【ヴィクトリアマイル】本命候補はソダシ 二の脚が速く、楽に先行できる点が魅力

山崎エリカ

2023年ヴィクトリアマイル出走馬のPP指数,ⒸSPAIA

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極端に後ろからは厳しく、前目が有利な舞台

過去10年のヴィクトリアマイルの前後半4F平均は、前半が46秒1、後半が45秒8。平均ペースが6回、ややハイペースが2回、ややスローペースが1回、かなりのスローペースが1回。平均ペースよりも速かったのは良馬場時で、スローペースになった2回は稍重だった。今年は雨模様で雨量によっては重馬場が予想される。そこまで馬場が悪化してしまうと、乱ペースで前が崩れることも少なくないが、今年は逃げ馬不在で先行馬も手薄だけに、前へ行く馬が有利になる可能性が高いと見ている。

実際に過去10年で勝ち馬は逃げ~中団で8勝。4角10番手以降から2勝しているが、極端に後ろからの3着内はゼロ。差し馬の2着は5回あるが、3着は逃げ~中団までで9回。このことからも明確に後方からでは届きにくく、前目が有利なレースと言える。

能力値1~5位馬の紹介

2023年ヴィクトリアマイル出走馬のPP指数一覧,インフォグラフィック,ⒸSPAIA


【能力値1位 スターズオンアース】
昨年の二冠牝馬。三冠がかかった秋華賞では9番枠から出遅れて挟まれ、最後方付近からの競馬。そこから内目に入れ、4角で中目のスペースを拾って直線と、上手く立ち回れてはいた。ただレースが平均よりもやや遅いペースで、本馬よりも前でレースを進めていた馬が最後まで粘っていたため、結果的に序盤のレースの入り方が致命的となり、3着に敗れた。

しかし、そこから立て直された前走の大阪杯では、成長を見せハナ差の2着に好走。ここでも11番枠から出遅れて接触し、そこから中団馬群の中目を狙ったが、窮屈になって中団やや後方まで下げて追走。3~4角でペースが上がる中、そこはやり過ごして4角で3列目の外、ヒシイグアスの後ろを狙って直線へ。直線序盤で同馬の外に出されるとしぶとく伸び続け、ラスト1Fで前のダノンザキッドを飲み込み、さらにジャックドールにも襲い掛かるかの勢いでのハナ差だった。

本馬は4歳になってさらに力を付けているのは間違いないが、今回は前走から一気の距離短縮。スタートを上手く出して中団くらいの位置ならチャンスはあるが、近2走にように出遅れた場合は絶望的な位置になってしまう公算が大きい。レースの流れに乗れない可能性が高い上に内枠というのも好ましくなく、過大評価は禁物だ。

【能力値1位 ナムラクレア】
芝1200mでは7戦4勝2着1回3着1回、重賞は一昨年の小倉2歳S、昨年の函館スプリントS、今年のシルクロードSを優勝し、前走の高松宮記念でも2着に善戦しているスプリント路線の活躍馬。前々走のシルクロードSは、2番枠から五分のスタート切り、そこから押して中団中目に付け、3~4角で2列目の中目でレースを進めるファストフォースの後ろから、4角出口でその内を突いて直線へ。同馬と互角のしぶとい伸びで叩き合いになったが、最後に捻じ伏せてアタマ差で優勝した。

ただし、前々走はBコース替わりで内が圧倒的に有利な馬場状態。本馬は最後の直線で内を通っており、馬場に恵まれた面があったのも確か。また高松宮記念は時計の掛かるタフな馬場で、前崩れの流れに乗じて外から差しての2着。前走では前々走で2着に降したファストフォースに先着されたように、前々走との比較で指数はダウン。前走は激走レベルの走りではないので、天皇賞(春)のタイトルホルダーのような大きなダメージは残っていないはずだが、GⅠだけにそれなりに勝負駆けではあったはず。

また、昨年の桜花賞でスターズオンアースと0.1秒差の3着に善戦しているように、芝マイルでも実績がある。しかし、当時はBコース替りで内が圧倒的に有利な馬場&展開を1番枠を利して、好位の最短距離を立ち回ったもの。その上、3歳一冠目だけあってレベルも高くなかった。本馬のベストはあくまでもスプリントだろう。スプリンターでも距離に馴らせばマイルもこなせるが、久々のマイル戦となるとこなせない可能性が高い。

