SPAIA競馬
トップ>ニュース>【有馬記念】タイトルホルダーの逃げ切り濃厚 穴馬は好位の内から粘り込みを図れるウインマイティー

【有馬記念】タイトルホルダーの逃げ切り濃厚 穴馬は好位の内から粘り込みを図れるウインマイティー

2022/12/24 18:20
山崎エリカ
イメージ画像,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

ペースが二極化しやすい有馬記念

有馬記念は、パンサラッサが逃げた昨年のように、大逃げ馬が出現してペースが速くなることもあれば、同型馬不在でキタサンブラックが逃げた2017年のようにペースが遅くなることもある。平均ペースになることは稀で、かなりのハイペースか、かなりのスローペースに二極化することが大半だ。

今年の有馬記念は、最初の段階ではタイトルホルダーが逃げてかなりのハイペースになると見ていた。天皇賞(春)や宝塚記念の印象が強烈だったからだ。しかし、今年の日経賞(中山芝2500m)では、かなりのスローペースで逃げていることから、そう決めつけると危険なのかもしれない。日経賞で大逃げを打たなかったのは、休養明けで状態が上がってこなかったからだ。今回、個人的には状態が悪いと感じていないが、凱旋門賞でぶっ飛ばして大敗した後になるので、その可能性はある。

本馬が大逃げを打ってかなりのハイペースになった場合には能力値上位馬が上位争いすると見ているが、かなりのスローペースだった場合には、差し、追い込み馬が3~4角で外を回るロスが生じるため、2017年のクイーンズリングのような内目、前目で立ち回れるやや能力が足りない馬を残らせてしまうことがある。今年もそれなりにペースが上がると見ているが、内と前を残らせてしまうパターンも警戒したい。

能力値1~5位馬の紹介

有馬記念出走馬のPP指数,インフォグラフィック,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

【能力値1位 タイトルホルダー】
昨年の菊花賞馬。今年はさらに地力を強化し、天皇賞(春)では2着のディープボンドに7馬身差を付けて圧勝した。天皇賞(春)では16番枠から好発を切って、押して内に切れ込みながらハナを主張すると、淡々とした逃げ。レース当日の夜中からの雨で高速馬場とは言えない状況だったが、5F通過60秒5の芝2000mかのようなハイペースの逃げで、1周目の4角では2番手クレッシェンドラヴに6馬身ほど差を広げていた。

本馬はスタンド前から息を入れて、1~2角でさらにペースダウン。2角ではクレッシェンドラヴとの差は1馬身差に詰まっていたが、向正面から再びじわじわペースを引き上げ、捲られるのを防ぐ。3~4角でディープボンドが仕掛けて上がって来たが、まだ手応えに余裕。4角で2番手のテーオーロイヤルが上がって来ると、そこで軽く仕掛けて同馬を振り切り、どんどん差を広げて圧勝した。

本馬について行った先行馬のクレッシェンドラヴ、タガノディアマンテは4角を迎える前に力尽き、そこで2番手に上がったテーオーロイヤルも3番手に上がったディープボンドも、芝3000m超えの重賞で実績のあるステイヤーにもかかわらず、最後の直線ではバテて脚が上がっていた。タイトルホルダーが天皇賞(春)で記録した指数はメンバー中NO.1のものであり、非凡なスタミナの持ち主であると言える。

前走の凱旋門賞では11着と大敗したが、スタミナが不足する休養明けで、ダートのような極悪馬場をブルームにプレッシャーをかけられたこともあり、オーバーペースで逃げては仕方ない結果だったと言える。個人的に凱旋門賞で逃げを選択した時点で、迷いのない無印だったが、スタート後の向正面の上り坂(最初の400mはほぼ平坦で、残り600mは14mほどの上り坂)でほぼ息を入れないタブーを犯したわりには日本馬最先着と、よくがんばったというのが率直な感想だ。

また復帰戦となった今年の日経賞(中山芝2500m)では、ボッケリーニにクビ差2着まで詰め寄られる危うい優勝だったが、本番の天皇賞(春)で反動が出ないように、前半5F63秒5-後半5F59秒0の超絶スローペースで逃げたもの。今年は宝塚記念もかなりのハイペースで逃げて強い勝ち方をしており、中山芝2500mは距離が短いということもない。昨年の有馬記念は菊花賞好走後だったことや、内にパンサラッサがいて逃げられなかったこともあり5着に敗れたが、同型馬が不在の今年なら、13番枠でもハナに行けるはず。有終の美を期待したい。

