【弥生賞】皐月賞とは異なる適性が求められる　小回り、瞬発力勝負に強いLyphardの血

2023/03/02 06:00

坂上明大

ⒸSPAIA

この記事のレース

報知弥生ディープ記念

GⅡ

3月5日(日)　中山11R

傾向解説

皐月賞と同じ中山芝2000mで行われる最重要ステップ・弥生賞。ただ、弥生賞勝ち馬の皐月賞制覇が2010年のヴィクトワールピサ以降出ていないように、同コースとはいえ求められる適性は微妙に異なります。血統面を中心に、弥生賞のレース傾向を整理していきましょう。

冒頭で述べた通り、弥生賞と皐月賞では求められる適性が微妙に異なります。これは、皐月賞がGⅠらしい多頭数のハイペースになりやすいのに対して、弥生賞は前哨戦らしい少頭数のスローペースになりやすいためです。「機動力が求められる弥生賞」と「底力が求められる皐月賞」と覚えておくといいでしょう。

・良馬場時(過去10年)の前後半1000m平均ラップ
弥生賞：61.5-59.8（後傾1.7秒）
皐月賞：59.2-59.3（前傾0.1秒）

血統面においても、これによる傾向が表れています。中山内回りの芝中距離重賞ではNureyev≒Sadler's Wells=Fairy Kingが中心になることが多く、先週の中山記念(中山芝1800m)の2着馬ラーグルフ(Sadler's Wells=Fairy Kingの4×3)はその典型例といえるでしょう。ただ、スローペースになりやすい弥生賞ではより俊敏な血統が走りやすく、その代表例がディープインパクトなどが持つLyphardの血です。

血統別成績（過去10年）,ⒸSPAIA

フランスのトップマイラーとして活躍した同馬は欧州馬の中でも軽いスピードに優れ、日本の小回り、かつ瞬発力勝負になりやすい競馬とも非常に相性のいい血脈といえるでしょう。特に、近年は同血脈をクロスする馬の好走が目立ち、DanzigやBlushing Groomなどの主要な血統構成が似ている血と組み合わせるパターンからも多くの好走馬が出ています。

血統解説

・トップナイフ
母母ビクトリーマッハは2000年年度代表馬テイエムオペラオーの半姉で、本馬の半兄には2015年七夕賞2着馬ステラウインドがいます。Lyphardの血は持ちませんが、DanzigやBlushing Groomなど機動力に優れた血を複数持ち、スローペースのホープフルSでの走りがまさに本馬の良さが発揮された一戦だったといえるでしょう。平均～スローペースの小回り中距離戦がピッタリです。

・タスティエーラ
母母フォルテピアノはBold Ruler的スピードが持ち味の繁殖牝馬で、本馬もダッシュ力に優れた先行馬として安定したパフォーマンスを見せています。サトノクラウン産駒らしく馬体の完成度は高くないですが、中山替わりや2000mへの距離延長は問題ないでしょう。

・ヨリマル
血統面でのイチオシはヨリマル。父リアルスティールは過去10年で7頭の勝ち馬を出すディープインパクトの直仔で、本馬は弥生賞の重要血統であるLyphardを5×3でインブリードする配合形でもあります。遅生まれということもあり心身ともに幼さが目立ちますが、今回の舞台への適性はメンバー中でも上位の1頭です。

ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。