【青葉賞】勝ち時計2分23秒台は3頭目 キタサンブラック産駒スキルヴィングに感じるジンクス破りの可能性

勝木淳

2023年青葉賞、レース結果,ⒸSPAIA

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アドミラブル、オーソリティ以来の好時計

青葉賞は2:23.9の好タイムで決着した。日本ダービーでも勝ち負けになるほどの時計についに青葉賞から日本ダービー馬が出るかと期待したくなる。これまで青葉賞が23秒台で決着したのは20年オーソリティの2:23.0、17年アドミラブル2:23.6の2回。アドミラブルは日本ダービーで1番人気に支持された。勝ち時計だけではなく、2着に2馬身半差をつけた勝ちっぷりも評価され、いよいよ青葉賞からダービー馬が出ると期待されていた。だが、結果はレイデオロの3着で、走破時計は青葉賞より3秒6遅い2:27.2。本番は明らかなスローペースになり、レース内容の違いに阻まれた。これも競馬の難しいところ。同条件であっても相手が変われば問われる適性は一変する。アドミラブルの3着を機に青葉賞組への評価は一層厳しくなった。

今年の勝ち馬スキルヴィングと同じ木村哲也厩舎にいるオーソリティは、皐月賞の優先権を持ちながら、皐月賞をパスし青葉賞へ。快勝したが、骨折が判明し休養に入った。ダービーには出走できなかったが、その後の活躍はご存じの通りだ。

木村哲也厩舎のキタサンブラック産駒といえば、否が応でもイクイノックスを連想する。スキルヴィングがこのまま順調なら、オーソリティで出られず、イクイノックスで獲れなかったダービーへ進んでほしい。


スキルヴィングに流れるダービーへの因縁

青葉賞から日本ダービーへ。成功例がないこのローテもキタサンブラック産駒ならばジンクスを破るかもしれない。思い返せば、今年の皐月賞を勝ったソールオリエンスは京成杯1着から皐月賞を勝利した。ソールオリエンスが勝つまでは、前走京成杯1着は【0-0-2-6】(1986年以降)。アドミラブルでも触れたが、同舞台でも京成杯と皐月賞はペースが違うことが多く、連勝する馬はいなかった。かくいう私もこのデータを盾にとり、ソールオリエンスの評価を落とした。実際、京成杯は前半1000m1:02.2、皐月賞は58.5でまったく違った。だが、ソールオリエンスはデータを覆した。

キタサンブラック産駒はペースの違いなど、適性の差を乗り越える力があるかもしれない。イクイノックスも天皇賞(秋)、有馬記念、ドバイシーマクラシックとペースがまったく違うレースを3連勝中だ。キタサンブラック産駒がデータの破壊神ならば、スキルヴィングも青葉賞から日本ダービーを連勝できるのではないか。特にデータ派は注視するだろう。

スキルヴィングは母系にも注目したい。母ロスヴァイセの父は02年青葉賞1着、日本ダービー2着のシンボリクリスエス。母系はソニンクの系統で、ここから09年ダービー馬ロジユニヴァースが出た。スキルヴィングの祖母にあたるヴァイスハイトはソニンクに99年ダービー馬アドマイヤベガが配合されて生まれた。ダービー馬を出した一族、そこに配合されたダービーを巡る血。その先端にスキルヴィングはいる。種牡馬キタサンブラックの力とダービーに因縁深い血によって「青葉賞馬はダービーを勝てない」というジンクスは破られるだろうか。

レースの前半1000m通過1:00.4は奇しくもオーソリティが勝った20年と同じ。レース後半800m46.5も20年46.2と似たラップ構成なので、スキルヴィングと競り合い、半馬身差まで食い下がった2着ハーツコンチェルトも評価できる。メンバー中唯一、重賞と皐月賞トライアルに3度出走した実力馬がダービーの切符をつかんだ。

明らかに左回りでパフォーマンスが上がるのは父ハーツクライらしい。母の父アンブライドルズソングとの相性のよさは相変わらず。ナスノシベリウスの仔はこれまで牝馬ばかりで、ハーツコンチェルトがはじめての牡馬。那須野牧場が米国から輸入した血がダービー出走権をつかんだ。今年、この世を去ったハーツクライのラストクロップは次の2歳世代。14年ワンアンドオンリー、22年ドウデュースと2頭のダービー馬を送ったハーツクライは3頭目のダービー馬を送れるか。ハーツコンチェルトはそこにもっとも近いところにいる。


2023年青葉賞、レース回顧,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『テイエムオペラオー伝説 世紀末覇王とライバルたち』『競馬 伝説の名勝負 GⅠベストレース』(星海社新書)に寄稿。

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