【能力値3位 ソダシ】
昨年のヴィクトリアマイルの覇者。昨年は5番枠からスタートはまずまずだったが、二の脚良く、トップスタートを切った外のレシステンシアとハナ争いを展開。さらに外からハナを主張するローザノワールを行かせて控えたのはいいが、3~4角で前にレシステンシアに入られ、やや窮屈になる場面があった。しかし、4角でワンテンポ仕掛けを待ってレシステンシアの内から伸び、ラスト1Fで突き抜けて2馬身差で完勝した。

前々走の府中牝馬Sも2番枠からまずまずのスタートだったが、ハナを主張したライティアに並びかけ、ハナを奪うかの勢い。ここでもスタートで躓いて後手を踏んだローザノワールが外からハナ争いに加わったことで、控える競馬。ライティアとローザノワールが後続を引き離したため、最終的に4列目まで位置を下げた。3~4角でも動かず、直線序盤で内からアンドヴァラナウトに並びかけられたところで仕掛けた。

けっしてペースが速くなかった中で4列目は下げ過ぎだった。3~4角からもう少し動いていれば、最内からイズジョーノキセキの決め手に屈し、アタマ差で敗れることはなかったと見ている。後半勝負に持ち込み過ぎたのが敗因だろう。ただし、相手も強い前走のマイルCSは言われているほど悪くなく、好位から控えて最後の直線で馬場の良い中目を走らせる選択肢もアリだったと見ている。

本馬はトップクラスが相手となると決め手の面でやや劣るが、二の脚が速く、楽に先行できる点が魅力。マイルなら幅広いレースに対応できるので、昨年のフェブラリーSを含めて6戦4勝3着2回と崩れていない。今回は休養明けになるが、前の位置が取れるのは同型馬が手薄の今回では魅力だ。理想を言えば、5~6枠辺りが欲しかったが、先行力があるので大外16番枠でも悪くない。今回の本命候補だ。

【能力値4位 ソングライン】
昨年の安田記念の覇者。同レースは13番枠からまずまずのスタートを切ってそこから促されたが、あまり進んで行かず、いつものように中団外目からの追走となった。道中はコントロールし、3~4角で中団外から楽に位置を押し上げて直線へ。序盤は追われても地味な伸びだったが、ラスト2Fで鞭が入るとジリジリ伸び初めて2列目付近まで上がった。ラスト1Fで馬群を捌き、中目から上がって来たシュネルマイスターをクビ差で捻じ伏せた。

昨年の安田記念はソダシが勝ったヴィクトリアマイルよりもレベルが低く、ややスローペースで後半勝負になったのが本馬の勝因。それでも同レースは3角手前で中団馬群のやや狭いところに入って躓く不利がありながら、2着争いに食い込み5着に善戦。今回のメンバーでも通用する力はある。

しかし、連覇がかかった前走1351ターフスプリントではまさかのブービー10着大敗。前走はバスラットレオンが逃げ切っているように、前目にいないと厳しい展開ではあったが、最後の直線で前との差も詰めることが出来ていない。また前々走のセントウルSで5着に敗れているように、本質的に距離1351mでは忙しいが、見せ場も作れていないことに不安を感じる。立て直されたこの中間はキビキビとした動きを見せており、今回で変わっても不思議はないが、過信も禁物だ。

【能力値4位 ララクリスティーヌ】
前走の京都牝馬Sで初重賞制覇を達成した上がり馬。そのレースは5番枠から五分のスタートを切り、そこから二の脚でじわっと好位の中目に収めると、前にスペースを作って追走。3~4角でそのスペースを詰めてロスを最小限にしながら3列目で直線へ。直線序盤で外に出されると、そこからジリジリ脚を伸ばして、ラスト1F地点で2列目。ラスト1Fでそのまましぶとく伸び続け、先頭のウインシャーロットをハナ差捉えて勝利した。

