【シルクロードS】勢いあるマッドクール、トウシンマカオが有力 穴馬は逃げたら一発あるテイエムスパーダ
山崎エリカ
ⒸSPAIA
今週からBコース替わりも、そこまで内有利ではない
シルクロードSは6回中京から2週開けて、1回中京開催A→Bコース替わりで行われる。Bコースは前開催の後半2日で使用されていたコースということもあり、グリーンベルト状態ではない。ただ、馬場の内外の差がほぼなかった先週よりも内が有利にはなる。
しかし、昨年は外から差したシャインガーネットやナランフラグが2、3着に好走しているように、外からの差しも決まるので注意したい。
能力値1~5位
【能力値1位 トウシンマカオ】
デビュー2戦目の京王杯2歳Sで2着に善戦するなど、2歳時から高い素質を見せていた馬。昨秋のオパールS、京阪杯を連勝し、前走で初重賞制覇を達成。戦国時代の様相を呈するスプリント路線において、トップクラスの1頭に台頭した。
前走は14番枠からまずまずのスタートを切り、軽く押して一旦先頭列の外2番手まで持っていった。しかし、外からビアンフェが絡んでくると好位直後の5番手まで位置を下げて追走。前2頭が引っ張る流れを離れた5番手で脚を温存し、3~4角の外から好位列まで上がって4列目で直線へ。直線では早々に3番手まで上がり、ラスト1Fで先頭のキルロードを楽に捉えて1馬身1/4差の完勝だった。
本馬は3歳春までは、芝1400m~芝1600mで先行する競馬で勝ち負けを繰り返していた。しかし、夏以降は芝1200m戦を使われ、差し、追い込みの競馬をするようになり、安定感を増しながら上昇してきた。今回も近3走同様に外枠、中団からの競馬が予想される。上位争いの可能性が高く重い印は打ちたいが、ただ前走で自己最高指数を記録した後の一戦となると、本命視するのは悩ましい。
【能力値2位 ウインマーベル】
昨秋のスプリンターズSでは7番人気ながら2着と好走した馬。同レースは7番枠から五分のスタート切った。そこから軽く促され一旦好位の中目につけ、そこから位置を下げて中団中目を追走。前にダイアトニックを置きながらコントロールして乗られていたが、3~4角で同馬の外に出した。直線に入ると中団中目を捌いて2列目まで上がり、早め先頭からラスト1Fで甘くなったジャンダルムにクビ差まで迫って2着だった。
スプリンターズSは後方待機策だったナランフラグが直線一気で3着に入ったように、前半3F32秒7-後半3F35秒1のかなりのハイペースで前に厳しい展開だった。実際にこのレースで押して序盤の先行争いに加わり、そのあと控えて4着に敗れたダイアトニックはその後、スワンS、阪神Cを連勝している。
本馬もナランフラグほどではないが、展開に恵まれた面があったのも確か。今回は前走を大目標とし、そこで自己最高指数で好走した後の休養明けの一戦。ここに照準を合わせるのが難しいうえに、トップハンデ59Kgを背負うとなると狙いにくい。
【能力値3位 ナムラクレア】
昨夏の函館スプリントSでは古馬をあっさり撃破し、小倉2歳S以来の重賞制覇を達成した馬。当時は斤量50kgの恩恵もあったが、7番枠から五分のスタートを決め、そこから押して楽な二の脚で先行争いに加わって行く形。レースが前半3F32秒8-後半3F34秒4のかなりのハイペースだったが、そんな中を2列目の外を追走し、3~4角では前との差を詰めて行く横綱競馬。直線はしぶとく伸びてラスト1Fで先頭に立つと、後続を引き離して2馬身半差で完勝した。
次走の北九州記念はコンクリート馬場で、内枠をロスなく立ち回った馬が上位を占める決着だった。本馬は大外16番枠から好位を狙ったものの、徐々に下がり中団外を追走。3~4角で包まれ、直線で中目の狭いところを走るスムーズさを欠く競馬ながらも、最後によく伸びて3着に善戦した。
前走のスプリンターズSは9番枠から五分のスタートを切り、好位直後の外を追走。前に1番人気メイケイエールを置きコントロールされて乗られていた。4角で同馬に被せに一気に仕掛けたが、抵抗されたため4角でかなり外に張られ、結果ラスト1Fで伸び切れずに5着に敗れた。
スプリンターズS当日は内が圧倒的に有利で、4角で内目を立ち回った馬が上位争いをした。結果的に4角のロスは大きかったが、差し、追い込み有利の展開だったことを考えると、やや物足りない内容ではあった。
今回はGⅠでロスがありながら上位争いしたことや、そこで2着だったウインマーベルよりも斤量が軽いことから1~2番人気に支持される可能性が高い。しかし、前走の結果を鵜呑みにするのは危険。あくまでも有力な相手候補の一頭と見る。
【能力値4位 キルロード】