【能力値2位 イクイノックス】
皐月賞、日本ダービーと春のクラシックでは2着に終わったが、それ以来の一戦となった天皇賞(秋)では自己最高指数で初戴冠した。ただその天皇賞(秋)は、パンサラッサが大逃げを打って前半5F57秒4のかなりのハイペースを作ったことで、ラスト2F12秒4-12秒7と失速。7番枠から五分のスタートを切った本馬は、コントロールしながら中団中目で脚をタメたことにより、ラスト2Fで他馬との脚の違いを作れたと言える。

つまり、中団以降でレースを進めた馬の中では一番強い内容だったが、展開に恵まれたのも確か。今回もタイトルボルダーの大逃げが予想される中で、前走同様に末脚を生かす競馬ができれば十分チャンスがあるが、勝ちを意識して早仕掛けしてしまった場合が怖い。引っ掛かって2角過ぎには好位の外まで上がって行ってしまった皐月賞では最後失速、ジオグリフの目標にされて2着に敗れた前科があるからだ。同じ末脚型のヴェラアズールをマークしたい。

【能力値3位 ディープボンド】
昨年と今年の天皇賞(春)の2着馬であり、昨年の有馬記念でも2着と好走した馬。昨年の有馬記念は5番枠からまずまずのスタートを切って、そこから促して位置を取りに行ったが、外の各馬が内に切れ込んで来たので、好位の中目に押し込まれる形に。向正面でも好位の中目で包まれていたが、3~4角で内目から4角で最内を拾って、2列目で直線。先頭列のタイトルホルダーが伸びないので、窮屈なスペースを通して同馬の外に出し、交わしたところで外からエフフォーリアに差されての2着だった。

本馬は重馬場で緩みなく流れた一昨年の阪神大賞典で、好位からの競馬で2着馬に5馬身差を付け、自己最高指数で優勝しているように、コテコテのステイヤー。テンが速くないし、エンジンの掛かりも遅いので、本質的に芝2500mは距離が短い。昨年は5番枠で前から離されない位置で3~4角の内目を立ち回って、4角で内を突いたことが好走要因だが、今回は大外16番枠だけに、昨年のような乗り方を期待しにくい。また今年も阪神大賞典を優勝し、天皇賞(春)も2着と昨年同様の成績だが、昨年と比べると指数をダウンさせている点も不安な材料ではある。

【能力値4位 ヴェラアズール】
初芝となった6走前の2勝クラス・淡路Sで初めて芝を使われると、1番枠を利して後方の最内をロスなく立ち回り、3着馬に7馬身半差をつけて快勝した馬。そこから上昇一途で、前走のジャパンCでは形式上の勢力図を塗り替えて優勝した。

前走は6番枠からやや出遅れたが、中団馬群の中目まで上がって、道中も中団中目を追走。3~4角では内目に入れていたが、包まれて進路がなく、直線序盤でも進路がないまま右往左往。ラスト2Fで先に伸びていたダノンベルーガの後ろから内に進路を取ると、ラスト1Fでグンと伸び、3/4差突き抜けて優勝した。

かなりのスローペースの上がり勝負となった前走で、ラスト1Fでしっかり伸びてきたのは力があればこそだが、場合によっては進路がないまま敗れていた紙一重の勝利だった。有馬記念はジャパンCの上位馬が苦戦の舞台だが、前走で最後の直線でスムーズさを欠いたことで多少なりとも余力が残せたか。

本馬はダートの中距離路線で、終いが甘くなって結果を出せなかった面があるので、前走のように包まれないことを意識し、早仕掛けをすると危ういが、上手く脚をタメればチャンスがありそうだ。また芝ではまだ底を見せていないので、伸び代があっても不思議ない。

【能力値5位 ジェラルディーナ】
昨年6月の1勝クラス・城ケ崎特別で折り合い欠いて暴走して以来、前に壁を作って折り合いに専念する競馬で、一気にオープン入りを達成した馬。昨年10月の3勝クラス・西宮Sではオープン級の指数を記録して快勝した。ただ常に後方から前を目標に動いて行く他力本願のレースぶりなので、重賞では善戦するものの、なかなか勝ち切れなかった。

