【阪急杯】名牝フラワーパークの血を受け継ぐヴァンセンヌ ロードベイリーフを送り込む【マイナー種牡馬応援団】
緒方きしん
ⒸSPAIA
ニホンピロウイナー、フラワーパークから受け継ぐ快速馬の遺伝子
先週のフェブラリーSにはタイセイレジェンド産駒のスピーディキックが登場。浦和所属の牝馬が、中央の牡馬たちを相手に堂々たる競馬を披露し、6着と好走した。マイル戦で一流どころと互角に戦えるところを見せたスピーディキックが、今後さらなる飛躍を遂げることを期待したい。
さて、今週は日曜の阪神メインで阪急杯が開催される。今年で第67回という非常に長い歴史を持つレースで、これまで幾頭もの有力馬を高松宮記念に送り込んできた。過去の勝ち馬にはロードカナロアやローレルゲレイロ、アドマイヤコジーンやキョウエイマーチといった快速馬が名を連ねている。今回は、そんなスピード自慢が集う一戦に挑戦する6歳馬ロードベイリーフに注目。父はヴァンセンヌである。
ヴァンセンヌは、父ディープインパクト・母父ニホンピロウイナーという血統。ニホンピロウイナーはマイルCSを連覇し、安田記念も制した快速馬。産駒には、安田記念を連覇し、天皇賞(秋)も制したヤマニンゼファー、CBC賞などを制したニホンピロプリンス、中日新聞杯を連覇したファンドリショウリなどがいる。実力派の種牡馬として活躍し、2015年の目黒記念を制したヒットザターゲットの母母父としてなど、今もなお血統表に名を残している。
そのニホンピロウイナーの代表産駒の一頭が、名スプリンター・フラワーパーク。ヴァンセンヌの母である。フラワーパークは、トウカイテイオーやスティルインラブらを管理した松元省一調教師の元でデビュー。初戦こそ大敗したものの、そこから3連勝するなど、幼い頃から素質の片鱗を示した。そして田原成貴騎手に乗り替わりとなった初の重賞挑戦・シルクロードSで、ヒシアケボノ、ヤマニンパラダイスらを相手に快勝。続く高松宮杯も制してGⅠ馬の仲間入りを果たした。同年の暮れにスプリンターズSも制したフラワーパークは、1996年JRA賞の最優秀父内国産馬および最優秀短距離馬に選出された。
そんな快速自慢の名牝フラワーパークとディープインパクトの間に産まれたのがヴァンセンヌだ。ヴァンセンヌは3歳4月の未勝利戦でデビューして快勝したものの、その後は連続して二桁着順に敗れるなど、遅咲きの馬だった。本格化したのは5歳の秋。10月の条件戦で2着に2馬身差をつける快勝を見せると、そこから4連勝で重賞・東京新聞杯まで制した。さらに安田記念ではモーリスにクビ差まで迫る2着。良血馬としての矜恃を見せた。
芝ダート問わずスピード自慢の産駒を輩出
引退後のヴァンセンヌは、レックススタッドにて種牡馬入り。初年度の生産頭数は40頭で、それ以降も35頭→31頭→34頭→22頭と、30頭前後で推移している。初年度産駒では、熊本県産馬のイロゴトシが活躍。ひまわり賞を制し、京都新聞杯ではディープボンドの5着と好走している。他にも、地方競馬で佐賀の三冠馬トゥルスウィー、高知の二冠馬ハルノインパクトらを出した。現4歳馬のバラジは、デビュー6戦目でそれまでのマイル路線から中距離路線に切り替えると、そこから8戦連続で馬券圏内を確保。安定感を見せつつ3勝をあげる、期待の1頭である。
ヴァンセンヌ産駒はこれまで58頭が中央に出走して17頭が勝ち上がり、35勝をあげている。重賞は10戦して未勝利だが、特別競走では10勝をあげている。また、芝で21勝、ダートで13勝と芝だけでなくダートでも適性を見せている。
距離適性にはやや偏りがあり、1400m以下のレースで半数近い16勝を占めている。これは、母父であるニホンピロウイナーの影響を感じさせる戦績で、ニホンピロウイナーも芝1400m以下で187勝、芝1500m以上で82勝、ダート1400m以下で196勝、ダート1500m以上で40勝と短距離に勝ち星の偏った種牡馬だった。
ロードベイリーフもそうした短距離適性を引き継いだ馬で、これまであげた4勝のうち3勝が1200m戦。さらにはオープン競走・韋駄天Sで10番人気2着、アイビスSDで14番人気3着など、1000m戦での好走も目立つ。今回は2020年12月以来の1400m戦となるが、距離的に守備範囲ではあるはずで、アッと驚かせる激走を見せても決して不思議ではない。
ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。
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