【プロキオンS】オープンの壁を感じる格重視の一戦 京大競馬研の本命はリメイク

京都大学競馬研究会

JRA古馬ダート重賞_昇級初戦の出走馬の成績,ⒸSPAIA

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後のGⅠ馬もつまずく昇級初戦、力不足の馬はなおさら辛い

7月9日(日)に中京競馬場でプロキオンS(GⅢ)が行われる。ドバイ帰りのリメイクやGⅠでも上位争いをするシャマル、タガノビューティーを中心に様々な路線から16頭が揃った。小倉のダ1700mで行われていた近2年とは異なり、数少ないJRA開催の短距離ダート重賞が復活したことで、春の開催で力をつけ、何としてもここで賞金を稼ぎたい馬の出走が多く見られる。今回はダート重賞に関する、条件戦との差を感じさせるデータを用意した。

JRA古馬ダート重賞、昇級初戦馬の成績,ⒸSPAIA


まずは過去10年間のJRA古馬ダート重賞において、オープンへの昇級初戦で出走した馬の成績を調べた。全体成績が【8-4-6-113】複勝率13.7%と振るわない。今年1月にプロミストウォリアが東海Sを勝ったが、昇級初戦での勝利はこれが3年10ヶ月ぶりの事例で、降級制度が廃止された2019年6月以降では初めてだった。

1400m以下の短距離重賞で調査すると【2-1-1-28】、複勝率は更に下がって12.5%となる。JBCスプリント覇者のダンシングプリンスも、昇級初戦の2020年カペラSは3着だった。

降級制度廃止によって、元オープン馬が3勝クラスに参戦することがなくなり条件戦のレベルが下がっている。一方で、オープンは頭数の多さと地方移籍の活性化など、近年の改革で非常にレベルが上がっているため、埋めがたい差が出来ているものと考えられる。実際、条件戦3連勝を決めたがオープン昇級初戦で詰まってしまう例は多数存在する。基本的に昇級馬は疑ってかかりたい。


OP、Lの連対馬は成績良好 下位馬は無視でOK

JRA古馬ダート重賞、前走OP・Lでの着順別成績,ⒸSPAIA


次にオープンを使い続けている馬の成績はどうなっているのかを調べた。過去10年のJRA古馬ダート重賞で、前走がオープン、リステッド戦だった馬の全体成績は【41-39-44-597】。こちらを前走着順別に精査した。

前走1、2着の成績が抜けて良く、それぞれ【20-15-12-105】の複勝率30.9%、【9-9-7-46】の複勝率35.2%であった。3~5着は【7-7-17-127】で複勝率19.6%と一段成績が落ち、それ以下は前走6~9着【4-5-2-151】の複勝率6.8%、前走10着以下(競走中止、除外等を含む)【1-3-6-168】、複勝率5.6%であるため、前走大敗馬は展開負けなど敗因が明確でない限り検討しなくていいだろう。

先程昇級馬が重賞で苦戦すると述べた一方で、オープン上位馬が重賞でも戦えている点を組み合わせると、3勝クラス→オープン特別の壁を昇級後すぐに突破出来る馬は、展開に左右されない真の実力の持ち主である可能性が高いと言えるのではないか。昇級2戦でオープン勝ちを決めたドンフランキーには注目したい。


サウジでも見せた一流の末脚

◎リメイク
日本の直近走はカペラSだが、こちらを圧倒的な末脚で勝利。前が崩れるという展開利はあったものの、それを差し引いても他馬とは違う能力を見せた。その際の2、3着馬は交流重賞を複数勝っており、強力な相手に格の違いを見せた一戦になった。サウジ、ドバイでアメリカの一流馬ともさほど差のない走りをしており、今回のメンバーに入ると力は一枚上ではないか。シャマルと比較して川田将雅騎手がこちらを選んだ点からも、勝負気配を感じる。

◯タガノビューティー
かしわ記念2着馬。最適条件と思われた根岸Sが4着で、重賞では限界があると思う内容だった。しかし、その根岸S上位がフェブラリーSで活躍。当馬も右回りを克服し、地方の1周競馬もこなすなどここに来て更に成長を感じる。外回し外伸びのロスがある競馬しか出来ないため、勝ち切るには展開の利は欲しいが、得意の左回りワンターンであれば当然上位を期待できる馬だ。

▲シャマル
交流重賞4勝の実績馬。中には相手に恵まれたレースもあったが、距離の長い南部杯、チャンピオンズCでも善戦できた点から、馬場や距離などへの適応力はメンバー中最上位と考えられる。新潟で条件戦3連勝を決めており、得意の左回りワンターンになることはプラス。1ヶ月おきの連戦と、前走の競走中止は気になるが、オープンで勝った負けたをしている馬よりは上位にとって良いだろう。

△ドンフランキー
昇級戦こそ躓いたが、前走で逃げ切ってオープン初勝利。重賞の壁もあっさり突破出来そうだが、重賞で活躍する馬を差し置いて評価するだけの材料はまだない。

×ケイアイターコイズ
内枠先行馬。ここ2走は精彩を欠いているが、中京は3勝を挙げる得意コース。一変に期待。

馬券は印5頭の3連複ボックスで勝負する。ケイアイターコイズが絡まないと配当には期待できないが、荒れやすい夏競馬の中で重賞馬が格の違いを見せるレースも趣があっていいのではないだろうか。(文:福山)

プロキオンS 予想印
◎リメイク
◯タガノビューティー
▲シャマル
△ドンフランキー
×ケイアイターコイズ

ライタープロフィール
京都大学競馬研究会
25年以上の歴史がある京都大学の競馬サークル。馬主や競馬評論家など多くの競馬関係者を輩出した実績を持つ。また書籍やGⅠ予想ブログ等も執筆。回収率100%超えを目指す本格派が揃う。



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