前走は前半3F35秒1-後半3F33秒9とかなりのスローペース。2着ウインシャーロットの勝ちパターンだったが、しぶとく伸び続けて勝利した内容はなかなか優秀なもので、自己最高指数を記録した。本馬は最短距離を上手く立ち回ったとはいえ、前々走でマイルのキャピタルSでも勝利していることから、マイル自体は問題ないだろう。ただ前走で自己最高指数を記録した後の一戦となると、余力の面で不安が残る。

【能力値4位 ナミュール】
本馬が中京芝1600mの新馬戦で見せたラスト2F10秒8-10秒7の末脚は、抜群の瞬発力の持ち主でことを証明している。ただその後はうまく噛み合わないことが多く、期待の高さほどは結果を残せていない印象がある。

前走の東京新聞杯では2着。15番枠からまずまずのスタートを切って、好位の外とポジションを取りに行く競馬。3角では中目を通って前のスペースを詰め、上手くロスを最小限にしながら、3列目付近で直線へ。直線序盤で追い出されると伸びは地味だったが、ラスト2Fでは一気に3番手まで上がり、ラスト1Fで前のファルコニアを捉え、逃げ粘るウインカーネリアンにアタマ差まで迫った。

本馬はやはり瞬発力に秀でた馬だけあって、距離は中距離以上よりもマイルの方が向いていると再認識させられた。前走は指数上、自己ベストの走りだった。今回はその疲れが残って凡退してしまうのか。それともさらなる上昇を見せてGⅠ馬になれるのか。本馬にとっては正念場、潜在能力が問われる一戦となる。

穴馬はマイルもこなせるロータスランドとスタニングローズ

【ロータスランド】
昨年の京都牝馬Sでは楽に2番手の外を取って追走し、4角で早くも先頭に立って優勝した馬。その次走の高松宮記念でも2着と好走しているが、本馬は2021年の関屋記念の覇者でもあり、マイルは問題ない。

21年の関屋記念は6番枠からまずまずのスタートを切り、二の脚で一旦先頭に立ったが、外からハナを主張するマイスタイルを行かせて2列目の最内を追走。3~4角ではやや離れた2列目の最内を追走し、直線を向くと最内からすっと伸びてラスト300m付近で先頭。外から伸びるカラテの追撃を1馬身1/4差で振り切った。

本馬のマイルの持ち時計は1分32秒7。超絶高速馬場となると課題もあったが、レース当日は雨模様。また前走で芝1200mを使われているので、レースの流れにも楽に乗れるはず。本馬は短距離馬だと思われているのか? 穴人気の呪縛から解放された今回は一考したい。

【スタニングローズ】
2歳時はマイル路線を使われていたが、中距離路線にシフトし上昇。昨年のオークスでは2着、そして秋華賞で初GⅠ制覇を達成した。昨年の秋華賞は7番枠からまずまずのスタートを切ってコントロールしながら先行したが、各馬がペースを上げないと判断すると、好位の中目で折り合うことを選択。

サウンドビバーチェを前に置いてスペースを維持しながら、内と外の両睨みで3角へ。4角で外を選択して2列目のアートハウスの外に出すと、すっと伸びて先頭に並びかけ、ラスト1Fでしぶとく抜け出し、ナミュール、スターズオンアースの追撃を振り切って1/2差で最後の一冠を手にした。

本馬は中距離路線で活躍し、秋華賞が強い内容だったことからマイル戦のここでは人気を落としている。しかし、距離1800mの前走中山記念では12番枠から好スタートを切って、好位の外を追走。1角までが短いコースで外枠だったため、行き切れずに好位の外からの競馬となったが、内枠ならハナに行ったのではないかというスピードを見せた。結果的に前の位置を取ったことで、最後に伸び切れず5着に敗れた。しかし、あの二の脚ならマイルでもレースの流れに乗れるはずだ。

また前走はスピードのあるところを見せられているだけに、始動戦としては上々。今回は叩かれて体調面は順当に良化が見込める。さらに5番枠と良い枠に入り、人気もあまりないだけに絶好の狙い頃だと見る。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)スターズオンアースの前走指数「-24」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.4秒速い
●指数欄の下線、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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