【有馬記念】ペースに左右されないLyphard内包馬に注目 有力馬の血統解説

坂上明大

有馬記念の傾向と血統,ⒸSPAIA

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傾向解説

2022年を締めくくるグランプリレース・有馬記念。東京開催の天皇賞(秋)やジャパンCとは異なり、中山芝2500mというトリッキーなコースで行われる本レースは地力だけでなく立ち回りも重要となる一戦です。血統面を中心に、有馬記念のレース傾向を整理していきましょう。

まず抑えておきたいのは、年によってペースに大きな差があるということ。中山芝2500mはコーナーを6つ通過するコースレイアウトのため、出走馬や騎手心理によってペースに幅がある舞台といえます。2019年や2021年のように速い逃げ馬が出てくると前傾ラップの厳しい流れになりますし、2014年のように上がり3F33.4を計時する馬が出るほど緩い流れになることもあります。

そして、そのペースによって有利なポジション、不利なポジションがはっきりしやすいのが有馬記念の特徴です。(独自計測で)大逃げの馬を除いた馬群のペースが、前後半1000mで後傾1.0秒未満(≒ハイペース)とそれ以上(≒スローペース)で分けた場合、好走馬の脚質の傾向に大きな差が生まれています。ペースによってポジションの有利不利が変わることは自然なことですが、他の舞台よりもその傾向が顕著であり、スローペースなら前々で立ち回れる機動力、ハイペースなら長丁場に耐えられるスタミナが重要、というのが有馬記念の予想のスタートになるのではないでしょうか。

ハイペース時の初角位置別成績(過去10年),ⒸSPAIA
スローペース時の初角位置別成績(過去10年),ⒸSPAIA


血統面ではLyphardに注目。ペースによって走る血統も変わってきますが、どの年でも活躍が目立つのが本血統です。Lyphard産駒では凱旋門賞馬ダンシングブレーヴが有名ですが、ディープインパクトの母父AlzaoもLyphardであり、ハーツクライの母母父にも名を残す日本競馬とも関係の深い種牡馬です。Lyphardはその母の父Court Martialに馬体の輪郭が似ており、Lady Juror→Fair Trial→Court Martialと受け継いだスピードと持続力が特徴といえます。

その特徴を強く表現していたのが、Lyphardを4×4でインブリードした2017年勝ち馬キタサンブラックであり、同じくLyphardの4×4を持つ2014年勝ち馬ジェンティルドンナだったのではないでしょうか。50年以上前に生まれた競走馬であるため、キタサンブラックやジェンティルドンナ、リスグラシューのように同血脈を刺激する必要はありますが、現在においても有馬記念で重要な血筋であることは間違いないでしょう。

Lyphard内包馬の成績(過去10年),ⒸSPAIA


ちなみに、直接クロスするほかにDanzigやNureyev、Be My Guestなどと組み合わせるパターンでも同様の効果が見込めます。2016年サトノダイヤモンドや2018年ブラストワンピースがこのパターンです。

血統解説

・イクイノックス
母シャトーブランシュは2015年マーメイドSの勝ち馬で、本馬の半兄には2021年ラジオNIKKEI賞勝ち馬ヴァイスメテオールがいます。本馬は父にキタサンブラックを配し、母父キングヘイローの部分だけが瞬発力を担っているような形。Lyphardの血も5・5×4で継続しており、緩さが目立つ現状は広いコースがベターですが、来年には有馬記念がピッタリになっている可能性も。斤量55キロのアドバンテージがあれば、今年も十分にチャンスがありそうです。

・タイトルホルダー
母メーヴェは札幌芝2600mの丹頂Sを制した中長距離馬で、半姉メロディーレーンも芝2400m以上で4勝を挙げたスタミナ自慢の一族です。HyperionとLady Juror→Fair Trialを代々掛け合わせており、本馬自身の先行してバテないスピードとスタミナはまさに血統通りといえます。昨年はパンサラッサの参戦で展開が向きませんでしたが、マイペースで行ければ持ち味のタフさが存分に活きそうです。

・ジェラルディーナ
母ジェンティルドンナは2014年有馬記念勝ち馬。Lyphardの4×4だけでなく、DanzigからもFair Trialの血脈を受け継いでおり、有馬記念向きの先行力と粘り強さを有していました。モーリス産駒の本馬はDanzigの5×4、Lyphardの5×5・5で継続。適性面に関しては不安がなく、今回は相手関係次第でしょう。

有馬記念の傾向と血統,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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