【菊花賞】本格化したステイヤー・セレシオン　豊富なスタミナで激走に期待

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今年の菊花賞も阪神芝3000mが舞台

今年の菊花賞も昨年同様に阪神芝3000mで行われる。京都芝3000mは上り坂スタートで前半ペースが上がりにくく、最後の直線も平坦。このため逃げ、先行馬が2週目の3角の下り坂(ラスト4F地点)からスパートしても押し切れることが多い。

阪神芝3000mも仕掛けのポイントが京都芝3000mと同じ2週目の3角の下り坂になることが多いが、平坦スタートで京都芝3000mよりも前半ペースが上がりやすいことやラスト1F付近に急坂があるために逃げ、先行馬が最後に失速してしまうことが多い。また、京都芝3000mは向正面が上り坂でマクリ馬が出現しにくいのに対して、阪神芝3000mは向正面が平坦なので、度々マクリ馬が出現し、仕掛けのポイントが速くなって前が崩れることもある。

ただし、阪神芝3000mでも前半ペースが速くなく、マクリ馬を出現させるほど遅くもないペースで行ければ、逃げ、先行馬が押し切ることも十分に可能。実際に阪神芝3000mの阪神大賞典の過去10年では逃げ馬の連対こそないが、3着は2回。3角5番手以内の馬が5勝もしている。

一方、追い込みは2着が1回。しかし、その追い込みはキセキがド派手に出遅れ、向正面で一気にマクって先頭に並びかけたことで、前2頭がそれに抵抗して一気にペースアップしたもの。ラスト8F目から前がスパートしてラスト7F目が最速という、異常な早仕掛けのレースとなり、逃げ、先行馬が総壊滅した。

今回は、前走の神戸新聞杯で中団馬群に入れてみたら、行きたがって暴走したビーアストニッシドがハナに行く公算大。岩田康誠騎手は皐月賞のデシエルトのように折り合いを欠かなければ、スローペースに落として逃げる騎手であり、2番手も競り合いを好まない田辺騎手のアスクビクターモア。2週目の向正面でマクってくる馬が出現する可能性も多いにあるが、3角である程度前の位置にいないと厳しいと見る。

能力値1～5位の紹介

【能力値1位 アスクビクターモア】
昨年6月東京のジオグリフが勝利したハイレベル新馬戦の3着馬。当時のレースは勝ちに行っての3着でレース内容はかなり濃いものだった。そこからは使われるごとに強くなり、弥生賞では後のダービー馬ドウデュースを撃破。日本ダービーではデシエルトが折り合いを欠いて大逃げを打ち、先行馬には苦しい流れになったが、同馬から2～3馬身と離されずの2番手を追走して3着。レース内容としては本馬がダービーでは一番強かった。

前走のセントライト記念は3列目の外からコントロールしながらの追走だったが、3～4角でペースが上がっていく中で、4角で2頭分外から楽な手応えで進出。その外からガイアフォースが仕掛けて、先頭に立つかの勢いで上がって来たことで、同馬とのマッチレースになった。本馬は最後までしぶとく抵抗していたが、ガイアフォースに前に出られてアタマ差の2着。

前走は菊花賞ヘ向けての始動戦だったことを考えれば上々の2着。これまでのレースぶりからは、十分なスタミナがあり、菊花賞馬になって当然の実力がある。ただ前走でガイアフォースとの叩き合いで闘志に火がついたようで、想定以上の指数で走ってしまった点に、今回における上昇度という意味で少し不安を感じる。

【能力値2位 ガイアフォース】
昨年9月の小倉新馬戦では、ラスト2Fを11秒4-11秒1で走り、3着馬を3馬身引き離した馬。当時上位2頭のドウデュース、ガイアフォースには『2歳馬ジャッジ（毎週月曜日公開）』では高い評価を与えたが、その期待どおりにそれ以降は着実に成長。特に驚かされたのは前々走の国東特別(1勝クラス)で1分56秒8のレコードタイムで圧勝したこと。

前々走はCBC賞当日でコンクリート馬場。本馬は2番枠から好発を切って一旦先頭に立ったものの、外からハナを主張してくるテーオーシリウスに行かせて2番手を追走。3～4角で同馬の外から楽に並びかけて4角先頭。そこからすっと伸び、ラスト1Fで突き抜けての7馬身差の圧勝。記録した指数は古馬オープン級だった。

