【阪神JF】スピードと早熟性につながる「馬体重」「デインヒルの血」に注目 有力馬の血統解説

坂上明大

阪神JFの傾向と血統,ⒸSPAIA

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傾向解説

2歳女王決定戦・阪神ジュベナイルフィリーズ。地力差の大きい2歳戦だけに素質の見極めが最重要ですが、仕上がりの早さやハイペース適性など、素質が高いだけではクリアできない壁も少なくありません。2歳戦に強い血統を中心に、阪神JFのレース傾向を整理していきましょう。

まず、紹介したいデータは馬体重別成績。馬体重にはさまざまな要素が関係しており、あくまでその結果として出た数字ではありますが、阪神JFのデータとしては「一定以上の馬体重がある馬の方が好走率が高い」という傾向にあります。理由のひとつとして考えられるのは筋肉量につながるということ。ある程度の筋肉量が見込めればスピードや早熟性の面でも期待が持て、2歳GⅠで好走するための素質につながるというわけです。

馬体重別成績(過去10年),ⒸSPAIA


血統面ではオーストラリアで一大父系を築き上げたデインヒルに注目。オーストラリア競馬は2歳戦と短距離戦が充実しており、そのカテゴリーを牽引してきたのがデインヒル父系です。同父系がつたえるスピードと早熟性は日本の2歳戦においても非常に強力で、馬券圏内の好走馬以外にも昨年の5着馬ナムラクレアや一昨年の4、5着馬メイケイエール、ヨカヨカなど早期から活躍できる馬を多く輩出しています。

ただ、日本で種牡馬入りしたハービンジャーは明らかに欧州の芝中長距離馬のため、同血脈はむしろ避けた方がベターでしょう。

デインヒル内包馬(*)の成績(過去10年),ⒸSPAIA


また、サンデーサイレンスを経由しないHalo系の血も活躍が目立ちます。サンデーサイレンスは1990年代以降の日本の血統地図をたった一頭で塗り替えた大種牡馬ですが、JRAでのGⅠ勝ちのおよそ2/3は芝2000m以上でのものという芝中距離指向の強いタイプ。

現2歳馬でサンデーサイレンスの血脈を持たない馬は少ないですが、母方からHaloらしさを強化するような仕掛けがあると本レースでの好走率は高くなるでしょう。代表的な血筋としてはデータで挙げている通り、Glorious Song=Devil's Bag、Machiavellian=Coup de Genie(バゴの母母)、グッバイヘイロー(キングヘイローの母)などです。

Halo直仔の血統別成績(過去10年),ⒸSPAIA


血統解説

・リバティアイランド
母ヤンキーローズはオーストラリアの世代限定戦の短距離GⅠを2勝した名牝。デインヒルの血は持ちませんが、早熟性にはある程度期待できる一頭です。本馬はドゥラメンテ産駒の分、中距離戦がベストではありますが、平均ペースで流れた前走でも無理なく追走できており、馬群さえうまく捌ければチャンスは十分にあるでしょう。

・ラヴェル
母サンブルエミューズは2013年フェアリーS3着馬で、本馬のきょうだいにはナミュール(2022年チューリップ賞)やヴェスターヴァルト(2020年ファルコンS3着)がいます。本馬はキタサンブラックを父に配し、サンデーサイレンスを3×3でインブリード。父の実績からも中距離質が強そうで、距離はもっと延ばした方がベストでしょう。

・ウンブライル
母ラルケットは2008年クイーンC3着馬で、本馬は2018年マイルCS優勝馬ステルヴィオや2021年サウジアラビアRC2着馬ステルナティーアの全妹という良血馬です。姉は体質の弱さや経験の少なさから阪神JFでは7着と敗れましたが、本馬は馬格にも恵まれ、速い流れの経験も十分。姉以上の結果が期待できそうです。

・サンティーテソーロ
母ナガラフラワーは2018年CBC賞2着のスプリンター。その母の父にはデインヒル系ロックオブジブラルタルがおり、母のスピードは本馬にもしっかりと伝わっています。初仔のためフレームが小さく馬体重は軽めですが、筋肉量は十分に備えており、このメンバーに入ってもスピード負けすることはなさそうです。



阪神JFの傾向と血統,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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