【小倉大賞典】道悪、特殊な流れ、平坦コースを味方に　チャンスつかんだヒンドゥタイムズ

2023/02/20 11:05

勝木淳

ⒸSPAIA

この記事のレース

小倉大賞典

GⅢ

2月19日(日)　小倉11R

カギを握るレッドベルオーブの逃げ

雨の多い冬の小倉開催はこの日も午前中まで降った雨の影響で芝は終日重馬場。ボコボコに掘れる状態は馬場読みの難解な小倉の予想をさらにややこしくした。このレースはそういった馬場状態に加え、レッドベルオーブとテイエムスパーダが参戦し、厳しい展開が予想された。

なんといってもレッドベルオーブだ。昨夏同じ舞台の小倉日経オープンで大逃げを打ち勝利して以来、気性難を封じ込めるのではなく、どう抱え込んでレースをするかに重点が置かれた。小倉日経オープンは序盤600m34.7、中盤600m34.7、終盤600m36.1で1:45.5（1000m通過57.6）。2着を3馬身もちぎった。

前走関門橋Sは序盤600m33.7、中盤600m34.6、終盤600m37.2（1000m通過56.6）で中盤までが速すぎて10着大敗。いかに突っ込まずに流れを作り、気分よく走れるかにかかっていた。陣営は今回、対策としてブリンカーを装着。快速テイエムスパーダは600mの距離延長を考慮し、飛ばしてはこない。集中して走らせ、さらに制御できれば道はある。

しかし、スピード身上のレッドベルオーブに重馬場は厳しかった。今回は序盤600m36.5、1000m通過1:00.3、中盤600m36.2は馬場差を考慮すれば小倉日経オープンに近い感覚だったが、序盤から頭を上げながら走り、向正面でやや速くなった影響で、4コーナー手前で早々に失速。2番手にいたテイエムスパーダ共々、直線まで脚を残せなかった。ラップ構成は悪くなかったが、馬のリズムが整わなかったようだ。同時にいかにスピードを削ぐ馬場だったのかがわかる。

好走ゾーンが広がったバジオウ

前半から速いラップが続き、残り800m12.4-12.5-12.0-12.5という持久力勝負になったことがヒンドゥタイムズの勝因だった。序盤は中団馬群の内目に潜んで脚を溜めて進み、コーナーは馬場の悪い内側を避けつつ、かといって外を回りすぎず通過し、外から一気に抜けたバジオウを射程圏内に入れた。急坂があるコースで最後に時計を要する形だと坂を上がってから甘くなるタイプで、平坦の小倉は上手い。坂がなかった分、最後12.5と時計を要しても伸びきれた。この舞台はベストで道悪巧者。勝てる条件がそろったレースを勝ちきったのは大きい。

2着カテドラルは9番人気。小倉芝1800mの中京記念で2年連続2着のコース巧者が気を吐いた。中京記念はどちらも良馬場で後半800mのロングスパート型の競馬だった。今回はさらにパワーを要する我慢比べに近い持久力戦でも2着に来たので、このコースなら展開を選ばない。ヒンドゥタイムズを前に見ながら追走し、最後の直線はさらに内を突いて伸びた。特殊な展開で次につながりにくい競馬だったことで、買いどころは相変わらず難しい。平坦、コーナー4回の芝1800mで長く脚を使う競馬はそう多くはない。

3着バジオウは見せ場たっぷりの強い競馬だった。バテたレッドベルオーブを早々に捕まえ、4コーナー外から勢いよく脚を使い、完全に抜け出した。そこで脚を使ってしまい、最後は苦しくなった。以前は東京など広いコースで前から踏ん張るのが得意パターンだったが、冬の小倉2戦で着実にレースぶりに進境がみられる。小回りを上手く立ち回れれば、ローカル重賞などでチャンスは増す。先行力もあるので崩れにくい。

1番人気レッドランメルトは10着。先に抜けたバジオウを追いかけるも、差を詰められなかった。こちらはこういったパワーを要求される馬場は得意ではない。3番人気ロングランは4着。4コーナーの手応えはよくなかったが、直線は道悪巧者ぶりを発揮し、しぶとく食い下がった。重賞ではもう少し反応のよさがないと前と離されてしまう。慣れが必要だろう。

ライタープロフィール
勝木淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』（中央競馬ピーアール・センター）にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『テイエムオペラオー伝説　世紀末覇王とライバルたち』『競馬伝説の名勝負 GⅠベストレース』（星海社新書）に寄稿。