その指数から考えれば、格上挑戦の身ながら前走のセントライト記念を優勝したことも驚くことではない。アスクビクターモアの直後でレースを進めて、4角出口で同馬に並びかけて直線。マッチレースに持ち込んでのアタマ差の勝利だったが、3着馬には3馬身差をつけていた。

本馬は今回の菊花賞で、当然勝ち負けになる能力を持っているが、問題があるとするならば、賞金面が足りない状態だったためにセントライト記念で頑張ってしまったこと。キャリアは浅く、まだ基礎能力の上昇が見込める状況ではあるが、好走による消耗具合はやや気になるポイントだ。

【能力値3位 フェーングロッテン】
昨年11月の未勝利戦を好指数勝ちした馬。その時点でなかなかの能力を感じさせていたが、好指数勝ちした疲れが残ってしまったようでその後はスランプ状態になった。しかし、立て直されて上昇気流に乗ると白百合Ｓ、ラジオNIKKEI賞を連勝し、古馬と初対決となった前走の新潟記念でも堂々の3着。

前走は8番枠からまずまずのスタートだったが、そこから促されて流れに乗って先行策から最終的に2列目の外。道中のペースが落ち着いて3角手前では隊列が凝縮して団子状態となったが、そこでも2列目外を維持。3～4角でもペースが上がらない中でやや外を回しながらじわっと仕掛けられたが、ここではややキレ負け。ラスト2Fで抵抗して差された馬を差し返し、最後までしぶとく粘ったが、馬場の良い大外からユーキャンスマイルに3/4差交わされての3着だった。 本馬は今回のメンバーが相手でも能力は劣らない。ここまで好走時はブリンカーを着用しての先行が多く、長距離の実績は豊富ではないが、潜在的なスタミナは高そうだ。前走の新潟記念での頑張りがダメージとならず、さらなる上昇を見せるようならば、チャンスは十分にある。

【能力値3位 ジャスティンパレス】
デビューから2連勝し、3戦目のホープフルＳでは2着となった実績馬。春2戦の皐月賞、ダービーは不完全燃焼の競馬で能力を出し切れない結果となってしまった。よってエネルギーは目いっぱいに溜まっていた。

そして迎えた前走の神戸新聞杯では、7番枠からまずまずのスタートだったが、そこからやや促して先行争いに加わり、上手く好位の内に入れ、道中は3列目の内で我慢。折り合いを意識した進め方で3～4角で前にスペースを作り、4角2列目の狭い最内を拾って一気に仕掛けて2番手で直線。序盤で堂々の先頭に立つと、ラスト1Fでは楽に突き抜けて3馬身半差で完勝した。鬱憤を晴らすような圧勝劇。最短距離を立ち回ってはいたが、溜まっていたエネルギーが全開放されたような強い走りだった。

休養明けであれだけ走った直後の今回はさすがに疲れも残るだろう。よほど秘めた能力が高くない限りは、前走比でパフォーマンスを落とす可能性が高いと見る。

【能力値5位 ボルドグフーシュ】
デビュー2戦目の未勝利戦で2着に2馬身半差をつけて勝利し、素質の片鱗を見せていた馬。今年1月の強敵が揃った1勝クラスで差のない3着でまずまず良い指数を記録すると、そこからは勢いが付き、ゆきやなぎ賞勝ち、京都新聞杯3着、そして古馬との対決となった一宮特別(2勝クラス】ではなかなかの好指数勝ち。あと少しの上昇があれば、オープンで十分に通用する指数を記録した。

前走の神戸新聞杯は2番枠からまずまずのスタートだったが、そこからはコントロールされてはいたが、下がって後方からの競馬。レースがややスローペースで流れたなか、後方3番手付近で動かず、外に誘導して3角へ入る。3～4角でペースが上がるなかで後方外から4角大外をぶん回したが、結局、位置は上げられず、後方2列目で直線。酷い競馬だったが、外からよく伸びて3着と好発進だった。

本馬は長く良い脚を使えるので、菊花賞の距離には適性がありそうだ。問題があるとするならば、前の位置が取れないことだろう。また、前走は悪いスタートではなかったが、本馬は出遅れ癖もあり、展開に左右される面が大きい。ペースが上がらないと苦しいと見る。

