【天皇賞(春)】潜在的なスタミナは豊富! 隠れた長距離砲ディープモンスターに期待

山崎エリカ

2023年天皇賞(春)出走馬のPP指数,ⒸSPAIA

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新・京都芝はほぼ従来どおりの超高速馬場

先週のマイラーズCで1分31秒5の好時計が出たように、新・京都芝コースは、ほぼ従来どおりの高速馬場だ。コース形状もかつてと変わっていないだけに、今回も以前のように中盤はゆったりと流れ、ラスト4F目にあたる3角の下り坂からペースアップしていくことが予想される。

このため前が有利であり、過去10年を見ても3角11番手以下で優勝したのは、3~4角で最内を立ち回った2018年のレインボーラインのみ。しかし、この年は週中の雨の影響で超高速馬場ではなく、ラスト4F目から加速する展開ではなかった。超高速馬場でラスト4F目から加速した場合は、3角17番手だった2012年のオルフェーヴルや、3角15番手だった2014年のゴールドシップが4角で大外を回るロスも生じ、それぞれ11、7着に敗れている。

今年は天皇賞(春)当日に雨が降る可能性もあるが、もともと馬場状態がいいので、雨が降っても多少なら高速馬場のはず。前記したレインボーライン以外の勝ち馬は3角7番手以内だったことから、3角で中団よりも前の位置でレースを進められる馬を中心に予想を組み立てたい。

能力値1~5位の紹介

2023年天皇賞(春)出走馬のPP指数一覧,インフォグラフィック,ⒸSPAIA


【能力値1位 タイトルホルダー】
一昨年の菊花賞馬であり、昨春は天皇賞(春)と宝塚記念を連勝した馬。昨年の天皇賞(春)は16番枠から好スタートを切って、押して内に切れ込みながらハナを主張し、淡々とした逃げ。レース前日の夜中からの雨で高速馬場とは言えない状況だったが、5F通過60秒5の芝2000mかのようなハイペースを展開し、1周目の4角では2番手クレッシェンドラヴに6馬身ほど差を広げていた。

スタンド前から息を入れ、1~2角でさらにペースダウン。2角ではクレッシェンドラヴとの差は1馬身に詰まったが、向正面から再びじわじわペースを引き上げ、4角で2番手のテーオーロイヤルが上がって来ると、そこで軽く仕掛けて同馬を振り切り、3~4角の外から仕掛けて上がって来た2着ディープボンドに7馬身差を付けて圧勝した。

本馬が昨年の同レースで記録した指数は自己最高指数であり、ここでは断トツ。しかし、これは前哨戦の日経賞でボッケリーニにクビ差2着まで詰め寄られたように、前半5F63秒5-後半5F59秒0の超絶スローペースの逃げを展開し、余力を残せた結果だ。

一転して今年の日経賞は、極悪馬場で前半5F62秒8-後半5F62秒0の緩みないペースで逃げ8馬身差の圧勝。有馬記念で9着に敗れたことや、本馬にとって馬場が向いたことから前哨戦に徹することが出来ず、指数も昨年の天皇賞(春)と1pt差の高指数だった。

また本馬は3200mはベストではあるが、スタミナを生かしてこその逃げ馬で、上がりが速くなる京都芝よりも、上がりが掛かる阪神芝のほうが向く。思い切った大逃げで、上がり勝負に持ち込まなければチャンスがあるが、楽観視はできない。

【能力値2位 ボルドグフーシュ】
昨年の菊花賞、有馬記念ともに2着の実績馬。しかし、レース内容としては3~4角の外から一気に位置を押し上げ、4角で外を回るロスを作ってはいるが、出遅れて後方から前にいる強い馬を目標に動いて無欲に差しただけ。菊花賞はかなりのハイペースで差し有利の展開に恵まれ、また有馬記念は外差し有利のタフな馬場に恵まれた。着順ほど強かったわけではない。

しかし、川田騎手に乗り替わった前走の阪神大賞典は、1番枠からまずまずのスタートを切り、ジャスティンパレスが前に入ってくるのを待って好位の内を追走と、勝ちを意識した競馬で2着と成長を感じさせた。前走は超絶スローペースで折り合いに苦労していたが、今回はタイトルホルダーがペースをしっかりと引き上げてくれれば折り合いもつくだろう。

本馬も上がりが速くなる京都芝よりは、上がりが掛かる阪神芝のほうが向くタイプ。レース当日の雨も歓迎だろう。逆に超高速馬場はベストではないが、序盤で位置取りが後方だったとしても、前走の競馬ぶりなら向正面で位置を押し上げ、3角7番手以内の位置を取れる可能性もある。超高速馬場と前走の2着敗戦で人気が落ちた今回は、積極的に買いたい。

【能力値3位 ジャスティンパレス】
デビューから2連勝し、3戦目のホープフルSでは2着と好走したが、春2戦の皐月賞、ダービーは不完全燃焼で能力を出し切れなかった馬。しかし、秋に復帰すると神戸新聞杯を圧勝し、菊花賞でもアスクビクターモア、ボルドグフーシュと半馬身差の3着に善戦し、地力強化を見せた。前々走の有馬記念では7着に敗れたが、外差し馬場を好位の最内を追走と、内から勝ちにいったことが主な敗因だ。

