【ジャパンC】枠に不安も日本の総大将はシャフリヤール 馬場に対応すればフランス馬オネストは一発の力あり

山崎エリカ

2022年ジャパンC出走馬のPP指数,ⒸSPAIA

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意外と内差しが決まる

秋の東京開催最終日に行われるジャパンCは、「そろそろ外差しが決まるのではないか?」と思われながらも、意外と内~中目の差しが決まることが多い。実際に過去5年で1枠の馬が3勝2着2回と好走している。2週前からCコースに替わることで、内がそこまで悪くないというのもあるが、近年のジャパンCはスローペースの後半勝負。3~4角で外を回ってロスを作ると不利なことも影響しているよだ。

今年もユニコーンライオンの逃げが予想され、スローペースが濃厚の組み合わせ。今週末は晴れ予報でもあるだけに、外よりも内有利の想定で予想を組み立てたい。

能力値1~5位の紹介

2022年ジャパンC出走馬のPP指数一覧,インフォグラフィック,ⒸSPAIA


【能力値1位 シャフリヤール】
昨年のダービー馬であり、秋のジャパンCでも3着と好走した素質馬。昨秋のジャパンCは4番枠から好発を切ると、外の馬を行かせて2列目の最内を追走。1角で進路が狭くなりバランスを崩して内ラチに激突、そこで3列目と位置が下がり、向正面では3列目の中目を追走。3角手前でキセキが先頭に立ち一気に差を広げたがここでは動かず、4角で動き2列目のオーソリティの直後に付けた。ここで外からコントレイルに蓋をされ、直線ではオーソリティとの間に挟まれ怯む場面もあったが3着に粘った。このレースはコントレイルが自己最高指数で優勝。ただ同馬とは0.5秒差なら上々で、スムーズな競馬が出来ていればもっと差を詰められていたと見ている。

本馬は今春のドバイシーマクラシックを優勝。ゲート8番から好発を切ってそこからコントロールしながらのポジション争い。序盤はオーソリティとのハナ争いとなったが、最終的に2列目の最内に収まった。最後の直線でひとつ外に出されると、ラスト200mでしぶとく抵抗するオーソリティを競り落とし、ラスト100mで抜け出して完勝。自己最高指数を記録する強い内容だった。

このレースはそれまで逃げる競馬を経験していなかったオーソリティが逃げて2着に善戦したように、ややスローペースではあった。しかし、時計の掛かる芝だったことを考えれば、前から押し切るのはけっして楽ではなかった。

本馬は同レースで2列目からの競馬で結果を出したことで、以前よりも勝ちにいく競馬をすることが多くなった。前々走のプリンスオブウェールズSも2番手からの競馬、前走の天皇賞(秋)も8番枠からひとつ外のジャックドールが内に切れ込んできたため、3列目からの競馬となったが、2列目を狙おうとはしていた。

これにより最初の2角ではジャックドール直後の外を回ることになり、3~4角でも中団の外々からの競馬。4角ではジャックドールを見ながら離れた4列目となった。最後の直線では伸びあぐねて5着に敗れたが、序盤で先行争いに加わらずに中団の内目を上手く立ち回れていれば、また違う結果になったと見ている。

もちろん、前走は休養明けの影響もあっただろう。今回はイン差し傾向の強いジャパンCで15番枠。この枠だとまた好位の外々からの競馬となる可能性もあるが、ひと叩きされて前進が見込めることや、前走時よりも相手が楽になったことを考えると有力だろう。

【能力値2位 ダノンベルーガ】
デビュー2戦目で共同通信杯を優勝し、続く皐月賞、日本ダービーでも4着と好走した素質馬。皐月賞では1番枠からまずまずのスタートを切って好位のやや後ろ、道中も前の馬との距離を保って追走。3角で前の馬との距離を詰め、4角で3列目から狭い最内を突き2列目まで押し上げて直線に入った。

直線序盤ではひとつ外に出し先頭のアスクビクターモアに内から並びかけ、同馬を競り落としたが外から差されて4着。皐月賞当日は馬場の内が悪化していたことから(逃げたアスクビクターモアが5着を死守しているように、致命的ではなかった)、不利な競馬を強いられたと見られ、日本ダービーではまさかの1番人気に支持されたが4着に敗れた。

日本ダービーはデシエルトが逃げて緩みない流れだったことを考えると、中団馬群の中目という位置は悪くなかった。しかし、本馬マークで乗ったドウデュースや出遅れて後方3番手からの競馬となったイクイノックスに差される形となった。展開は上位2頭に向いたがそれらに2馬身離され、2列目でレースを進めたアスクビクターモアを交わせなかった点は、やや疑問の残る内容だった。

しかし、やはり素質馬。休養明けとなった前走の天皇賞(秋)では成長を見せ3着に好走。ラスト1Fで逃げたパンサラッサとは勝ったイクイノックスは10馬身、本馬は8~9馬身差はあったが、そこから一気に差を詰めてパンサラッサとクビ差の3着。こういう派手なレースをすると、差した2頭が強いと思われがちだが、前から大きく離れた中団中目で脚をタメたことでイクイノックスに次ぐ、上がり3Fタイムを引き出せたことが大きい。

今回はユニコーンライオンが逃げる公算が高い。そうなるとペースが上がらない可能性が高く、勝つことを意識した場合はある程度は動いて位置を取りに行く必要がある。そういったことを想定すると、前走のような決め手を使えない可能性はある。しかし、シャフリヤールのひとつ内で同馬をマークしながら動けるのは好ましく、ここも末脚を生かす競馬なら崩れない公算が高い。

