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【朝日杯FS】まさにセンスの塊! ドルチェモアは来春に向けて視界良好

2022/12/19 10:31
勝木淳
2022年朝日杯FSのレース結果,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

日本競馬の至宝の血が流れるドルチェモア

阪神JFに続き、朝日杯FSも前後半800m45.7-48.2と速い流れ。これを3番手から抜け出して後続の追撃をしのいだドルチェモアは、前走サウジアラビアRCで大逃げグラニットを捕まえた経験を生かした。厳しい流れで真価を発揮するのは母アユサンの影響だろう。

アユサンの桜花賞は9年前の2013年。前後半800m46.9-48.1で最後600m11.9-11.5-12.7。ライバルたちが苦しくなったラスト12.7で鋭く伸びて桜の女王に輝いた。父ディープインパクト×母の父ストームキャットの先駆けだった。その後、アユサンの世代からキズナ、ラキシス、その下からエイシンヒカリ、サトノアラジンと活躍馬が多く出て、そしてリアルスティール、ラヴズオンリーユーのきょうだいがあらわれ、ディープインパクトともっとも相性がいい組み合わせとして周知されるようになった。

それまでスピード一辺倒で単調なイメージだったストームキャットはディープインパクトの瞬発力との相乗効果によって、瞬く間に日本競馬に欠かせない血へと変化を遂げた。スピード色の強い米国血統との相性のよさはディープインパクト産駒を獲得賞金順に出すと、一目瞭然。アユサンはその可能性の扉を開けた牝馬でもあった。

繁殖入り後のアユサンの交配相手は一貫して、ディープインパクトと双璧をなす日本競馬界の至宝キングカメハメハ一族だった。ドルチェモアはディープ、キンカメの血を受け継ぐ近代日本競馬の結晶。この血が朝日杯FSを勝った意義は大きい。来年はさらなる舞台で輝き、そして世界を相手に戦ってほしい。夢は膨らむ。

これは単に夢物語を描いたわけではなく、前後半800mで2秒5も違う前傾ラップを3番手から押し切ったという事実に基づく。好発を決め、前に馬がいない状況では少し前に行きたがる若さをのぞかせたが、オールパルフェ、グラニットが外から来るとあっさり引き、むしろ落ち着いた走りに切り替わった。この冷静さ、2歳にして大人びた立ち回りだった。マイルは競馬の根幹距離であり、まずはここでスピードと立ち回りを身につけ、さらに距離を延ばし、緩急を覚えていく。ドルチェモアは理想的な教育プログラムで結果を出す秀才タイプ。距離延長で必要になる押し引きを磨き、昨年勝ち馬ドウデュースに続けるか見守ろう。

中距離で見直せるダノンタッチダウン

2着ダノンタッチダウンは上がり最速35.2で差してきた。道中は中団馬群の中。最後の直線は進路を外へ求め、斜めに動きながら末脚全開。前走デイリー杯2歳Sに続き、またも勝ち馬とは位置とコースどりの差が着順に結びついた。負けて強しは今回も変わらずだが、勝てなかった事実は大きい。それなりに流れには乗れるが、マイルは距離が短いかもしれない。もう少しゆったりしたペースで末脚比べになれば、さらに良さが出るのではないか。半兄ダノンザキッドも落ち着いて走ればマイルより2000m前後がベスト。クラシックでの巻き返しを期待できる。

3着レイベリングは中2週の1戦1勝馬。前走は東京マイルでラスト11.6-11.1-11.3、34.0のレースを上がり33.1で差し切った。スケール感ある走りをGⅠでもみせた。この馬も速い流れを好位5番手から見せ場たっぷり。フランケル産駒でこのスピードだと距離延長は不安になるので、この点を来春に向けてどこかで確認したい。

4着は単勝2万馬券の16番人気キョウエイブリッサ。最後は3着馬と離されたが、一瞬、3着争いに加われそうな勢いがあった。ハイペースのマイル戦はちょっと厳しいかもしれないが、条件が変われば面白い存在だ。この流れで上位進出はフロックではない。

ハイペースだったことを考えれば、6着オールパルフェも次走見直しが必要だろう。ドルチェモアにスタートダッシュで見劣り、先頭に立つまで脚を使い、かつグラニットに絡まれる厳しい展開。今回はマークされる立場でもあり、辛い形になった。この先も単騎で行ける場面は少なそうなので、控える競馬を試みるだろう。これを形にできるかどうか。これまでの経験上、3歳での脚質転換は容易ではないが、注視したい。

2022年朝日杯FSのレース展開,ⒸSPAIA



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『テイエムオペラオー伝説 世紀末覇王とライバルたち』『競馬 伝説の名勝負 GⅠベストレース』(星海社新書)に寄稿。



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