【チャンピオンズC】ダート王決定戦の名場面 同期の強敵ホッコータルマエに挑んだナムラビクター

緒方きしん

チャンピオンズC過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA

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ダート王者決定戦が今年もやってきた

外国馬4頭の参戦で話題となったジャパンCは、エイシンフラッシュ産駒のヴェラアズールが勝利。父のエイシンフラッシュに初のGⅠタイトルをプレゼントした。

さて、今週はチャンピオンズCが開催される。「ジャパンカップダート」時代にはクロフネやタイムパラドックス、カネヒキリらが勝利。チャンピオンズCと改称してからもルヴァンスレーヴやゴールドドリーム、クリソベリルといったダートの名馬たちが勝利してきた一戦となる。

王者を決める一戦に、昨年の覇者テーオーケインズやUAEダービー馬クラウンプライド、ダート転向後3戦2勝のジュンライトボルトなど素晴らしいメンバーが集まった。今回はチャンピオンズCの歴史を振り返る。

1番人気は安定

チャンピオンズC過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA


ここ5年間で1番人気馬は2勝。2021年テーオーケインズと2018年ルヴァンスレーヴが人気に応え、2019年ゴールドドリームと2017年テイエムジンソクは2着、2020年クリソベリルは4着。近5年間で馬券圏外は1度のみと、安定感はあると言えるだろう。

3番人気馬も好調で、2021年チュウワウィザードと2020年ゴールドドリームは2着、2019年インティと2018年サンライズソアは3着と、現在4年連続で馬券圏内に入っている。

ただし、完全なる平穏決着ばかりかと言えばそうではなく、2021年3着には14番人気アナザートゥルース、2020年3着には10番人気インティが食い込んでいる。ほかにも2016年3着に10番人気アスカノロマンが入ったほか、2015年には12番人気サンビスタが単勝66.4倍で勝利した。

同世代によるワンツー決着となった2014年

サンビスタのような二桁人気の伏兵とまではいかずとも、ファンをアッと言わせる走りを見せた馬もいる。特に好走が目立つのは、8番人気馬だ。2017年勝ち馬ゴールドドリーム、2018年2着馬ウェスタールンド、そして2014年のナムラビクターもまた、8番人気の評価ながら2着に食い込んだ。

ナムラビクターは、2009年うまれのゼンノロブロイ産駒。デビュー戦は3歳4月と遅く、初戦からのちに東京新聞杯を制するヴァンセンヌとぶつかり、16着と敗北する。しかし次走で芝からダートに転向すると10番人気ながら快勝。ダート4戦3勝という安定感で3歳のダート重賞レパードSに挑戦し、3番人気という評価を得た。

だが、そこで立ちはだかったのが、同期の素質馬ホッコータルマエだった。道中4〜2番手から新潟競馬場の直線で早めの抜け出しをしたホッコータルマエに対し、ナムラビクターは7番手付近から懸命に追い込んだものの、最後はクビ差およばずゴールイン。惜しくも重賞制覇を逃したナムラビクターが重賞馬となったのは、神戸新聞杯での大敗やブラジルCでの勝利など様々な経験を積んだあとの、5歳春のことだった。

一方、ホッコータルマエは4歳2月に重賞2勝目をあげると、そこから5連勝でかしわ記念、帝王賞を勝利。さらにJBCクラシックや東京大賞典、川崎記念など次々と勝ち星を積み上げた。その勝ち鞍の中に2013年アンタレスSもある。つまり、ナムラビクターが重賞初制覇を成し遂げた前年の勝ち馬がホッコータルマエであり、同期が2年連続でこの重賞を制したことになる。

そしてこの2頭が再び激突したのが、2014年チャンピオンズC。一つ下の世代にはコパノリッキーやインカンテーション、ベストウォーリアといった素質馬たちがいて、一つ上の世代にはローマンレジェンドやグレープブランデーといった実績馬がいるメンバー構成だった。

そうした強豪たちに挟まれながらも、ホッコータルマエは2番手からの競馬で早めに抜け出す。伸びてきたのは、レパードSの時と同じくナムラビクター。今度は半馬身、ホッコータルマエに届かなかった。それでも、同期によるワンツーという結果を残した2頭。レパードSの時よりも、ホッコータルマエは12キロ、ナムラビクターは18キロ増えた馬体重に、両者の成長が現れていた。

ダート実績馬の兄とは違う道で……

そんな逞しい成長を遂げたナムラビクターに、悲劇が起こるとは思いもよらなかった。7歳になり活躍の場を求めて地方競馬に移籍したナムラビクターは、門別や盛岡、浦和などのレースに挑戦し続けた。しかし船橋・総の国オープンでレース中に転倒。7歳にして、この世を去ることとなってしまったのである。

そして、ナムラビクターがこの世を去ってから約3ヶ月後に誕生した半弟がいる。ナムラカミカゼと名付けられたその馬は、芝でデビューした兄とは反対に、ダートでデビュー。それから8戦連続でダートを使われるなど、ダート主体で経験を積んだ。転機となったのは、芝への転向。昨年10月に2勝目をあげると、今年の2月には3勝目をあげた。芝→ダートで開花した半兄とは違った道で、才能を見せ始めている。

そんなナムラカミカゼが今週末のステイヤーズSに登録している。ナムラビクターが惜しくも2着に敗れたチャンピオンズCと同週に重賞初挑戦とは、数奇な運命を感じさせる。ダートからの転向といえば、先週のジャパンCをヴェラアズールが制したばかり。これに続けるだろうか。

ダートの王者決定戦、チャンピオンズC。砂の猛者たちの走りにも注目だが、その熱狂の前日に、ステイヤーズSもぜひ楽しんでいただければと思う。


ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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