【京成杯】期待高まるソールオリエンス 荒削りな内容はクラシックに結びつくか?

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ついつい期待が膨らむレース内容
種牡馬キタサンブラックが2世代目からもソールオリエンスという大物感ある産駒を送り出した。ひとつ年上の年度代表馬イクイノックスもそうだが、キタサンブラック産駒はいい意味で父のイメージを裏切ってくる。逃げ、先行が得意の父は生涯で上がり最速勝利は全12勝のなかで、菊花賞と不良馬場の天皇賞(秋)の2勝だけ。それも35.0、38.5。持続力で勝負するタイプで切れる脚はなかった。しかしイクイノックスもソールオリエンスも瞬発力に見どころがある。
古馬になってから全盛期を迎えた父に似ず、早期から結果を出せるのは育成の進歩もあるだろう。内国産スター揃いの種牡馬界は戦国時代であり、初年度からクラシックで結果を出せないと、立場は苦しくなる。それを差し引いて考えるべきだが、イクイノックスのように父と同じく3歳秋以降に成績をさらに向上させる産駒も今後は出てくるだろう。キタサンブラックには種牡馬としての懐の深さを感じる。
珍しく少頭数になった京成杯はグラニットが逃げて1000m通過1:02.2のスローペース。ソールオリエンスは中団からレースを進め、4コーナーで早めに手前をかえてしまい、外に大きく膨れてしまった。そんな大きなロスがありながらも、立て直して上がり600m34.5を記録。ラスト11.7-11.5で2着オメガリッチマンに2馬身半差。抜群の瞬発力を見せた。荒削りながらも秘めたるポテンシャルの一端を披露。こうして小出しに能力を見せられると、ファンはついつい期待を膨らませ、支持したくなるものだ。混戦の牡馬クラシック戦線において大きなインパクトを与える勝利であり、今後の有力馬の動向次第では皐月賞1番人気もあり得るのではないか。
3着セブンマジシャンの次走に注目
問題は京成杯が2勝馬2頭と手薄な組み合わせ、かつ少頭数のスローペースであり、そのレベルに疑問符がつくことだ。しかし、その答えは皐月賞が終わってみないことには出ない。はたして京成杯は根拠になり得るだろうか。4コーナーでの走りや直線での挙動はいかにも若駒。目一杯走らせたわけではないので、まだまだスケールを感じる一方、多頭数で消耗を抑えた走りができるかわからない。まさに諸刃の剣であり、難しい宿題が残された。
ライバルもソールオリエンスの荒削りな競馬に力を出させてもらえなかった面がある。3着セブンマジシャンはソールオリエンスの背後からマークする形でレースを進めたため、外から並びかけようとした勝負所でソールオリエンスが飛んで行き、ブレーキをかけざるを得なかった。立て直して追ったところ今度は2着オメガリッチマンが外に出てきて、進路が狭くなった。これだけ不利があっても3着確保は評価できる。
そのオメガリッチマンが外に出てきたのは、ソールオリエンスが外から戻ってきた際に前に入られ、進路を新たに作るためのもの。セブンマジシャンは結果としてソールオリエンスに翻弄された。2着オメガリッチマンは単勝万馬券の最低人気。先週のジュニアC7着からの連闘だった。勝ち馬の内にいたため、4コーナー出口で結果的に進路が開けた。この辺の進路も少頭数ゆえの自由があった。連闘、2度の輸送で10キロ減、次は状態面に気を配りたい。
ペースの割に逃げ、好位勢が抵抗できなかった点も気がかりだ。5着シルヴァーデューク、6着シャンパンカラーは距離が長かった可能性が高い。これら先行馬が距離短縮で巻き返すか、3着セブンマジシャンの次走に注目し、京成杯のレベルを推し量るしかないだろう。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『テイエムオペラオー伝説 世紀末覇王とライバルたち』『競馬 伝説の名勝負 GⅠベストレース』(星海社新書)に寄稿。
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