【新潟大賞典】42年ぶりの不良馬場開催! 59キロで快勝のカラテはまだまだ上を目指せる
勝木淳
ⒸSPAIA
42年ぶり不良馬場の新潟大賞典
水はけがいいことで知られる新潟の芝が不良になったのは、現在の競馬場になった2001年以降、22年間でわずか7日。24レースしかない。重賞は08年セイウンワンダーが勝った新潟2歳Sの1レースのみで、新潟大賞典が不良馬場で行われたのはジュウジアローが勝った1981年しかない。42年ぶりのことだ。スピードと高速上がりへの対応が定番の芝2000m戦も、不良馬場となれば話は変わる。これが影響したか、勝ったのはトップハンデタイの59キロを背負ったカラテだった。このレースを59キロで勝利したのは03年ダンツフレームが最後。これも20年ぶりの記録で、不良馬場だった新潟大賞典は異例の記録が並ぶ結果になった。
カラテはこれで通算重賞3勝。新潟記念、新潟大賞典とこの舞台の新潟重賞完全制覇を達成した。これは16年パッションダンス以来になる。かつてはマイラー評価もあったが、これで完全に中距離志向。もうハンデ戦への出走は斤量面で厳しくなるので、サマーシリーズではなく、今後はもう一段上の舞台に向かうだろう。上がり600m36.5と時計を要するタフな競馬で5番手から2着セイウンハーデスと競り合い、3着イクスプロージョンに8馬身以上の差をつける圧倒的な内容からも7歳でも期待は高まる。
母レディーノパンチの母レイサッシュといえば、ステイゴールドの2歳下の妹だ。ご存じの通り、ステイゴールドは7歳で迎えた引退レースでGⅠ初制覇。息の長さと丈夫さと信念の馬。カラテだってまだまだやれる。差し脚身上だった若いころと比べると、距離が延びたことで先行力が出ている点も頼もしい。父トゥザグローリー自身は現役時代、決して道悪が得意なわけではなかったが、カラテはこれで全8勝のうち、良馬場4勝、やや重2勝、不良馬場2戦2勝の道悪巧者。秋の大舞台でひと雨あれば、一発狙ってみたい。馬場状態を読み、揉まれる危険もあった内枠を逆手にとった菅原明良騎手の手綱も冴えた。春の中山では不振だったが、ここにきてリズムを取り戻してきた。こちらも大舞台での活躍を期待できる。
好凡走、どちらも注意
2着セイウンハーデスは逃げて最後までカラテに抵抗し、地力を見せた。菊花賞ではハイペースで逃げて大敗したが、今春復帰後は1、2着とすっかり本来の姿に戻ってきた。前走のように控える形も対応でき、逃げも以前のような行きすぎることがなくなった。すっかり大人になった印象で、今回も向正面後半から3コーナーにかけての800~1200mで13.1-13.1と息が入る、絶妙な流れを作ったことが好走につながった。残り600mから11.9-11.9と早めにスパートするタイミングも絶妙で、勝った馬を褒めるしかないといったところか。上がり勝負にならないように今後も絶妙な流れを演出してほしい。
1番人気スパイダーゴールドは16着に沈んだ。全4勝は東京と新潟のサウスポーだが、ダイワメジャー産駒らしく高速上がりを前で踏ん張る形がベスト。先行して上がり33~34秒台前半にまとめるような形がいい。そういった意味では今回はペースこそ向いたが、上がりがかかる馬場が味方しなかった。高速上がりが苦手なイメージもあるダイワメジャー産駒だが、前で踏ん張れるなら、速い時計でも太刀打ちできる。今回は馬場に尽きる印象で、良馬場で楽に好位追走が叶う形で見直したい。半兄ラーゴムはダートも走れるオールラウンダー。スパイダーゴールドはこれでデビュー8戦中、着外2回の堅実派なので、決めつけずに可能性を広げていってほしい。
1、2着が大きく離すハンデ戦らしからぬ結果なので、3着イクスプロージョン以下は注意が必要だ。同馬は全5勝でやや重2勝、4着モズベッロは重【1-1-0-1】。2着1回はコントレイル、グランアレグリアに先着した大阪杯であり、こちらも道悪巧者の血が騒いだもの。着順の字面から次走以降、必要以上に人気に推されるならば、それは馬場状態次第といったところだろう。反対に道悪が影響したのが6番人気7着ヤマニンサルバム、4番人気10着カレンルシェルブル。相当悪い馬場での競馬だったので消耗は心配だが、大敗馬の巻き返しは次走以降、頭に入れておくべきだろう。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『テイエムオペラオー伝説 世紀末覇王とライバルたち』『競馬 伝説の名勝負 GⅠベストレース』(星海社新書)に寄稿。
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