産駒が少なくなってきたベテラン種牡馬たち ステイゴールド産駒は38頭が現役続行中

緒方きしん

ステイゴールドとタイキシャトル産駒の通算成績,ⒸSPAIA

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まだまだ健在、名種牡馬ステイゴールドの産駒たち

東海Sではスタートで躓き鞍上・荻野極騎手が落馬しながらも、カラ馬のまま先頭でゴールしたヴァンヤールがSNSなどで話題となった。その父タートルボウルはアイルランド生産・フランス調教の名馬で、2013年に種牡馬として日本に輸入され、タイセイビジョンやトリオンフといった重賞馬を輩出したが、2017年に急死。現役馬(※地方競馬含む。以下同様)は48頭しか残されていない。今回は、そんなタートルボウルのように現役産駒が残り少なくなってきた名種牡馬たちについて紹介していく。

産駒が残り僅かながらも存在感を示し続けている名種牡馬といえば、ステイゴールドがあげられるだろう。昨年は11歳のオジュウチョウサンがJRA賞最優秀障害馬に選出され、7歳のステイフーリッシュがサウジアラビアとドバイの重賞を連勝、アフリカンゴールドが京都記念を逃げ切った。オジュウチョウサンやステイフーリッシュは引退してしまったものの、まだ38頭の馬たちが現役を続けている。

ステイゴールドは1996年にデビューした良血馬。2度目のGⅠ挑戦となった1998年天皇賞(春)で10番人気2着と好走すると、同年の宝塚記念、天皇賞(秋)で9番人気2着、4番人気2着とGⅠの舞台で活躍した。それ以降も中距離戦線の一線級で走り続けるものの、詰めの甘さから勝ち切るまでには至らず、長らく主な勝ち鞍は『阿寒湖特別(900万下)』という状態だった。しかし2000年に武豊騎手とのコンビで目黒記念を制すると、翌年には日経新春杯・ドバイシーマクラシックを連勝。さらに引退レースとなった香港ヴァーズで勝利し有終の美を飾った。

ステイゴールドの活躍は、引退してからもとどまることがなかった。2世代目から2歳王者ドリームジャーニーを輩出すると、その全弟であるオルフェーヴルが三冠馬となる。さらに、同じく母父メジロマックイーンの配合からGⅠを6勝するゴールドシップを輩出。その2世代後には歴史的な名障害馬オジュウチョウサンを送り出し、競馬史にその名を深く刻み込んだ。

2023年1月23日現在、現役を続けているステイゴールド産駒のなかで、獲得賞金額のトップは11歳のマイネルレオーネ。昨年は中山GJ・中山大障害でいずれも3着と安定感を見せつけ、今年さらなる飛躍が期待されている。また、同じくマイネルの冠を持つマイネルファンロンも、6歳で新潟記念を制して、7歳でAJCCの2着に食い込んだ実力派。宝塚記念でも5着と好走し、7歳とは思えない健在ぶりをアピールした。今年は京都記念から始動との報道もあり、活躍が楽しみな一頭だ。

その京都記念には昨年覇者のアフリカンゴールドも出走を予定しており、ステイゴールド産駒のファンにとって見逃せないレースとなりそうだ。昨年2勝をあげた9歳馬ゴールドスミスも含め、今年もまだまだ楽しませてくれるに違いない。

名スプリンター・タイキシャトル、ダート界を盛り上げたカネヒキリ、ヴァーミリアンの産駒

現役馬が残り26頭となっているのがタイキシャトル。2017年に種牡馬を引退してからは、イーストスタッドやヴェルサイユファーム、ノーザンレイクなどで余生を過ごし、SNSなどで多くのファンから愛された。昨夏に老衰でこの世を去ったが、その血を受け継ぐ馬たちが今も競馬界を賑わせている。