重馬場で行われた昨春の高松宮記念では17番人気ながら3着と好走し、大波乱を演出した馬。同レースは10番枠から好スタートを決め、そこから押して押しての先行策で2列目の外まで持って行く形。3~4角でも前2頭を見ながら押して追走、最後の直線ではジリジリと伸びて、ラスト1Fでは内からナランフレグ、外からロータスランドに強襲されたもののクビ差+ハナ差だった。同レースはタフな馬場を前半3F33秒4のハイペースで逃げたレシステンシアが6着に敗れていることから、よく粘っている。また、その走りがフロックでないことを前走の京阪杯で証明した。
前走は6番枠から好発を切り、そこから押してハナを主張。しかし、外からビアンフェがしつこく競ってきたので、先に行かせ2番手に下げた。3~4角でビアンフェの外から積極的に仕掛け、直線を向くと先頭へ。ラスト1Fで外から伸びてきたトウシンマカオに差されたが、1馬身1/4差の2着に粘った。前走は高松宮記念ほどのハイペースではなかったが、早め先頭から高松宮記念のようなしぶとい競馬ができた。ただ本馬が前走で記録した指数は同レースと同等なもので、前走も高松宮記念同様に休養明けだった。最後にやや伸びを欠いた前々走の函館スプリントSのように、休養明け好走の反動が出ても不思議はない。
【能力値5位 マッドクール】
デビュー2戦目のダ1400mの未勝利戦で押して押してハナに立って行き切ると、太目の体が絞れて上昇気流に乗り、次走から4連勝でオープン入りした馬。4勝全てが高速馬場で近2走が中京芝1200mという、高速中京芝1200m巧者だ。
前走の知立Sは6番枠から五分のスタートを切り、そこから促されて二の脚も速く、先行争いに加わって行く形。しかし、外からもテイエムトッキュウ等が上がってきたので、最終的には好位の内目に収めて5番手を追走。3~4角では中目に出して3列目まで上がり、直線序盤で一気に伸びて先頭。ラスト1Fではもう抜け出し、外からグンと迫るエイシンスポッターを振り切って完勝した。
前走は2着エイシンスポッターとは1馬身半差だったが、3着スンリ(近走3勝クラス好走馬)に4馬身半差を付けての勝利で、記録した指数は重賞通用レベル。レースが平均ペースで流れたとはいえ、ラスト2F11秒2-11秒4とほとんど減速していない点も好ましい。
ただ今回は休養明けで自己最高指数を記録した後の一戦。前走は消耗度がそこまで高くない内容ではあったが、休養明けで好走した反動が多少気掛かりではある。その中でこれまでよりも馬場がタフになることを考えると、素直に食いつけない。それでも近い将来、重賞を勝てるレベルの馬ではあるだけに、重い印は打ちたい。
穴馬は逃げたら怖いテイエムスパーダ
コンクリート馬場で行われた昨夏のCBC賞は、5番枠から五分のスタートを切ると押してハナを主張。そのままペースを落とさず3~4角でリードを広げ、3馬身半差で圧勝した馬。同レースのラスト2Fは11秒1-12秒0。ラスト1Fで甘くなり、そこで後続馬にやや詰め寄られたが、それもそのはず。このレースは前半3F31秒8という、直線競馬唯一の重賞アイビスSDでもお目に掛かれない超ハイペースでの逃亡劇だった。
CBC賞は斤量48Kgに恵まれた面が大きいが、同レースで本馬が記録した指数はここでは破格。その後は斤量を課せられテンに鈍さを見せて、何とかハナを切るようなレースをしている。そういったことからCBC賞は斤量が軽かったことで、楽にハナに行けたことが一番の勝因と見ている。
今回も前々走のスプリンターズSのように内枠からスタートで出遅れると、追っつけて挽回していく競馬になる可能性もあったが、11番枠と外目の枠を引いた。本馬はテンが速い馬ではなく、この枠はいいだろう。またジャスパージャックが回避したことで、同型馬はキルロードのみとなった。
前走の京阪杯はひとつ外のキルロードにぶつけられ同馬の直後を追走する形になったが、外枠ならじわっとハナを主張していた可能性もあった。今回もキルロードより内枠だが、同馬は前走2番手で折り合って結果を出していることから、今回は逃げない可能性もある。キルロードの出方ひとつではあるが、本馬がハナを主張する可能性もあり、人気薄のここは一考したい。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)トウシンマカオの前走指数「-23」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.3秒速い
●指数欄の下線の茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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