【天皇賞(秋)】イクイノックスら3歳馬を古馬が迎え撃つ 天覧競馬で生まれたヘヴンリーロマンスと松永騎手の名シーン
緒方きしん
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3歳勢vs古馬勢の行方は?
菊花賞はアスクビクターモアがレコード勝利。次走も楽しみになる横綱相撲だった。これでディープインパクト産駒は、サトノダイヤモンド、フィエールマン、ワールドプレミア、コントレイルに続き、菊花賞5勝目。さらにはサンデーサイレンスのクラシック制覇記録を更新した。
さて、今週は天皇賞(秋)が行われる。過去には、タマモクロスやスーパークリーク、エアグルーヴやスペシャルウィークが制した一戦だ。2000mという距離設定から、例年、層の厚いメンバーが顔を揃える。昨年もエフフォーリア、コントレイル、グランアレグリアの直接対決が話題を呼んだ。
今年は、ダービー馬シャフリヤールが海外挑戦から帰国し、昨年のジャパンC以来となる日本のレースに参戦。さらには札幌記念を盛り上げた逃げ馬2頭のジャックドール、パンサラッサが再び激突する。3歳世代からは、皐月賞馬ジオグリフ、ダービーと皐月賞2着のイクイノックス、同じくダービーと皐月賞4着のダノンベルーガらが参戦。世代ごとの実力派が火花を散らす戦いとなりそうだ。
今回は、そんな天皇賞(秋)の歴史を振り返る。
近年の勝ち馬には人気馬が並ぶ
ここ5年で1番人気馬は3勝。昨年の1番人気コントレイルは2着、2018年の1番人気スワーヴリチャードは10着に敗れた。1番人気が敗れた年も、それぞれ3番人気エフフォーリア、2番人気レイデオロが制しており、人気馬の勝利が続いている。
2011年には7番人気トーセンジョーダンが勝利。さらに翌年からはエイシンフラッシュ、ジャスタウェイ、スピルバーグと3年連続で5番人気が勝利するなど、4番人気以上の敗北が続いた。敗れた馬たちにはジェンティルドンナやフェノーメノ、ルーラーシップ、ブエナビスタなどが並んでいるだけに、興味深い結果だったと言える。
昨年が3番人気→1番人気→2番人気と人気サイドでの決着だったように、近年、二桁人気馬の好走はなかなか見られない。3着だと2017年レインボーライン(13番人気)、2着だと2015年ステファノス(10番人気)がラストとなっている。ただ、昨年の4着は10番人気サンレイポケットであり、二桁人気馬の逆襲の日は近いかもしれない。
天覧競馬で見せた、ヘヴンリーロマンスと松永騎手の美しいワンシーン
近年は苦戦中とも言える二桁人気馬だが、2005年には逆境を跳ね返し勝利した牝馬がいる。それが、14番人気・単勝75.8倍のヘヴンリーロマンスだった。8月14日にクイーンSを10番人気で2着、8月21日に札幌記念を9番人気で勝利した牝馬が、伏兵評価を覆す走りを見せた。
この年の天皇賞(秋)は、引退後も活躍している馬が多い。2着ゼンノロブロイは種牡馬としてオークス馬サンテミリオンを始め、ペルーサやトレイルブレイザー、タンタアレグリアやメートルダールを送り出した。同じく6着ハーツクライは、種牡馬としてジャスタウェイやワンアンドオンリー、シュヴァルグランを輩出。牝馬でもリスグラシューを出した。さらに7着ハットトリックは海外に輸出され、世界的な種牡馬として名を馳せることになる。
13着スズカマンボはメイショウマンボやサンビスタ、メイショウダッサイやユーロビートを輩出。14着テレグノシスもマイネイサベルを出した。17着アドマイヤグルーヴは二冠馬ドゥラメンテの母だ。
そういった相手に8番手からレースを進めたヘヴンリーロマンス。直線では上り2位タイの末脚を繰り出し、ゼンノロブロイ、ダンスインザムードとの接戦を制した。この日は天覧競馬で、ゴール後には鞍上の松永幹夫騎手がヘルメットを外して馬上から敬礼。競馬史に残る名シーンとして、人々の記憶に刻まれている。
引退後の活躍はヘヴンリーロマンスも例外ではない。JBCクラシックを制したアウォーディー、UAEダービー勝ち馬のラニ、名古屋グランプリ連覇のアムールブリエらを輩出。日本競馬界に大きく貢献した。
3歳馬の連覇なるか
今年の天皇賞(秋)で人気を集めそうなのは、キタサンブラック産駒のイクイノックス。父キタサンブラックは現役時代は5歳で天皇賞(秋)に挑戦すると、サトノクラウン、リアルスティールといった同期の強豪馬を撃破し勝利した。
実力派の同期と参戦という意味では、今年のイクイノックスも重なる部分がある。しかし一方で、まだまだ若さを残す3歳という点は気になるところ。
昨年は3歳馬エフフォーリアが勝利したものの、その前の3歳馬による勝利は、2002年のシンボリクリスエスまで遡る。間にエピファネイアを挟みつつ、血の繋がる祖父と孫による3歳での天皇賞(秋)制覇はまさに偉業だ。
実力、素質ともに申し分ないイクイノックスだが、果たして父キタサンブラックより2年早い偉業達成となるだろうか。ぜひ、ご注目いただきたい。
ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。
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