現役のタイキシャトル産駒として、獲得賞金額のトップはトミケンスラーヴァ。こちらは稀代の名スプリンターだった父とは違う適性を発揮し、2017年から2018年にかけて準オープン競走・古都S(芝2400m)、オープン競走・万葉S(芝3000m)を連勝するスタミナ自慢の馬だった。天皇賞(春)にも挑戦するなど芝長距離で活躍を見せ、その後2021年に高知へ移籍。2年間で35戦以上ものレースに出走し、4勝をあげている。13歳となった今年も1/22に早速レースに出走し、前走から17キロ増ながらも6着と善戦した。

タイキシャトルは父系として、メイショウボーラー→ニシケンモノノフのラインが繋がっているほか、ワンアンドオンリーやバビットの母父でもある。名牝ストレイトガールやレーヌミノルの母父でもあり、今後も血を広げていく可能性は十分と言えるだろう。

ダートで一時代を築き上げたライバル同士であるカネヒキリ、ヴァーミリアンも、現役を続行している産駒はカネヒキリが53頭、ヴァーミリアンが46頭と残り少なくなってきた。

カネヒキリは2005年と2008年の最優秀ダートホースにも選出された馬で、怪我を乗り越えながらジャパンCダートやフェブラリーS、東京大賞典などを制した名馬。2011年から種牡馬となり人気を集めていたが、2016年に種付け中の事故で急死した。残された産駒からは2019年川崎記念の勝ち馬ミツバや2017、2018年のコリアCを連覇したロンドンタウンなどが活躍。現在は一昨年の佐賀記念で6着などの実績がある9歳馬メイプルブラザー(兵庫)らが現役を続けている。

一方のヴァーミリアンも、2007年の最優秀ダートホースに輝いた強豪。母はスカーレットレディ、父はエルコンドルパサーという良血馬で、GⅠ級競走で9勝をあげるなど勝ち星を積み上げた。父としては芝の重賞馬ノットフォーマルや交流重賞馬ノブワイルド、ラインシュナイダーらを輩出。現在も産駒のリュウノユキナが、2020年9月から16戦連続で掲示板を外さない安定感を見せつけている。リュウノユキナは7歳となった昨シーズンもJBCスプリントで2着などダート短距離戦線で活躍を見せていて、今年は待望のGⅠ級タイトル獲得が期待される。

キングヘイローやダンスインザダークの産駒も現役続行中

他にも、産駒が残り少なくなってきた種牡馬たちをいくつかリストアップした。スウェプトオーヴァーボードは2018年ステイヤーズS勝ち馬リッジマンが現役を続けていて、9歳だった昨年は岩手からジャパンCに参戦するなど意欲的な挑戦を見せた。キングヘイロー産駒としてはダービーグランプリの勝ち馬ギガキングが5歳で現役バリバリの活躍を続けていて、今年のチバテレ盃でも単勝1.9倍の圧倒的人気に応えて勝利を収めている。

メディアでも取り上げられ話題となった、7歳デビューのトウカイテイオー産駒キセキノテイオーも今年で9歳を迎えた。現役登録がされているというだけで出走がほとんどない馬もいるが、それでも懐かしい名前をいまだに見られるというのは楽しいものだ。ダンスインザダークも、まだ地方所属として2頭の現役馬が登録されている。

いつかはキングカメハメハやディープインパクトの産駒も、競馬場で見られなくなる日が来る。しかしそれは同時に、新しい世代がその血や魂を受け継いで台頭してきたということでもある。残された産駒たち、そして新世代の種牡馬たちのさらなる活躍に期待したい。

【現役産駒が減少している主な種牡馬と現役頭数】
スウェプトオーヴァーボード 74頭
キングヘイロー 64頭
マンハッタンカフェ 25頭
アサクサキングス 22頭
スズカマンボ 11頭
アドマイヤコジーン 7頭
ホワイトマズル 7頭
スペシャルウィーク 3頭
デュランダル 3頭
アドマイヤオーラ 3頭
ダンスインザダーク 2頭
トワイニング 2頭
ニューイングランド 2頭
ノボトゥルー 2頭
ブライアンズタイム 2頭
ティンバーカントリー 1頭
マヤノトップガン 1頭
ファルブラヴ 1頭
フサイチコンコルド 1頭
トウカイテイオー 1頭

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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