【能力値5位 ドゥラドーレス】
新馬戦では出遅れから直線ではスムーズさを欠きながら勝利し、素質の高さを見せると、次戦のセントポーリア賞では古馬2勝クラスに通用するレベルの高指数を記録して勝利した。セントポーリア賞は逃げ馬がレースを引っ張ってややハイペースになったことで助けられた面もあるが、ラスト2Fからグングン伸びて、ラスト1Fで3馬身突き抜けての快勝と、強い内容ではあった。

次走の毎日杯では多少疲れが出ていた面もあったが、3～4角で前の馬とのスペースを詰め過ぎたために、4角からブレーキ、ブレーキで進路がなく、位置が後方まで下がって直線を迎えた。そこから外に出してセイウンハーデスの直後に進路を取ったが、この馬がまた手応えがなく進路がない状態。そこから外に出して一気に伸びて3着は死守したが、進路取りがスムーズなら2着はあったレース内容だった。

一方、前々走の香港ジョッキーＴは行った、行ったが決まる流れを折り合いに専念し過ぎて仕掛けが遅れる競馬で3着に敗れている。本馬の前走の藻岩山特別(2勝クラス)では、1クラス上の指数を記録して快勝したが、もともとの素質の高さを考えれば当然と言える。

前走でも1番枠からやや出遅れて、そこからは無理をせず、中団中目に誘導したものの、最終的には包まれて中団の内。3角で中目に出して4角で外を狙ったが、進路がない状態だったために、諦めて内に切って、先頭列を一気に割って、ラスト1Fで突き抜けて快勝した。

競馬で包まれてしまうのは仕方がないが、ブレーキをかけると馬の勢いを止めることになり、馬群を割れなくなってしまう。前走は包まれる場面もあったが、ブレーキをかけず、勢いに乗せて馬群を割ったために勝つことができた。本馬の鮮やかな瞬発力は母のロカ譲りのものだろう。ここまでデビューからの5戦全てで上がり3F最速タイムを記録しており、能力の天井はもっと上のものを感じさせる。ただこれだけの瞬発力の持ち主だけに、距離が延びるレースに一発で対応できるかどうかの不安はある。

穴馬は本格化したステイヤーのセレシオン

新馬戦では出遅れて少頭数の中団からの競馬。そこから上がっていくのに鞍上がかなり気合いをつけていたように、ズブさを感じさせる走りだった。それでも加速がつくと、最後までバテずに3馬身半差の圧勝で新馬戦としては好指数を記録した。豊富なスタミナを感じさせる勝利だった。

2戦目の芝2200m梅花賞でも出遅れたが、5頭立てだったので好位の外で流れには乗れ、最後の直線ではジワジワ伸びて差しきり勝ちを決めた。いかにもスタミナタイプと感じさせるデビュー2戦の走りだったが、本馬はその後もスタートがあまり改善されなかった。そのためレースの流れにも乗り切れず、高速馬場の瞬発力比べではスタミナを生かしきれず凡退が続いた。

しかし、前走の阿賀野川特別では休養して立て直された効果か五分のスタートを決める。スタート直後のズブさは相変わらずで、少し接触して序盤は掛かり気味でコントロールされていたが、3番手で流れに乗る競馬ができた。最後の直線では早め先頭に立って、バテない強みを生かすレースぶり。結果は3馬身半差の圧勝だった。指数は古馬オープン級のものを記録と強かった。もっと評価すべき点はラスト2Fを11秒5-11秒5と減速せずにまとめたことだろう。

あれだけズブかった馬が最後まで減速しないスピードを見せたことには大きな進化を感じた。スタートとスタート直後のスピードの乗りにはまだ不安を感じさせられるだけに、今回の18番枠はむしろプラスになるかもしれない。前走時、序盤で折り合いを欠いたことで、福永騎手得意の前の馬を壁にしての折り合い過ぎの競馬をされると厄介ではあるが、長くバテない脚を使える馬だけに、ロングスパートができる阪神芝3000mの菊花賞の舞台はいかにも向いていると感じる。


※パワーポイント指数(PP指数)とは？
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例）アスクビクターモアの前走指数「-21」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.1秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数＋前々走指数＋近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補


ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う！ netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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