【マイラーズC】シュネルマイスター、京都を味方に完全復活! この先は東京、京都と得意舞台が待っている
SPAIA編集部
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マイルGⅡにふさわしい流れに
京都グランドオープン最初の重賞マイラーズCはシュネルマイスターが1.31.5で勝利した。京都のコースは大きなレイアウト変更こそなかったが、2年半と十分な期間があったことで路床部分から徹底的に改修工事が施された。もっとも気になったのは時計の出方だ。
マイラーズCが春の阪神最終週から京都開幕週に移されたのは2012年。阪神に代替された21、22年を除く9回のうち、31秒台を記録したのは今年を含め3回。サングレーザーが勝った18年1.31.3が最速で、次いで14年1.31.4(ワールドエース)。今年は3番目。もともと春の京都は馬場状態がよく、速い時計が記録される。シュネルマイスターの1.31.5は一見すると高速決着に映るが、芝の時計の出方は改修前とさほど変わらない。とはいえ、31秒台決着は頻発するわけではなく、マイル戦としての価値は決して低くはない。
京都外回り芝1600mは前半がのぼり区間でもあり、極端に飛ばす馬がいなければ基本的にスローが定番。逃げたシャイニーロックに騎乗する酒井学騎手は9R比良山特別でも伏兵イヤサカで逃げて3着に入っており、例年の開幕週と同じ前残りの馬場を味方に少し強気に出た。前半600m34.4で後ろをけん制し、楽な状況をつくった。前半800m46.1は決して遅くはなく、後ろが追いかけにくい形だった。後半800mは11.3-11.1-11.5-11.5で45.4。マイルGⅡにふさわしく、落差がないスピードの持続力を問う流れを演出した。
こういったスキのない流れになると、なかなか展開や位置取りを味方につける、いわゆる“恵まれた”好走は生じにくい。この状況でゴール寸前まで見せ場をつくったシャイニーロックも、馬場は生かしたにせよ恵まれたわけではない。最後は左にヨレて迷惑をかけてしまったが、今後相手関係が落ち、再び単騎逃げが見込める状況なら侮れない。
京都を味方につけたシュネルマイスター
シュネルマイスターがきっちり差し切ったのも、実力がしっかり反映される競馬になった証だ。昨春、安田記念2着以降はなかなか浮上できなかったが、おそらくベストの舞台に出走できなかった影響だろう。
21年NHKマイルC 1.31.6
21年毎日王冠 1.44.8
重賞2勝はいずれも東京の高速決着。1800mの毎日王冠は2ハロン目10.9以降ゴールまですべて11秒台が続く、ハイレベルなマイルに似たラップを形成していた。ベストは1800mではないかと考えていたが、この勝利で、時計が速く緩急の少ない高速決着のマイル戦、東京や京都のように急坂がない舞台に適性があることが見えた。シュネルマイスターにとっては今年の舞台が京都だったことも大きい。この先は安田記念、マイルCSと得意舞台が待っている。スローペースにはまらなければ、結果は残せるだろう。
2着ガイアフォースは昨年菊花賞で1番人気に支持された馬だけに、はじめてのマイル戦出走に対応できるかどうかわからなかったが、まったく問題なかった。先述したように前半800m46.1はスキがなく、マイラー資質が高くなければこの流れを追走して最後に末脚を繰り出せない。ガイアフォースは前半置かれることなく、中団で流れに乗り、かつ脚を最後まで溜められた。はじめてでこの走りならば、文句なし。小倉で高速決着をこなしただけある。今後もマイラーとしてタイトルを目指してほしい。
3着ソウルラッシュは昨年阪神の同レース勝ち馬。こちらのベストは急坂があり、最後に少し時計を要する流れだろうから、今回の3着は現状の力か。ただし、これまでは差しに回る形が多かったなかで、今回馬場を意識して中団から早めに動いて結果を残したのは意味がある。1、2着の切れ味に屈したが、積極的に動ける立ち回りを身につければ、流れを味方につけられるだろう。ここのところ、派手な追い込み競馬が目立つが、競馬は基本的に先行馬が主導権を握る。差し、追い込みはそれを逆転できる力があるから派手に映る。好位で立ち回る対応力は大事な要素だ。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『テイエムオペラオー伝説 世紀末覇王とライバルたち』『競馬 伝説の名勝負 GⅠベストレース』(星海社新書)に寄稿。
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