【東京スポーツ杯2歳S】ガストリックとダノンザタイガーは底力勝負に強い本格派! 3着以内を似た血統を持つ馬が独占
勝木淳

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日本ダービーを占う2歳重賞
過去5年の勝ち馬のうち日本ダービー出走は4頭。その着順1、5、1、2着。クラシック登竜門どころか翌年の日本ダービーを占う上で見逃せないレースとなった。これほど価値が上昇したので当然、出走させる側も自厩舎のエース格を向かわせる。となると戦歴の傾向が似るのも必然、ガストリックの勝利によって、19年コントレイルから4年連続で勝ち馬は前走芝1800mの新馬勝ち。最少キャリアで重賞を突破する素質はさることながら、キャリアが浅いうちは極力、距離変化を経験させず、最少手でクラシック出走を当確させる。そのために同レースから逆算して芝1800mの新馬を使ったのではと思いたくなるほどの、見事な厩舎力に敬意を表したい。
また結果以上に内容も問いたいレース。イクイノックスの昨年は決着時計1.46.2で、後半1000mすべて11秒台のハイレベル戦。上がり32.9で差し切ったイクイノックスはこの秋、天皇賞(秋)で輝きを放った。その前年ダノンザキッドは1.47.5、後半600m34.3を3番手から抜け出した。全体時計、上がり時計にややもの足りなさが残ったが、これはおそらくダノンザキッドが中距離よりマイラー適性に寄っていたからだろう。さらにその前のコントレイルは1.44.5の2歳レコードを記録。前半1000m58.8、後半600m33.9でコントレイルは33.1の末脚を記録し、2着アルジャンナに5馬身差をつけた。
共通項はハーツクライ系×米国系
今年はコントレイルに次ぐ決着時計1.45.8。前半1000m58.9、後半600m34.9なので、後半時計を要した分がコントレイルの決着時計との差になる。さすがにコントレイルと比べるのは酷だが、キャリア2戦で東京芝1800mを1分45秒台で勝ちきったガストリックは世代最上位に位置づけるべきだろう。戦前の予想を裏切る1000m通過58.9のスローとはいえない流れが押し上げた記録ではあるが、追走するうちにスタミナを使いきる馬も多かったサバイバル戦で、最後まで末脚を使ったガストリックや2着ダノンザタイガーの持久力は底力勝負になるGⅠでは必要な要素であり、将来に向けて明るい材料だ。
ガストリックの母エーシンエポナは米国産のカーリン産駒。ミスプロにストームバードという血統らしく、全3勝中2勝はダート中距離であり、単純なスピード比べや瞬発力では見劣るが、持久力勝負に強かった。ガストリックのレースは母の適性に父ジャスタウェイの芝適性が融合したような内容。軽いレースで取りこぼすかもしれないが、評価を落としたくない。またスタートも速くなく、まだ成長する余地を感じる。キャリア1戦で最後、馬群に入り、抜け出せるハートの強さもまた評価ポイント。操縦性の高さも感じさせた。
操縦性なら2着ダノンザタイガーも負けていない。こちらはジャスタウェイの父であるハーツクライ産駒。陣営のジャッジは本格化手前、3歳になってからというものだったが、ここで賞金加算は来年に向けて大きく、成長を促す余裕ができた。スタートを決め、すんなりフェイトの後ろにつけ、前半のタイトな流れをやり過ごせた。現状の力を存分に引き出すことを優先し、思い切って外を回して末脚全開。クラシックに向けて順調にステップを踏んだ印象が強い。母シーズアタイガーは米国産ストームバード系とミスプロ系の組み合わせで、ガストリックと血統構成が近く、こちらもスローの瞬発力勝負より持久力を問う流れで持ち味をいかせるだろう。
3着ハーツコンチェルトは出遅れて後方2番手を追走、上がり最速33.8で追い込んだ。デビュー戦は勝負所で上手く動けたが、東京競馬場の平均ペースでは早めに動くわけにもいかず、出遅れを挽回する機会は最後の直線しか残されていなかった。3着はその分の差。こちらも父ハーツクライ×母米国産ナスノシベリウス。1、2着馬とは血統の共通点も多く、成長力で引けはとらない。ただ、その成長力を引き出すためにも賞金加算はしておきたかった。
3番人気フェイトは5着。やや見せ場のないレース内容だったが、陣営のジャッジはスケールを感じるも成長途上。今回は前半1000m58.9とスタミナを問う流れになり、道中は余裕がなく、完成度で見劣った印象。成長途上と割り切り、今後の陣営の手腕に期待したい。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『テイエムオペラオー伝説 世紀末覇王とライバルたち』(星海社新書)に寄稿。
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