【能力値2位 ヴェラアズール】
デビューからずっとダートの中長距離を使われていだが、5走前の2勝クラス・淡路特別で初めて芝を使われると3着馬に7馬身半差をつけて快勝した馬。以降は芝路線に転向し、慣れながら着実な上昇を見せている。

前走の京都大賞典は稍重とはいえ、秋の阪神開幕週でそこまで馬場が悪くなく、前半5F60秒7-後半5F58秒2とかなりのスローペース。10番枠から出遅れ後方からの競馬となったが、向正面ではコントロールしながら中団やや後方まで挽回。3~4角では馬群が凝縮したが、後方中目で我慢して直線で外に誘導されるとジリジリと伸び、ラスト1Fで突き抜けて2馬身差の完勝だった。

本馬は芝路線に転向してから5戦連続メンバー最速の上がり3Fタイムを記録。前走でも鮮やかな末脚を見せており、現段階では芝で底を見せていない。ただし、今回は休養明けで自己最高指数を記録した後の一戦、多少疲れが懸念される。ここは快進撃もいったん小休止ということになるかもしれない。

【能力値4位 カラテ】
折り合い難で芝の中距離路線で低迷していた時期が長かったものの、芝マイル戦を使われるようになると折り合いもつくようになり本格化。昨年1月の3勝クラス若潮Sでオープン級の指数を記録し、その次走で東京新聞杯も優勝して重賞ウイナーとなった。

今年に入ってから再び距離を延ばし、中山記念を使われるとそこではパンサラッサの2着。前々走の新潟記念はトップハンデ57.5Kgながら好位直後辺りの中目で流れに乗り、ラスト300m付近ですっと抜け出して先頭に立つと、そのまま押し切って優勝した。本馬は中距離でも気性面の不安を見せなくなくなったことが上昇に繋がったと言える。

前走の天皇賞(秋)も2番枠からコントロールしながら好位を狙った。しかし、外の馬が内に切れ込んできたことや、前のマリアエレーナが不利を受けて下がったことで、中団の最内から追走する形となった。最後の直線ではジリジリ伸びて6着と悪い内容ではなかった。ただ本馬は今年の1月からレースを順調に使われ続けており、ここで大きな上昇は期待しにくい。今回のメンバーが相手となると、強調材料がない点がネックとなる。

【能力値5位 グランドグローリー】
昨年の同レース5着馬。前回は6番枠からずまずのスタートを切ったが、そこから控えて中団内を追走。道中はコントレイルを意識できる位置で前にスペースを作って追走し、3~4角で同馬が外に行くと本馬も外に出してその直後からしっかりマークし直線へ。序盤で進路がなく進路取りに迷い、ここでやや置かれて離された。そこから追い出されるとジリジリ伸び、ラスト1Fではもうひと伸びして5着を拾った。

昨年の走りから力を出し切ればここでもチャンスはある。前回はペースが上がらず後半勝負となったが、今回はペースが上がるか、馬場が悪化すればよりチャンスは広がる。ただ問題は昨年と違い、前走の凱旋門賞で5着とかなり力を出し切ったところから日本にやって来たこと。

昨年は前走オペラ賞2着と余力を残した状態での来日だったが、今年は余力が残っているかどうか微妙。またタフな馬場だった凱旋門賞で後方待機から5着した後では、日本の高速馬場に対応することもやや難しくなる。今年はやや微妙に感じる面が多い。

穴馬はもともと強い凱旋門賞大敗のオネスト

オネストは仏国からやってきた3歳馬。国外遠征となった前々走の愛チャンピオンSでは2着と好走し、国際級の能力の持ち主であることを証明した。

前々走は重馬場で前半5F70秒47-後半5F61秒26とペースが上がらない中、4番枠から出遅れて最後方からの競馬となった。そこから一列上げて後方2列目の内目を追走。道中は前にスペースを作って追走していたが、3~4角で3列目辺りまで上がって直線へ。序盤で先頭列に並びかけ、早めに抜け出したところで外から上がってきたルクセンブルグとのマッチレースに。最後にルクセンブルグに半馬身ほど前に出られての2着だったが、仏ダービー馬ヴァデニに1馬身1/4差つけたことは十分に褒められる内容だった。

前走の凱旋門賞では愛チャンピオンSで2着好走の疲れもあったようで10着と大敗。今回はそこからの臨戦となる。ジャパンCで好走する海外馬の共通項は、前走で力を出し切らず、余力を残して来日しているかどうか。これが最大のポイントで、凱旋門賞勝ち馬は何度も馬群に沈んできた。

一方で好走しているのはファルブラヴ、ポリシーメイカーなどの凱旋門賞大敗組。日本馬でも前走凱旋門賞大敗のジャスタウェイ、ヴィクトワールピサが巻き返し好走している。このようにもともと能力が高く、前走の凱旋門賞で力を出し切れなかった馬は巻き返しが期待できる。

オネストの能力は申し分なく、ここに向けてのステップも良さそうだ。本馬は近走出遅れが続いているようにゲートが甘い点が不安。仏国や愛国でも出遅れテンに置かれるとなると、日本の高速馬場で今回のメンバーだと、スローペースでも好位を取れない可能性が高い。ただし、対欧州馬なら抜群の決め手を見せている。日本の馬場にどこまで対応できるかにはなるが、今回は内枠と枠にも恵まれただけに、一発あっても驚かない。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)シャフリヤールの前走指数「-20」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.0秒速い
●指数欄の下線、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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