【金鯱賞】繊細な作業で素質開花! プログノーシス、次はいよいよ勝負のとき
勝木淳
ⒸSPAIA
最適解を探し、実行できる川田将雅騎手
昨年の金鯱賞はジャックドールが1勝クラスから5連勝で重賞制覇を果たした。今年は同世代のプログノーシスが初重賞タイトルを獲得。ジャックドールは3歳後半から一気に駆けあがったが、プログノーシスはさらに1年かけてじっくり歩んできた。初陣は2年前のこの週に行われた未勝利戦、ここまで丸2年間、陣営の確かな手腕が素質を開花させた。
初出走で未勝利戦を突破したあとは中1週で毎日杯へ。シャフリヤールの1:43.9から0.3差3着。上がりが最速ではなかったのはこのレースのみ。その後は仕切り直し、6、11月と間隔をとって連勝で2勝クラスを突破。さらに間をあけて4歳4月、昇級初戦を勝ちオープンに昇級した。
3連勝はすべて上がり最速を記録。2、3勝クラスでは上がり2位に0.7、0.6差をつける圧倒的な切れ味が武器だ。それゆえにレース後のダメージが大きく、次のレースへ向かうには回復から入らなければならず、間隔をとらざるを得なかった。デビュー2戦目に中1週で出走した毎日杯の経験を糧にここまでプログノーシスが走れる状態になるのを待った結果、5歳3月金鯱賞でまだ8戦。馬の状態を最優先に。言うのは簡単だがそれなりに使える状態でもあえて使わない。そして、力を出しすぎてもいけない。好素材だが、体質が弱いタイプを開花させるのは実に繊細な作業だ。
コンビを組む川田将雅騎手はこれで5戦5勝のパーフェクト。川田騎手でしか勝利をあげていないのはなぜか。プログノーシスのことも管理する中内田充正調教師のことも知り尽くす川田騎手は前半で気負うところがあるプログノーシスをきっちり抑え、一気に爆発しすぎないようにじっくり仕掛ける。馬の力を出せる最適解を探り、実行できる騎手だ。この日もプログノーシスは前半から行きたがる素振りを見せたが、馬群の外目で余計なプレッシャーを受けないように導き、我慢させた。高い素質があるからこそ、難しい面も多い。これまでそんな馬に騎乗してきた経験が本馬に注がれた。
今回も最後600m11.2-11.6-11.8と前が残ってもおかしくない攻防をメンバー唯一の上がり33秒台で差し切った。GⅠを勝つ力が十分あることを示したわけだが、さて優先権をとった大阪杯はどうするだろうか。当然、レース後のダメージを考慮してからだろう。5歳なので、そろそろどこかで勝負をかけなければいけないが、それは大阪杯とは限らない。
中山金杯から着順を上げた2、3着馬
レースは3番人気フェーングロッテンが中山金杯に続き、先手を主張し、前半600m36.3とゆったり入り、1000m通過1:00.9のスローペースを演出。プログノーシス以下は完封したので、作戦としては良かった。ただ、頭の高い走法で切れ味比べは不得手なタイプ、もう少し前半から強気に入るスタミナ勝負も見てみたい気がする。マークされる立場で格がひとつ上がっても着順を上げられたのは力の証拠だ。差して重賞を勝っており、相手関係次第で控え、持続力勝負になっても面白い。
3着6番人気アラタも中山金杯から着順を上げた。先週のトップナイフに続き、またも横山典弘騎手らしい枠順を利用した無駄を削いだ競馬が印象的だった。結果的に最後の直線で進路を失う場面があったが、そのさばきも冷静だった。詰まることを避けようとどこかで動けば、3着はなかったかもしれない。ここにきて横山典弘騎手の手綱捌きが冴える場面が増えてきた印象もあり、今後も楽しみだ。
2番人気マリアエレーナは8着。得意の中京に狙いを定めた参戦だったが、道中はアラタの真後ろに入り、最後は前が壁になってしまい進路がなかった。今回は割り切って考えたい。父クロフネらしく、もっと時計が出る硬めの馬場での高速決着が理想。春の東京は面白いのではないか。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『テイエムオペラオー伝説 世紀末覇王とライバルたち』『競馬 伝説の名勝負 GⅠベストレース』(星海社新書)に寄稿。
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