ゴールドシップと挑み、惜しくもハープスターの2着に敗れたが、大いにファンを沸かせた。

意外にもルメール騎手は本レースでまだ1勝と、やや苦戦傾向だ。ジャックドールと参戦する武豊騎手、マテンロウレオと参戦する横山典弘騎手、ソーヴァリアントと参戦するルメール騎手……。騎手のレース相性にも注目しながら応援するのも、面白いかもしれない。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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