【ホープフルS】意を決した先行策がズバリ! ドゥラエレーデの自力先行は混戦クラシックで武器に

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効果的だった序盤の攻撃
JRA一年最後の開催は翌年への序章。競馬は年が変われば、馬も年齢をひとつ重ね、騎手や調教師の成績もリセットされる。一方で、締めくくりが来たようでそうでもなく、このホープフルSは来春クラシックがぐっと近づいたことを知らせ、翌週木曜日には東西金杯を迎える。そのため、関係者はほぼ休みなく翌週に開幕する次シーズンへ向けて動き、オフというオフはない。走り続ける人と馬の物語をこれからも心待ちにしよう。
春への序章ホープフルSは14番人気ドゥラエレーデが勝利。2014年以降、このレースを前走3着以下の馬が勝ったのは初めて。これで【1-0-0-39】だから、データをひとつ覆した。
その要因はやはり展開だろう。未来ある2歳馬、ましてクラシックを展望する好素材の集まりとなれば、できればみんな極端な競馬はしたくない。前走で逃げたのはグリューネグリーンとドゥラエレーデ。この2頭もその前は好位からレースを進めており、徹底先行型ではない。各陣営とも流れに左右されず、どんな流れにも対応できる好位、中団からの競馬が頭にあった。しかし、レースである以上、必ずいずれかが先手をとることになる。消極的に押し出されるなら行ってみよう。覚悟を決めたのがドゥラエレーデと2着トップナイフだった。スローを見越して自ら打って出る。そんな積極的な序盤が好結果をたぐり寄せた。
前半1000m1:01.5。一歩前に出たトップナイフとドゥラエレーデの後ろに大きな集団がつくられ、隊列はあっさり決まった。こうなれば金縛り状態。馬群にいる馬は進むスペースがなく動けず、かといって外にいる馬たちも易々とは動けない。中山は最後に急坂が待っている。スタミナを温存したい。
4コーナーから最後の直線に向いた段階で、2頭とその後ろの差は物理的に厳しく、まんまとやられた形。だが、勝因は展開のあやだけではない。というか、ハイペースを味方に追い込み一気ならそうなるが、自ら主導権を握り、この流れを演出したトップナイフ、ドゥラエレーデは自力で展開をたぐり寄せた。つまり、もう一度この流れを再現する可能性は自分たちの出方次第なのだ。当然、マークされる立場になるので、簡単ではないだろう。しかし、自分がつくった流れであれば、もう一度つくることは無理な話ではない。それを頭に入れておきたい。
展開的に厳しかったファントムシーフ
勝ったドゥラエレーデはマルケッサの初仔にあたる。マルケッサの母はマルペンサで、菊花賞と有馬記念を勝ったサトノダイヤモンドの妹。そこにオルフェーヴルが配合。こちらも有馬記念2勝、冬の中山で躍動した血。少し力のいる馬場に合う。
ドゥラエレーデの父ドゥラメンテも母マルケッサも鹿毛で、自身は黒鹿毛。血統表で黒鹿毛を探すと、キングカメハメハの母マンファスとオルフェーヴルの父ステイゴールドにたどり着く。産駒はドリームジャーニー、オルフェーヴル、ゴールドシップと有馬記念に強く、自身も冬というには微妙だが、12月の香港でGⅠ制覇。ドゥラエレーデの母系は冬が似合うが、父ドゥラメンテは春が合う。来春、皐月賞、日本ダービーを勝った父に続けるか。
2着トップナイフはこのレースと相性がいい萩Sの勝ち馬。京都2歳Sを間に挟んだため、相性のよさが消えかかったが、やはり好相性。横山和生騎手が札幌で未勝利戦を逃げ切り、典弘騎手が好位での立ち回りを試し、それがGⅠでの抑制のきいた逃げに結びついた。こちらは横山親子がつないだバトンがGⅠ好走へ導いた。
3着キングズレインは緩い流れで4コーナー11番手。完全に流れの逆をいった競馬。それでもただ1頭、最後は伸びてきた。力は十分示した。問題は来春に向けてどこで権利ないし、賞金を加算するか。東京など広いコースなら、もう少し流れに乗った競馬もできる。
1番人気ミッキーカプチーノは5着。流れに乗った競馬だったが、直線に向くとイマイチ反応できなかった。今年を含め、2014年以降のホープフルSで前走1勝クラス、かつ中2週は【1-0-0-11】。葉牡丹賞経由で勝ったのはGⅡ時代のレイデオロ1頭。GⅠ昇格後は好走がなく、ローテーション的にキツかった可能性はある。
4着ファントムシーフはスローペースの内枠という難しい状況。途中で動きたくても動けず、直線も進路を探しながらの追い上げで、間に合わなかった。ちょっともったいなかった。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『テイエムオペラオー伝説 世紀末覇王とライバルたち』『競馬 伝説の名勝負 GⅠベストレース』(星海社新書)に寄稿。
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