しかし、この秋はオールカマーとエリザベス女王杯を連勝。ただこの2戦は馬場や展開に恵まれたのは確か。オールカマーはCコース替わりの中山芝2200m戦で、前日は不良馬場だったが内から回復して、内が圧倒的に有利な馬場状態。実際に道中最内を通った1~3番枠の馬と13番枠から逃げたバビットが4着以内を独占しているが、1列目バビット、2列目ウインキートス、3列目が本馬の並びから、最後の直線でバビットとウインキートスの狭い間を割って抜け出して優勝したのが本馬である。外を回ったテーオーロイヤル、デアリングタクト、ヴェルトライゼンデらと比較をすると、明確に枠の優位性があった。

また前走のエリザベス女王杯は、Aコース使用最終日で朝から雨が降り続き、一気に外差し馬場へと変貌。11番枠より外の枠の馬が掲示板を独占する形となったが、大外18番枠からやや出遅れて、そこから無理をさせず、コントロールして中団の外目から最後の直線でしぶとく伸びて優勝したのが本馬である。このレースで2着同着だったウインマリリンが次走の香港ヴァーズを優勝したことで、相対評価で本馬の株も上がったが、ウインマリリンは好位の外目と、唯一、先行策から掲示板入りを果たした馬。馬場の良い外目を走らせてはいたが、展開は厳しかった。

今回は5番枠。本馬よりも内枠にテンが速い馬がいないことから、ここも距離ロスなく立ち回れる可能性が高いが、前を意識して動いて行った場合に、どこまでスタミナが持つのかという不安はある。長くいい脚が使える馬なので、ある程度は前に出して行っても息は持ちそうだが、後半型の競馬で浮上してきた馬だけに全幅の信頼は置けない。

2017年の有馬記念と似た展開ならば、穴はウインマイティー

ウインマイティーは3歳春の忘れな草賞を勝利し、続くデアリングタクトが優勝したオークスで3着と好走した素質馬。ただ本馬はあまりキレる脚が使えないため、差す競馬では持ち味が生かせないタイプ。3歳秋以降は行きっぷりが悪くなり、スランプ状態となった。

しかし、長期休養明けでブリンカー着用で挑んだ5走前の福島民放杯では、14番枠から思い切って前に出して行く競馬。5走前は開幕週とは思えないほど時計の掛かる馬場&5F通過57秒7の超絶ハイペースだったために9着に大敗したが、その後のレースでは行きっぷりが回復。メトロポリタンスSでは逃げて4着、そしてマーメイドS勝ちに繋がった。

マーメイドSでは7番枠からまずまずのスタートを切ってわりと楽に2列目の内を取ってレースの流れに乗り、ラスト1Fで突き抜けて完勝。2着馬は次走の小倉記念を圧勝したマリアエレーナであることからも、それなりにレベルが高かったことが推測できるだろう。実際にジェラルディーナが優勝したオールカマーと同等の指数を記録している。

前走のエリザベス女王杯は、前記したように外差し馬場。17番枠ではあったものの、五分のスタートを切って2列目の外と先行したことと最後の直線で馬場の良い外に出せなかったことが災いして16着に大敗した。前走が明らかに厳しい競馬になっているだけに、今回で巻き返しがあっても不思議ない。

タイトルホルダーがハイペースの逃げを打ったならば、能力値上位馬が上位争いすると見ているが、2017年の有馬記念のキタサンブラックのようなスローペースの逃げならば、好位の内目をロスなく立ち回れる馬の粘り込み一発があっても不思議ない。その年の2着馬は前走のエリザベス女王杯で7着のクイーンズリングで、4番枠から上手く好位の内々を立ち回ったもの。ウインマイティーも好位の内々を立ち回れる枠の並びだけに、一発を警戒しておきたい。


※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)タイトルホルダーの前々走指数「-29」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.9秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補


ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う!  netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。


《関連記事》
【有馬記念】夢のオールスター集結 有馬は「宝塚記念」と「天皇賞(秋)」の勝ち馬が強い!
【有馬記念】参考レース振り返り 天皇賞(秋)勝ちイクイノックスと好データの菊花賞組
【有馬記念】過去10年勝ち馬すべて前走4着以内! タイトルホルダー、エフフォーリアは覆せるか