【金鯱賞】日本の主流系統にスタミナ・馬力を足す「Roberto」のスパイス 有力馬の血統解説

坂上明大

2023年金鯱賞の傾向と血統データ,ⒸSPAIA

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傾向解説

大阪杯のステップレースに位置づけられる金鯱賞。今年は実績馬が少なく、例年と比較すると低調なレースレベルとなりそうです。とはいえ、怪我などにより出世が遅れた素質馬も多いため、各馬の本質的な適性や本レースで求められる資質について血統面を中心に紐解いていきたいと思います。

金鯱賞が3月に行われるようになったのは2017年から。また、2020年は1回6日目の開催だったため、今年と同じ2回第1週に行われた金鯱賞は2017~19、21、22年の5回です。これらの年で目立つのは前有利のポジションバイアス。開幕週、かつスタート後300m程で1角を迎えるコースレイアウトから、直線距離412.5mの印象に反して先行馬に楽な展開になりやすいのが特徴です。

該当年の逃げ馬は2勝2着2回と抜群の成績を残しており、前走においても初角5番手以内の競馬をしていた馬の成績が非常に良い傾向にあります。2021年に10番人気で勝利したギベオンなど穴馬の好走も多いため、まずは先行馬を中心に馬券を組むのが金鯱賞のセオリーといえるでしょう。

前走初角位置別成績(2017年以降、開幕週での5回),ⒸSPAIA


血統面ではディープインパクト系キングカメハメハ系など日本の主流系統が馬券圏内を独占している傾向にあります。もちろん、直線の長い芝中距離戦という日本の主流条件ですから、特殊な馬場状態にならない限り今後も変わらない血統傾向といえるでしょう。

前走初角位置別成績(2017年以降、開幕週での5回),ⒸSPAIA


ただし、主流系統の中でもスタミナや馬力に寄った配合馬に、より適性が向くという点も押さえておきたいポイントです。その代表的なスパイスがRoberto。Robertoの血を母方に持つ主流系統馬の好走が非常に目立ち、過去6年の勝ち馬のうち4頭が同血脈を内包する血統というデータもあります。

他場の直線の長い芝中距離戦よりもややスタミナ・馬力寄りの適性が求められるのが中京競馬場の特徴でもあるため、Robertoなどの欧州的スパイスが穴馬の隠し味となっています。

Roberto内包馬の父系別成績(過去6年)


血統解説

・プログノーシス
母ヴェルダはイギリス産の繁殖牝馬で、ヨーロッパ繋養時代には2013年チェヴァリーパークS勝ち馬Vordaなどを出しています。本馬は大種牡馬ディープインパクトを父に配し、母方にRobertoの血を持っています。同父からは2021年ギベオンなど複数の好走馬が誕生しており、血統面については言うことがないでしょう。ただ、本馬自身は先行力に課題があるため、前有利になりやすい本レースの特性は大きなハードルとなりそうです。

・マリアエレーナ
母テンダリーヴォイスはディープインパクト×キングカメハメハの主流配合馬で、全弟には2018年日本ダービー馬ワグネリアンがいる良血馬です。本馬は父にクロフネを配し、本レースと相性の良いRobertoの血も内包します。同コースで行われた愛知杯では2年連続で好走しており、先行馬有利の金鯱賞ならさらに高いパフォーマンスが期待できそうです。

・ディープモンスター
母シスタリーラヴはAW8.5F戦の加GⅢなどを制したカナダ古牝馬チャンピオン。Traffic Judgeの5×5を中心としたパワーやスタミナが持ち味です。本馬の全兄ダノンアレーはダート路線で3勝を挙げています。比較的小柄な本馬は父ディープインパクトの良さが前面に出ていますが、父の産駒の中ではスタミナタイプに寄っており、中京芝2000mの適性も高そう。今回のメンバーでは先行力も平均以上で、初重賞制覇の可能性も十分にありそうです。

2023年金鯱賞の傾向と血統インフォグラフィック,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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