【チューリップ賞】異例の「逆輸入種牡馬」ダノンバラード 重賞2勝馬キタウイングを送り込む【マイナー種牡馬応援団】

緒方きしん

ダノンバラード産駒のデータ,ⒸSPAIA

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名種牡馬ディープインパクト、その最初の重賞馬ダノンバラード

先週の阪急杯にはヴァンセンヌ産駒のロードベイリーフが登場。単勝14番人気265.3倍の低評価だったが、人気を上回る10着でゴール。3着とは0.3秒差の健闘を見せた。得意の1000m戦に出てくれば、さらなる上位進出を期待できそうだ。

さて、今週は土曜の阪神メインでチューリップ賞が開催される。過去にはウオッカやブエナビスタ、エアグルーヴやテイエムオーシャンといった名牝を送り出してきた。ハープスターやダノンファンタジー、シンハライトといったディープインパクト産駒が強いことでも知られるレースだが、近年はキズナ産駒のマルターズディオサやミッキーアイル産駒のメイケイエールなど、ディープインパクトの孫世代も活躍を見せている。今回は桜花賞の前哨戦に集った牝馬から、重賞2勝馬キタウイングに注目。父はディープインパクト産駒のダノンバラードである。

ダノンバラードは、母レディバラード、母父Unbridledという血統。父ディープインパクト、母父Unbridledの組み合わせからは新潟大賞典を勝ったダコールなどが出ていて、父ディープインパクト、母父Unbridled's Song(その父Unbridled)の組み合わせはコントレイルやダノンプラチナ、レッドベルオーブを輩出している。また、ダノンバラードの母であるレディバラードは現役時代、クイーン賞やTCK女王盃を制したダートの活躍馬だった。

そして、ダノンバラードはディープインパクトの初年度産駒。新馬戦制覇、京都2歳Sでの3着を経て、ラジオNIKKEI杯2歳Sを制覇。これがディープインパクト産駒の記念すべき初めての重賞制覇でもあった。3歳となって皐月賞に挑戦すると、オルフェーヴル、サダムパテックに次ぐ3着と好走。トーセンラーやベルシャザールといった後のGⅠ馬にも先着した。その後も日経新春杯で2着、中日新聞杯で2度の3着など重賞戦線で活躍を続けたダノンバラードは、5歳時にAJCCを制覇。同年の宝塚記念ではゴールドシップに次ぐ2着に食い込み、ジェンティルドンナやフェノーメノらに先着する好走を見せた。

海外から再度輸入された異例の経歴

ダノンバラードの種牡馬成績,ⒸSPAIA ダノンバラード産駒の通算成績,ⒸSPAIA


引退後のダノンバラードは、日高スタリオンステーションにて種牡馬入り。初年度である2016年の生産頭数は26頭で、その翌年は6頭と減少する。一時期は海外へ輸出されるものの、初年度産駒ナイママがコスモス賞を制して札幌2歳Sで2着と好走。同じく初年度産駒のロードブレスは日本テレビ盃を制し、浦和記念・みやこSで2着、エルムS・アンタレスS・名古屋大賞典で3着などダート戦線で活躍を続けた。

日本に残された産駒たちの活躍により、ビッグレッドファームに買い戻され、再度日本へ戻ることとなったダノンバラード。2020年には66頭を生産し、翌年は34頭と減らしたものの2022年は51頭と頭数を伸ばした。

日本に復帰して最初の世代が、現3歳世代。48頭が中央で走り、9頭が合計13勝を挙げている。ミシシッピテソーロが新馬戦・ダリア賞を連勝、フェルヴェンテが未勝利戦・なでしこ賞を連勝。1勝馬にもサウジアラビアRC2着のグラニットなど今後が楽しみな存在が多い。ダート転向した初戦で勝利した馬が2頭、2戦目で勝利した馬が2頭いるように、芝→ダートへの転戦は注目。また、13勝のうち9勝があがり最速と、末脚自慢も多い。

この世代13勝のうち1番人気では1勝と、伏兵評価をひっくり返すタイプが多い中で、その象徴ともいえる走りを見せているのが今回チューリップ賞に挑戦するキタウイング。新潟2歳Sを4番人気で制すると、阪神JF14着を挟んで年明けのフェアリーSでは11番人気で勝利した。これまでにあげた3勝はいずれも上がり最速と、末脚勝負になると抜群の切れ味を見せている。

ダノンバラード産駒の通算成績に目を向けると、主戦場は芝1500~1800mで【13-15-18-132】、勝率は7.3%。ただ、出走頭数こそ少ないものの、勝率の上ではダート1500~1800mが【5-4-5-32】で10.9%、ダート1900m以上が【3-2-1-6】で25.0%と、目を見張るものがある。同条件のダート1500~1800mでディープインパクト産駒は【174-128-147-1383】勝率9.5%。この数字と比較すると、ダノンバラードは母であるダートの実績馬レディバラードの影響を色濃く受けているのかもしれない。過去には佐賀→浦和で11連勝をあげた牝馬ダノンレジーナも輩出している。

キタウイングは、ミルファーム生産・ミルファーム所有の馬。現3歳世代のダノンバラード産駒における賞金上位5頭のうち3頭がミルファーム所有馬で、他にも未勝利戦で2着のあるピンクジン、アマイも同馬主である。ダノンバラード産駒の強さを見抜いたミルファームを牽引する1頭として、キタウイングのさらなる激走に期待したい。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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