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【日経新春杯】勝負を分けた馬場と展開 力差をみせたヴェルトライゼンデと2着以下、それぞれの勝因と敗因

2023/01/16 10:43
勝木淳
2023年日経新春杯のレース結果,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

内も外も悪化した馬場は各騎手の解釈次第

中京競馬場は良馬場でも馬場傾向をつかみにくい。突如高速化することもあり、急坂があっても前が止まらないこともある。リニューアルして10年以上経つが、本当につかみどころがなく、予想しがいがある競馬場だ。

この週は金曜から土曜にかけて13ミリの雨量を記録し、土曜日は重馬場、日経新春杯もやや重で行われた。使うたびに土の塊が飛び、芝はすっかり剥げてしまい、傷みが少ない外側優勢も、そこを多くの馬が走ったために内外の差は次第になくなり、最終的にはどこを通っても同じ。

こうなると各騎手の解釈によって変わる。距離をロスしても外へ行くか、同じなら距離ロスを減らせる内へ突っ込むか。荒れ馬場が得意なら内へ、そうでないなら外へ。こうなると、予想の難易度はさらにあがる。日経新春杯も外へ行った馬と内に突っ込んだ馬で決まった。勝因も敗因も馬場に集約していき、次走の狙いは立ちやすい。

ヴェルトライゼンデは左回り照準で大舞台へ

日経新春杯はペースが馬場選択とレース結果に大きく影響した。先手を主張したいキングオブドラゴンとアフリカンゴールドが外枠に入った。さて行くのはどちらなのか。陣営コメントを読むとアフリカンゴールドだが、前走アルゼンチン共和国杯でハナに行ったのはキングオブドラゴンだった。同馬はアルゼンチン共和国杯でラチに接触し、調教再審査明けで状態が微妙だが、斤量はアフリカンゴールドより3キロ軽く、枠も内側。行くのはキングオブドラゴンかもしれない。

キングオブドラゴンは先行する姿勢は見せるものの、主張はそこまで強くなく、それを横切る形でアフリカンゴールドが逃げた。アフリカンゴールドが前に行った瞬間にその外をすぐとりに行ったキングオブドラゴン。作戦は番手狙いだった。その番手を脅かしたのが外にいたヴェローナシチー。この舞台の重賞好走歴があるが、条件戦を卒業できず、煮え切らない戦歴の持ち主は思い切って現状を打開する策に出た。3番手のインになったキングオブドラゴンは馬場状態の悪い内を進む。その背後をとったのが勝ったヴェルトライゼンデ。こちらも内目を進む。

プラダリアは中団で外を意識していた運び、ヤマニンゼストは後方のイン、ロバートソンキーはヴェルトライゼンデの外目を狙う。前半1000m通過1.02.1のスローペース。後半1000mはじわりとペースアップし、12.2-11.9-11.5-11.5-12.4。こうなると外へ行くロスは予想外に大きい。アフリカンゴールドと一緒に内へ行ったキングオブドラゴンは手応え以上にしぶとく食い下がり2着。内を回ったから最後の600m11.5-11.5-12.4をしのげた。

ヴェルトライゼンデはインでじっとし、4コーナーで馬場の真ん中へ持ち出す。ヴェローナシチーらが思い切って外へ行った分、空いたスペースに入る。馬場が悪すぎない箇所、かつ距離ロスを抑える。スローペースを勝ちきるにはこれしかないという競馬が光った。59キロを背負っての勝利は完勝といっていい。中京はかつてコントレイルに食い下がり、1年4カ月ぶりの出走で重賞を勝った舞台。ジャパンC3着といい、ようやく充実期を迎えた。左回りを照準に今年は大きなところを狙ってほしい。

3着プラダリアは前半の運び通り、大外狙いで伸びてきた。しかし、馬群が外に広がったため、末脚勝負をする上での距離ロスが結果を左右してしまった。もちろん、いいところを走らないと末脚は引き出せず、3着は展開に泣いた結果だ。

後方から進んだヤマニンゼストは内に突っ込んで4着。位置を考えてもスローの距離ロスは致命的になりかねず、この選択はやむなし。しぶとく伸びはしたが、こちらは馬場に泣いた。5着ロバートソンキーはヴェルトライゼンデやヤマニンゼストを意識したか、馬が行きたがり、リズムを乱した。また4コーナーでは走りのバランスが崩れる場面もあり、荒れ馬場は辛かった。

勝って一段上の力を証明したヴェルトライゼンデ、馬場の恩恵を受け、新味を引き出せたキングオブドラゴン、大外を回ったために届かなかったプラダリア、状態の悪いインに行ったヤマニンゼストと荒れ馬場で力を出せなかったロバートソンキー。中京の難易度が高い馬場とスローペース、そんな複合要因による結果は各馬の次走のために覚えておこう。

2023年日経新春杯のレース展開,ⒸSPAIA



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『テイエムオペラオー伝説 世紀末覇王とライバルたち』『競馬 伝説の名勝負 GⅠベストレース』(星海社新書)に寄稿。



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