【AJCC】今年こそ勝負のノースブリッジ 経験と成長力を味方に好発進!

勝木淳

2023年アメリカジョッキークラブカップのレース結果,ⒸSPAIA

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父系、母系から伝わる晩成の力

1回中山の古馬中距離重賞はラーグルフの中山金杯に続き、AJCCをノースブリッジが制してモーリス産駒が独占した。前年5回開催AコースからCコースに替わる新春の中山は時計を要するうえに先行有利で、持続力型に分がある。そういった馬場傾向にハマるだけではなく、ラーグルフもノースブリッジもモーリス産駒特有のじわじわと力をつける晩成の血が騒いだ結果でもあった。

ノースブリッジの現5歳世代が初年度のモーリス産駒はこの勝利でJRA重賞12勝目をあげ、このうち芝は11勝で、内訳は1200m1勝、1400m2勝、1600m1勝、1800m1勝、2000m3勝、2200m3勝になった。デビュー当初はマイル以下という評価もあったが、2000m以上6勝で、中距離寄りでマイル以下もこなせる懐の深さを実感する。2200m3勝は今回のほかにジェラルディーナのオールカマーとエリザベス女王杯。非根幹距離で瞬発力より持続力を必要とするコースに強いのはスクリーンヒーローの父グラスワンダーを想起させる。

ジャックドールや4歳秋に開花したジェラルディーナのように古馬になって力をつける産駒が多く、重賞も3歳5勝に対し4歳6勝。6勝のうち4つはGⅡ以上で、より格上のレースで通用するのは4歳から。ノースブリッジも昨秋は毎日王冠、天皇賞(秋)と古馬中距離王道を進み、5、11着で壁にはね返されたが、今年はこれを越えてくる予感がある。

母の母はビッグテンビー。母のきょうだいにローレルゲレイロがいる。同馬はデビューからしばらくマイル路線を進み、5歳春に高松宮記念でGⅠ初制覇。さらに秋にはスプリンターズSも勝ち、5歳で春秋スプリントチャンピオンに輝いた。遅咲きのスプリンターだった。母系にも晩成の血が入ったノースブリッジが、5歳で2200mのGⅡを勝った事実は適性の幅を広げたことも合わせて大きく、大阪杯や宝塚記念も狙えるのではないか。

岩田康誠騎手とのコンビは9戦連続で通算10度目。今回もずっと同じ騎手が乗り続ける強みをレースで発揮した。徹底的に好位のインにこだわり、残り400mで前を行くバビットの外へ持ち出して、抜け出した。序盤、行きたがるところあるノースブリッジに、岩田康誠騎手の徹底的にインを進む騎乗はマッチしており、操縦性も高い。一発託したくなる人馬だ。

2、3着は勝ち馬と同じ適性

シャムロックヒルがバビットを制したペースは前半600m36.3、1000m通過1.01.3と遅めで、シャムロックヒルをバビットがかわしにかかった残り800mから12.4-11.9-11.3-12.0とラップを刻んだ。4コーナー付近を通過する11.3を乗り切れたかどうかが結果を左右した。2着エヒトはこの区間を外からまくり気味に進出、相変わらずまくりに迫力があった。この形がハマるコースなら今後も重賞で安定して走るのではないか。最後まで長くいい脚を見せており、こちらも持続力勝負で本領を発揮する。

3着ユーバーレーベンはオークス以来の複勝圏内突入で復活の兆しをみせた。こちらはエヒトより先に3、4コーナーをまくり気味に勢いよく進み、4コーナー出口で先頭集団に並び、見せ場を作った。先に動いた分、エヒトに捕まったが、コーナーで勢いよく加速し、その惰性を味方に持続力で持ちこたえる競馬がベストな印象。ソダシと競り合ったハイペースの札幌2歳Sが原点であり、こういった形の競馬で力を発揮する。

2着エヒトはルーラーシップ、3着ユーバーレーベンはゴールドシップ産駒で、いずれもノースブリッジのモーリス産駒と同じく晩成のきらいがある持続型の血統。おそらく今後は好走時に一緒に来る可能性があるので、そういったくくりも覚えておきたい。2頭はサウジのレッドシーターフHにも登録があるので流動的だが、イメージ的には宝塚記念で面白そうだ。

1番人気ガイアフォースは5着。好位の後ろから理想的な進め方のように見えたが、4コーナーで接触する場面もあり、直線は思ったほど弾けなかった。同舞台でも馬場が軽い秋に行われるセントライト記念と力のいる冬の馬場ではパフォーマンスに差があり、そこに適性のヒントが隠れている。今後は速い時計が出る馬場で評価をあげよう。

2023年アメリカジョッキークラブカップのレース展開,ⒸSPAIA



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『テイエムオペラオー伝説 世紀末覇王とライバルたち』『競馬 伝説の名勝負 GⅠベストレース』(星海社新書)に寄稿。



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