【カペラS】前半600m32.2秒の衝撃と、難なくクリアしたリメイクの可能性

勝木淳

2022年カペラSのレース結果,ⒸSPAIA

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ハコダテブショウが記録した32.2

西のGⅠがハイペースの激流でインパクトを残したが、ハイペースでいえば東のカペラSもそれを凌ぐ強烈な競馬になった。確かに中山ダート1200mは芝スタートから下り勾配に突っ込むコース形態のため、ほぼハイペースになる。下級条件でも競り合えば33秒台後半が記録され、スピードがないと流れに乗れない。そんな舞台であっても、ハコダテブショウが記録した前半600m32.2は特出した記録だ。

86年以降このコースで前半600m32秒台だったケースは32回。カペラS最速は15年キクノストームが勝った年に7着シゲルカガが記録した32.5。このときは重馬場だった。さらにコース最速となると、19年12月アクアラインS(3勝クラス)で16着ヤマニンレジスタが叩き出した32.3。これも雨のやや重。このとき4着だったのが今回2着のリュウノユキナ。4歳だった。

今回は土曜午後に良に回復した馬場で最速記録を更新。7着ハコダテブショウは不良馬場のながつきS前後半600m33.0-35.4で逃げて1.08.4のコースレコードを樹立。中山ダート1200mの申し子のような存在であり、今回は敗れたが、爪痕はしっかり残した。決着時計も前半も最速記録も保持するハコダテブショウは今後もこのコースでは外せない。

この時計を演出したのはハコダテブショウ1頭ではない。アイビスSD2着のシンシティ、阪神で前半600m33.3と飛ばしたジャスティン、2勝クラス勝利時にこのコースで前半33.2を記録したヤマトコウセイ、前走ジャスティンと競り合ったヒロシゲゴールドなど快速型がそろって参戦したことも大きい。

このコースはたとえハイペースでも前が止まらず、直線が短いため、追い込む側も伸びては来るが捕まえきれないことが多い。だからこそ快速型は自分の形を崩さない。ハイペース誘発でも行けばなんとかなるコースだからだ。しかしレースで逃げるのはたった1頭。行かないと脆い快速型が複数いる場合、共存は難しい。7着ハコダテブショウを含め、11着シンシティ、12着ヤマトコウセイ、14着ヒロシゲゴールドは相手や枠順など状況が変われば、あっさり巻き返す可能性は高く、見限れない。

先行勢で最先着は3着ジャスティン。先行勢でも一歩引いて我慢できた点は大きい。57キロで出走できたことも味方した。マーカンド騎手の巧みなペース配分とリズムの取り方も光った。気難しい性質のジャスティンと癖のあるコースを手の内に入れたあたりはさすがだ。


ハイペースで35.1の決め手を繰り出したリメイク

レースを制したのは中団待機の3歳リメイク。1200m初出走でこの流れのなか、極端に置かれなかったようにスピードセンスを感じる。縦長になり、馬群がばらけたことで、道中の追走は楽、勝負所で外に出す際もいたってスムーズ。完璧な運びだった。このハイペースでも上がり600m35.1。レース上がりを1秒6も上回る決め手は、流れが向いたでは済まされない。1400mなら先行、1200mなら差しと自在に立ち回る形でもっと重賞を勝てる器だ。先日、調教師試験に合格した福永祐一騎手がGⅠでも香港でもなく、あえてここに参戦したのはそれだけ勝負駆けだったということ。素直にそんな読みを出発点に組み立ててよかった。

2着リュウノユキナは相手が悪かった。競馬の立ち回りはほぼ完璧で、内枠から先行争いの直後につけ、猛ペースに巻き込まれず、先行勢が苦しくなるタイミングでうまく外に出し、スパート開始。抜け出すポイントにも狂いはなかった。昨年に続き2着、また前々走クラスターCから連続2着。昨年のカペラSから2、2、2、3、2、2、2着。善戦するも勝てなくなっているのは年齢もあるだろう。とはいえ、崩れない堅実さは相変わらずで、今後も馬券的には頼りになる。

4着オーヴァーネクサスは2度目の1200m出走。さすがに序盤はハイペースに置かれ気味だったが、最後は外に行かず、あえてインを突いて距離ロスを軽減、上手く立ち回った。内にいる先行勢がバテるという読みから馬群は4コーナー出口で外へ広がった。その空いたスペースをあえて狙ったコース取りも手助けした。こちらはやや恵まれた感じだが、得意は1400m戦であり、適距離で見直したい。

2022年カペラSのレース展開,ⒸSPAIA



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『テイエムオペラオー伝説 世紀末覇王とライバルたち』『競馬 伝説の名勝負 GⅠベストレース』(星海社新書)に寄稿。



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