【毎日王冠】東京芝1800mに強い「ディープインパクト×Unbridled's Song」 有力馬の血統を一挙解説

坂上明大

2022年毎日王冠の血統注目馬,ⒸSPAIA

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高速馬場の直線勝負!

秋のGⅠ戦線を占う重要なステップレース・毎日王冠。4回東京開催の初週に行われ、非常に良好な馬場状態でGⅠ実績馬と上がり馬が激突する一戦です。そのため能力比較は当然重要ですが、東京芝1800mの適性も外せないポイント。毎日王冠に強い血統は何か、を整理していきましょう。

毎日王冠は過去10年の平均3F別ラップが35.3-35.8-34.3と、東京芝1800m戦らしい典型的な決め手勝負になりやすい重賞。平均出走頭数12.6頭という少頭数立てもペースに大きく影響を与えており、開幕週の高速馬場という点も大きな特徴のひとつといえるでしょう。

日本で直線勝負に強い血統といえばやはりディープインパクト、特にディープインパクト×Storm Catの黄金配合です。本レースでは産駒の出走頭数が非常に多く「父ディープインパクト」というだけでは選定が難しいですが、国内外で9頭のGⅠ馬を出すディープインパクト×Storm Catの黄金配合からはエイシンヒカリ(2015年1着)、リアルスティール(2017年1着)、サトノアラジン(2017年2着)、ダノンキングリー(2019年1着、2021年2着)と数多くの好走馬が出ています。ディープインパクトの瞬発力源であるHalo≒Sir Ivorの2×4をStorm Catの母Terlinguaが刺激しており、高速馬場の直線勝負に滅法強い黄金配合と言えるでしょう。

ディープインパクト産駒の成績(過去10年),ⒸSPAIA


ディープインパクト産駒の成績(過去10年)
母父 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収率 複回収率
全て 3- 4- 4-31/42 7.1% 16.7% 26.2% 29 76
Storm Cat 3- 2- 0- 0/ 5 60.0% 100.0% 100.0% 246 182

また、ディープインパクト×Storm Catに類似する配合形にも要注目。特にディープインパクト×Unbridled's SongはStorm Catとの組み合わせ以上に優秀と言えるほどです。Unbridled's SongはCequillo≒IncantationなどがHalo≒Sir Ivorを刺激するため、Storm Catと同様に高速馬場の決め手勝負ではとにかく強い配合形。これまでに毎日王冠での出走はありませんが、東京芝1800m戦での好走率は非常に高く、ディープインパクト×Storm Catと併せて覚えておきたい配合形と言えるでしょう。

ディープインパクト×Unbridled's Songの成績,ⒸSPAIA


ディープインパクト×Unbridled's Songの成績
コース 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収率 複回収率
東京芝1800m 6- 1- 0- 8/15 40.0% 46.7% 46.7% 166 123

ディープインパクト産駒以外の好走馬においても、2021年1着馬シュネルマイスターは父KingmanがSir Ivor≒Droneの4×3、2020年2着馬ダイワキャグニーは母がHalo≒Sir Ivorの2×4など、先述の配合と似た仕掛けを持った馬の好走が目立ちます。Halo、Sir Ivor、Drone、Red Godなどを中心に、如何に瞬発力を高めるかがポイントと言えるでしょう。

血統解説

・サリオス
父ハーツクライ(2005年有馬記念、2006年ドバイシーマクラシック)と母サロミナ(2012年独オークス)の仔としてはやや異端の産駒で、母方に入るデインヒルの影響を強く受けたスピード馬です。筋肉質、かつ前向きな気性からマイル前後で活躍しており、東京芝1800mではどれだけ道中でスタミナを温存できるかがポイントとなるでしょう。3歳時のようにうまく流れに乗れれば、十分に勝ち負けになる良血馬です。

・レイパパレ
ディープインパクト産駒ではありますが、母母オイスターチケットが豊富に持つHyperion血脈と母父クロフネのタフさが表現された先行粘着型。ベストは大阪杯が行われる阪神芝2000mでしょう。また、本馬も折り合い面に課題があるだけに、如何に道中でスタミナを温存できるかがカギとなりそうです。

・ダノンザキッド
Hyperion的スタミナとFair Trial的機動力、粘り強さが持ち味のジャスタウェイ産駒。近走で勝ち切れていないのは上がりの速いレース質が強く影響しているように感じます。とはいえ、本馬もコントロール面での課題が解消し切れておらず、現状は父が制した2014年安田記念のようなタフなマイル戦がベストとみています。

・ポタジェ
注目血統に挙げたディープインパクト産駒で、母方に持つRed GodがHalo≒Sir Ivorを刺激している点は悪くありません。ただ、そのほかの部分がパワーとタフさに寄っており、レイパパレ同様に阪神芝2000mがベスト条件ではないでしょうか。バランスがいい反面、勝ち切れないタイプといえます。

・レッドベルオーブ
ディープインパクト×Unbridled's Song×Storm Catという東京芝1800mがピッタリの血統構成で、無敗の三冠馬コントレイルとも共通点が非常に多い配合形です。2歳時に叩き出した2つの2歳レコードがその証といえるでしょう。気性面の不安は最も大きいですが、血統面では最も注目している素質馬です。

2022年毎日王冠の血統解説,ⒸSPAIA



ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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