【スプリンターズS】スピード血統「フォーティナイナー」内包馬が牽引するレース 有力馬の血統を一挙解説 

坂上明大

2022年スプリンターズS注目血統馬,ⒸSPAIA

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大種牡馬サンデーサイレンスが邪魔!?

秋のGⅠシーズン第1戦、スプリンターズS。サマーシリーズ組や3歳勢の潜在能力、マイル路線組との力関係など既存勢力の比較が予想の大きなポイントの一戦です。本記事では血統面を中心に、スプリンターズSを予想するうえで重要なレース傾向を整理していきます。

日本競馬は芝の1600~2400m、特に東京芝2400mと阪神芝1600mを中心にGⅠが組まれており、それに合わせて生産が行われ、そして同条件に強い血統が日本の主流血統として繁栄しています。

サンデーサイレンス内包馬の成績(過去10年)※新潟開催を除く,ⒸSPAIA


サンデーサイレンス内包馬の成績(過去10年 ※新潟開催を除く)
- 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収率 複回収率
該当馬 6-5-4-74/89 6.7% 12.4% 16.9% 30 56
該当馬以外 3-4-5-42/54 5.6% 13.0% 22.2% 15 99

近年の日本競馬を牽引しているサンデーサイレンスの血は当然上記の条件に強い血統であり、反対にスプリント戦やダート戦では他のスペシャリストに分があるというわけです。現在ではサンデーサイレンスの血が3代目以前に入ることも多いですが、同馬の影響の薄い馬に向くレースであることには変わりないでしょう。

では、具体的にどの血統が強いのか。まず前提として、距離が短くなればなるほどレースパターンの幅が狭くなる点は理解しておく必要があります。そのため、DanzigStorm Catなどのスピード血統は総じて好走が目立ちますが、その反面何か1つに絞るのがなかなか難しいカテゴリーが短距離路線というわけです。ただ、そのなかでも特に好走が目立つのはフォーティナイナーです。

フォーティナイナー内包馬の成績(過去10年)※新潟開催を除く,ⒸSPAIA


フォーティナイナー内包馬の成績(過去10年 ※新潟開催を除く)
- 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収率 複回収率
該当馬 3-1-2-10/16 18.8% 25.0% 37.5% 95 162

2016、17年勝ち馬レッドファルクス(父スウェプトオーヴァーボード)、2018年勝ち馬ファインニードル(父アドマイヤムーン)を筆頭に多くの好走馬を出しており、近年のスプリンターズSを牽引する代表的な血統といえるでしょう。

あと1点、血統以外のポイントとして挙げたいのが牝馬が優勢という点。競走馬は季節繁殖動物のため、性別により調子のピークを迎える時季が異なる傾向にあります。

高松宮記念の性別成績(過去10年),ⒸSPAIA スプリンターズSの性別成績(過去10年),ⒸSPAIA


高松宮記念の性別成績(過去10年)
性 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収率 複回収率
牡・セン 9-5-7-101/122 7.4% 11.5% 17.2% 61 154
牝 1-5-3-48/57 1.8% 10.5% 15.8% 56 53

スプリンターズSの性別成績(過去10年)
性 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収率 複回収率
牡・セン 8-4-5-90/107 7.5% 11.2% 15.9% 70 66
牝 2-6-5-41/54 3.7% 14.8% 24.1% 12 81

そのため、調子を落とし気味の高松宮記念よりもピークを迎えているスプリンターズSの方が圧倒的に牝馬の成績が良く、高松宮記念の結果には時季面での補正をかける必要がありそうです。

注目馬の血統解説

・メイケイエール
父ミッキーアイルのスピード源であるデインヒルを4×4でインブリード。近親交配がきついことも影響してか気性的にも短距離向きの荒々しさが表現されています。ただ、母父ハービンジャーは影響力の強い芝中長距離血統で、サンデーサイレンスを3×4でインブリードすることからも身体的な適距離は1400~1600mでしょう。ポジションの重要度が高いスプリンターズSでは乗り難しい面がありそうです。

・ナムラクレア
3代母Coup de Genie(1993年モルニー賞、サラマンドル賞)はMachiavellian(1989年モルニー賞、サラマンドル賞)の全妹という良血。Northern Dancerの血量が多い反面、母母Fountain of Peaceが同血脈を持たない配合のバランスも◎。メイケイエールと同じミッキーアイル産駒ですが、本馬の方がスプリント適性は高く、GⅠタイトルを獲れる良血馬とみています。

・シュネルマイスター
母セリエンホルデは2016年独オークス馬。父Kingmanは2014年愛2000ギニーなどを制したマイラーで、種牡馬としても芝1600~2000mのGⅠ馬を複数頭出しています。マイル路線では現役屈指の実力馬ですが、スプリント路線では展開の助けが必要でしょう。

・ヴェントヴォーチェ
タートルボウル×Distant Viewのマイラー血統ですが、馬体は筋肉質でコンパクト。サンデーサイレンスを持たない点も高く評価できます。ダッシュ力ではピュアスプリンターに劣りますが、先行馬が少ない今年はチャンス十分。伏兵として期待の一頭です。

2022年スプリンターズステークスの血統注目馬,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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