実際その次走の阪神大賞典では巻き返しVを決めている。同レースは3番枠からまずまずのスタートを切って、2列目の最内を追走。アフリカンゴールドの直後で我慢しながらレースを進めた。このレースは高速馬場で前半5F64秒9-中盤63秒3と極端なスローペースだった。そのため3~4角で一気にペースが上がったところで最短距離を通り、4角出口でアフリカンゴールドの外に出して直線へ。しかし、ここで捌き切れずやや接触してブレーキをかける場面もあったが、立て直してラスト1Fで2列目からすっと抜け出して1馬身3/4差の完勝だった。

本馬は神戸新聞杯でも3~4角で狭い最内を通り優勝しており、内々からロスなく立ち回って早めに抜け出すのが勝ちパターン。それだけに今回の1番枠は恵まれたと言える。成績も高水準で安定しており、正直、あまりケチをつけるところがない。しかし、前走でそれなりに走っており、今回での上昇度を期待しにくいのも確か。あくまでも連下の1頭という評価だ。

【能力値4位 ディープモンスター】
一昨年の菊花賞は内で包まれ動きたいところで動けず5着に敗れたが、昨夏の札幌連続開催最終日のタフな馬場で行われた、芝2600mの丹頂Sで2着に善戦した馬。この善戦がスタミナが不足する休養明けだったことから、潜在的なスタミナの豊富さを感じた。隠れた長距離砲だ。

また前々走の関門橋Sではレッドベルオーブの暴走の大逃げで前半5F56秒6-後半5F61秒3の極端なハイペースとなった中、13番枠から五分のスタートを決め、一旦好位の外から控えて中団中目を追走。向正面で中目のスペースを押し上げて最内に入れ、3~4角で最短距離を立ち回り、ラスト1Fで抜け出して完勝となかなか良い走りを見せた。当時の3馬身差の3着馬が、先週の福島牝馬Sで2着に好走したビッグリボンだ。

前走の金鯱賞は休養明け好走後の一戦だったこともあり5着に敗れた。しかし今回は適性が高そうな長距離。相手は強いがこの距離なら順調さを生かして上位食い込みを狙える。また本馬も馬場がタフになるほどいいタイプだが、この距離なら高速馬場でもある程度は前の位置が取れるので、通用すると見ている。今回の本命候補だ。

【能力値5位 シルヴァーソニック】
昨年のステイヤーズS覇者。同レースは7番枠から五分のスタートを切って、そこからコントロールして好位の最内に収めていく形。前半5F通過が64秒4と超絶スローペースだったため、1周目の向正面で外から上がってきたアイアンバローズを行かせ、3列目の最内を前にスペースを作って追走した。

2周目のスタンド前でもペースが上がらず、2周目の向正面の下り坂から一気にペースが上がった。そこで馬群が凝縮して中団に近い位置。しかし、3~4角でも我慢し、最後の直線序盤で狭い最内に潜り込むと、そこからすっと伸びて抜け出し、外から伸びるプリュムドールを3/4差振り切った。

本馬は前走レッドシーターフHでも1番枠から好スタートを決め、2列目の最内でレースを進めた。3~4角で最短距離を走り脚を温存し、4角出口で上手く捌いて一気に先頭に立ち、2馬身半差で完勝。ここへ来て地力をつけているのは明らかだが、今回は16番枠と外枠に入ってしまった。本馬は立ち回りの上手さを生かしてロスなく走るのが持ち味な馬だけに、この枠はマイナスだろう。ただし、近走からさらなる成長があれば、ここで通用しても不思議ない。

指数上の穴馬は菊花賞馬アスクビクターモア

アスクビクターモアは昨年の菊花賞馬。同レースはセイウンハーデスの大逃げで芝3000mで前半5F58秒7-中盤62秒7-後半5F61秒のかなりのハイペース。レコード決着だったように中盤もほぼ緩んでいない。本馬はその流れを14番枠からまずまずのスタートを切り、押してセイウンハーデスから離れた2番手を追走。3角で同馬と4馬身くらいあった差を3~4角で楽な手応えで詰め、4角では並ぶ間もなく交わして堂々の先頭。そのまま押し切るかなり強い内容だった。

本馬は超絶高速馬場で緩みないペースで流れた昨年のダービーでは単独2番手から3着に善戦した走りからも、同世代の中でもスピード、スタミナの総合値はトップレベルと言える。極悪馬場で行われた前走の日経賞は、出遅れて最後方から挽回していく苦しい展開で本来の力を全く出せなかった。ゆえに疲れは残っていないはず。確かに前走は勝ち馬タイトルホルダーから2.6秒差と負け過ぎではあったが、ここでの変わり身が期待できる。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)タイトルホルダーの前走指数「-34」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも3.4秒速い
●指数欄の下線、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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