【エルムS】フジキセキ、Deputy Ministerの血を持つ馬が好走 有力馬の血統解説

坂上明大

エルムステークスの傾向と血統,ⒸSPAIA

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傾向解説

札幌競馬場で行われる唯一のダート重賞・エルムS。直線距離は264mと短いものの、コーナーの半径が大きいためマクリが決まりやすく、立ち回り次第ではどの馬も能力を発揮しやすいコース条件といえるでしょう。本記事では血統面を中心に、エルムSで求められる適性を整理していきます。

斤量別成績(過去10年 ※函館開催を除く),ⒸSPAIA


<斤量別成績(過去10年 ※函館開催を除く)>
※斤量は左が牡馬、右が牝馬。「56/54キロ」は牡馬56キロ/牝馬54キロ
56/54キロ【6-4-3-63】勝率7.9%/連対率13.2%/複勝率17.1%/単回収率82%/複回収率42%
57/55キロ【1-3-3-16】勝率4.3%/連対率17.4%/複勝率30.4%/単回収率53%/複回収率121%
58/56キロ【1-1-2-5】勝率11.1%/連対率22.2%/複勝率44.4%/単回収率57%/複回収率181%

最初に紹介するデータは斤量別成績。前述の通り、後方勢も立ち回り次第では能力を発揮しやすいのが札幌ダ1700mの大きな特徴。さらにエルムSは別定戦のため、ハンデ戦ほど能力面をならされることもありません。もともとJRAのダート重賞は数が少ないため、地力上位馬の好走率が高いことで有名ですが、エルムSも例に漏れず実績馬が好走しやすいレースといえるでしょう。

ちなみに、昨年までは56キロ(牝馬:54キロ)が古馬の負担重量に設定されていましたが、今年は57キロ(牝馬:55キロ)に変わっているため、斤量58キロ以上(牝馬は56キロ以上)の馬が実績上位の注目馬といえそうです。

前走マリーンS組の着順別成績(過去10年 ※函館開催を除く),ⒸSPAIA


<前走マリーンS組の着順別成績(過去10年 ※函館開催を除く)>
1着【2-1-0-3】勝率33.3%/連対率50.0%/複勝率50.0%/単回収率331%/複回収率115%
2着【2-1-0-2】勝率40.0%/連対率60.0%/複勝率60.0%/単回収率204%/複回収率134%
3着【1-0-0-3】勝率25.0%/連対率25.0%/複勝率25.0%/単回収率102%/複回収率45%
4着【0-0-1-2】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率33.3%/単回収率0%/複回収率66%
5着以下【0-0-0-18】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率0.0%/単回収率0%/複回収率0%

「地力上位馬が走りやすい」という傾向は最重要ステップレースであるマリーンSの着順別成績からも明白です。過去10年(函館開催を除く)のマリーンS組の好走は前走1~4着馬からしか出ておらず、特に1~2着馬の好成績が目立ちます。同レースはハンデ戦のため斤量変化には要注意ですが、上位馬は今年も軽視できないでしょう。


血統別成績(過去10年 ※函館開催を除く),ⒸSPAIA


<血統別成績(過去10年 ※函館開催を除く)>
Deputy Minister【3-1-3-15】勝率13.6%/連対率18.2%/複勝率31.8%/単回収率208%/複回収率107%
フジキセキ【1-0-2-6】勝率11.1%/連対率11.1%/複勝率33.3%/単回収率135%/複回収率71%

血統面ではDeputy Ministerに注目。前述の通り、地力上位馬が走りやすいレースのため血統面からの適性評価の重要度は高くありませんが、それでもダート中距離の主流血統であるDeputy Ministerの血を持った馬の活躍が目立ちます。また、同血脈とともに数多くのダートGⅠ馬を出すフジキセキの血を持つ馬からも好走馬が複数頭出ており、ダート中距離の主流血脈を持った実績馬を狙うのが理想形といえるでしょう。


血統解説

・ペプチドナイル
母クイーンオリーブは芝1800~2200mで4勝を挙げた活躍馬で、繁殖牝馬としては本馬の他にエルムSにも登録があるハセドンを出しています。キングカメハメハ産駒の本馬はNureyevの4×5を持つ機動力タイプで、母がHaloの3×4を持つことなどから、ダートなら軽い馬場がベターでしょう。距離はもっと長い方が合いそうですが、大沼S、マリーンSと着差をつけて連勝しており、勢いに乗る今回なら十分にチャンスはありそうです。

・セキフウ
2016年高松宮記念優勝馬ビッグアーサーの半弟。ヘニーヒューズ産駒は昨年ワンツー決着を決めていますが、本馬自身はコンパクトな馬体から1400~1600mがベストな印象です。マリーンSでは3着とまずまずの結果を残しましたが、ペプチドナイルとは0.6秒差。斤量差も変わらないだけに、逆転のハードルはなかなか高そうです。

・ロードブレス
母ミステリューズが持つGood Example≒War Relic≒Eight Thirtyなどから北米血脈を豊富に受け継ぎ、ディープインパクト系ながらも2020年日本テレビ盃などダート中長距離路線で活躍する実績馬。エルムSと相性の良いフジキセキの血を母母父に持ち、斤量58キロの実績馬という点も買い材料。長期休養明け2戦目での一変には要注目です。

エルムSの傾向と血統,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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