【根岸S】堂々主役のレモンポップ最有力 穴は展開を味方にデンコウリジエール
勝木淳
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2023年東京競馬開幕
根岸は日本初の洋式競馬場が開設された地。ときはさかのぼること157年前、1866年慶応2年のこと。春には薩長同盟が成立、夏には江戸幕府14代将軍家茂が大坂城で病に倒れ、暮れには一橋徳川家第9代当主・慶喜が二条城で第15代将軍に就任し、幕末が一気に動き出した年に、日本の競馬は歴史を刻みはじめた。
日本近代競馬の出発地が記された根岸Sはその年の東京競馬場開幕を告げる重賞として定着した。さて、今年は東京競馬場でいったいどんな歴史が刻まれるだろうか。まずはGⅠ開幕戦フェブラリーSへの挑戦権をかけた戦いに注目しよう。データは過去10年間のものを使用する。
1400mには芝もダートもスペシャリストが存在する。GⅠがない距離だけに前哨戦でもスペシャリストにとっては全力で挑むレースになる。休み明けの実績馬よりここをターゲットにしたスペシャリストが強い。ファンもそれを承知しており、1番人気【4-3-0-3】勝率40.0%、複勝率70.0%はその手の1400m巧者や賞金が足りない新興勢力が中心。東京ダート1400m4戦全勝のレモンポップはプロフィール的に合致する。
勝ち馬は6番人気【2-1-0-7】勝率20.0%、複勝率30.0%以内。とはいえ、10番人気【0-1-3-63】複勝率6.0%など人気薄の複勝圏内も可能性がある。絞りすぎないようにしたい。
ダートのなかでも比較的スピード色が強い東京ダートのレースらしく、年齢別成績では4歳【2-2-0-9】勝率15.4%、複勝率30.8%、5歳【4-2-2-21】勝率13.8%、複勝率27.6%と若い馬が優勢。それでもダートらしく6歳【3-3-3-31】勝率7.5%、複勝率22.5%、7歳以上【1-3-5-66】勝率1.3%、複勝率12.0%などベテラン勢もがんばる。2、3着にはベテランもしっかり組み込もう。
気になるデータが東西所属別の成績だ。美浦【1-0-0-26】勝率、複勝率3.7%、栗東【9-10-10-90】勝率7.6%、複勝率24.4%で関西馬が圧倒的。関東馬で馬券に絡んだのは直近10年、18年6番人気1着ノンコノユメしかいない。
クラシックや芝の中距離戦線では関東馬優勢だが、ダートは基本的に関西馬が強く、昨年もJRAダート重賞は関東馬3勝に対し、関西馬は12勝。今年も上位人気想定はレモンポップと、関西から蛯名正義厩舎に転厩したテイエムサウスダンを除いて関西馬ばかり。しかし、このデータをもって武蔵野S2着レモンポップや昨年覇者テイエムサウスダンを消せるわけではない。この2頭のほかは関西馬優勢と考えるべきだろう。
東京にこだわったレモンポップとギルデッドミラー
では肝心のレモンポップやテイエムサウスダンは素直に買えるのか。ここからは前走成績を踏まえ、そのあたりをしっかり検討してみよう。
前走クラス別成績ではレモンポップが該当する前走GⅢは【5-3-2-29】勝率12.8%、複勝率25.6%で評価できる。レモンポップを武蔵野Sで差し切ったギルデッドミラーやカペラS組もここに含まれる。
レースの内訳は武蔵野S【3-1-1-6】勝率27.3%、複勝率45.5%、カペラS【2-2-1-21】勝率7.7%、複勝率19.2%で武蔵野Sがいいが、カペラSも捨て置けない。武蔵野Sの着順別成績は前走1着【0-0-0-1】、2~4着【3-1-0-3】勝率42.9%、複勝率57.1%。武蔵野S勝ち馬は昨年1番人気9着ソリストサンダー1頭なので、これでギルデッドミラーを判断するのは早計だろう。2着レモンポップを含め前走武蔵野S好走はGⅠに向かわず、東京にこだわったローテだけに評価していい。一方7着だったアドマイヤルプスは厳しい。
ではカペラSはどうだろう。こちらもカペラS1着【1-2-0-0】など3着以内【2-2-1-7】勝率16.7%、複勝率41.7%に対し、4着以下【0-0-0-13】。凡走からの巻き返しはなく、6着ジャスパープリンスなどは厳しそうだ。
次にテイエムサウスダンが当てはまる前走地方【1-1-1-26】はJBCスプリント【0-1-0-2】、兵庫GT【1-0-1-16】が好走パターン。JBCは前走競馬場が毎年変わるのでひと括りにしにくく、傾向を探しづらい。兵庫GTは1着【1-0-0-4】、2着以下【0-0-1-11】。兵庫GT4着オーロラテソーロは1400mより1200mがベストの馬であり、ここは割引か。
穴はデンコウリジエール
前走中央GⅠは【3-1-3-12】勝率15.8%、複勝率36.8%。チャンピオンズC【2-1-3-8】勝率14.3%、複勝率42.9%で、ここは6~9着【1-1-3-4】勝率11.1%、複勝率55.6%など巻き返しはあるが、10着以下だと【0-0-0-4】。負けすぎは嫌いたい。東京ダート1400m巧者タガノビューティーは前走10着で悩ましい。
格下から挑戦する組では前走ギャラクシーS【1-2-1-10】勝率7.1%、複勝率28.6%に注目。3着以内だと【1-2-1-6】でデンコウリジエールが該当する。東京ダート1400mはオープン2戦5着も、ギャラクシーSで破った2着馬バトルクライは次走すばるS1着。先行馬レモンポップが強気に出るようなら、展開を味方に馬券圏内突入もあるかもしれない。なおバトルクライの前走すばるSは【0-0-1-9】。詰まった間隔は気になる。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『テイエムオペラオー伝説 世紀末覇王とライバルたち』『競馬 伝説の名勝負 GⅠベストレース』(星海社新書)に寄稿。
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