【フローラS】30年ぶりの逃げ切りV! ゴールデンハインドを本番でもマークしたいワケとは
勝木淳
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武市康男調教師、開業18年目、初のJRA平地重賞V
オークスへの2枚の切符をかけたフローラSは、フラワーC4着のゴールデンハインドが逃げ切った。この勝利で武市康男調教師は17年東京ジャンプS・シンキングダンサー以来となる重賞Vを飾り、平地重賞は初制覇となった。開業18年目の春、大一番のオークスへ進む。障害GⅠはシンキングダンサーで19年中山GJオジュウチョウサンの2着など10回出走したが、JRA平地GⅠはこれまで3回。最高は昨年朝日杯FSキョウエイブリッサ4着。16番人気の激走だった。熱い思いをした穴党にとっては記憶に新しい。
ほぼ1年前の4月最終日にJRA通算200勝を決め、「これからも1戦1戦を大事にしてやっていきたい」と語った武市師。派手な活躍馬こそ出ていないが、一歩ずつ着実に歩んできた武市厩舎を支えたのが、もっとも多く勝利をあげたサラブレッドクラブ・ラフィアンと、生産者第2位のビッグレッドファームだ。ゴールデンハインドは武市厩舎とラフィアン&ビッグレッドファームが築き上げた関係をより強固なものへ押し上げてくれるだろう。
ラフィアン&ビッグレッドファームといえば、今やゴールドシップ。21年オークス馬ユーバーレーベンはゴールデンハインドと同じフラワーC、フローラSからオークスを制した。ユーバーレーベンはどちらも3着に敗れ、距離が延びた本番で一変した。ゴールデンハインドは4、1着、それも逃げ切りなので形は異なるが、このつかみどころのなさもゴールドシップ産駒らしさだ。産駒の共通点は、平坦もしくは急坂がなく、坂を上がってからゴールまで距離のある競馬場が得意。道悪など時計がかかるとさらに強い。
キャリア1戦で3着ブライトジュエリー
ゴールデンハインドはフローラSを1.58.9で制した。ゴールドシップ産駒のなかでも時計の速い馬場もこなす。決着時計は過去10年で2番目に速い。もっとも速かったのは20年1.58.7。勝ったウインマリリンは次走オークス2着、その後は牡馬相手にGⅡを2勝し、昨年暮れに香港ヴァーズも制した。
このレースは逃げが決まりにくく、ゴールデンハインドは1993年ヤマヒサローレル以来30年ぶりに逃げ切り勝ち。相手関係に恵まれたのは事実ながら、東京芝2000mで後半800m11.8-11.2-11.3-11.6。4コーナーから坂を上がるまで11秒台前半を2度刻み、最後も11.6と極端な失速なし。桜花賞組は強力だが距離延長はプラスのはずで、本番でもノーマークなら一角崩しはある。
レースの前後半1000m1.00.8-58.1で前半はスローペース。後方に控えた4着イングランドアイズは、上がり最速33.4で外から追い込むも届かなかった。ただでさえ外差しが決まりにくい馬場でスローペースとあってはこれが精いっぱいだった。
そういった状況を踏まえれば、2着ソーダズリングは内枠を活かした先行策が吉と出た。半姉マジックキャッスルはオークス5着。デアリングタクトに一歩早くスペースに入られ、遅れ差しの形になってしまった。ソーマジック牝系は少し反応が悪かったり、体質が弱かったりと好循環に入りにくい面があるものの、ソーダズリングは3戦でオークスの切符をつかみ、ここまでは順調な歩み。マジックキャッスルと比べれば立ち回りは上手い。だが本音は、いい位置にいたのならゴールデンハインドに迫る場面は作ってほしかった。
キャリア1戦で3着に入ったブライトジュエリーはオークスの権利こそ獲れなかったが要注目。2000年以降、キャリア1戦は【0-0-0-14】でことごとく敗れた。14年2番人気7着イサベル、19年1番人気14着セラピアなど上位人気馬も阻まれた。1回レースを経験し、色々学習したサラブレッドは2戦目で思わぬ反応を見せることがあり、ただでさえデビュー2戦目は簡単ではない。そこにオークス出走権をかけるGⅡとくれば、難易度は相当高い。さらには初めての関東輸送で、これで3着は立派。母は08年チューリップ賞を勝ったエアパスカル。条件戦から再出発になるが、注目したい。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『テイエムオペラオー伝説 世紀末覇王とライバルたち』『競馬 伝説の名勝負 GⅠベストレース』(星海社新書)に寄稿。
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