【スプリンターズS】秋の短距離王決定戦 2011年はカレンチャンが強豪海外勢を撃破

緒方きしん

スプリンターズS過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA

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メイケイエール、悲願のGⅠ制覇なるか

オールカマーはジェンティルドンナの愛娘ジェラルディーナが勝利。ここ2戦は重賞で2、3着と悔しい思いをしてきた素質馬がついに重賞タイトルを獲得した。

さて、今週はスプリンターズSが行われる。4歳牝馬メイケイエールと3歳牝馬ナムラクレアの2頭が人気を集めそうな一戦。さらに安田記念2着馬シュネルマイスター、高松宮記念勝ち馬ナランフレグと、実績馬もスプリント王者を目指して出走する。

過去にはタイキシャトル、サクラバクシンオー、デュランダルにロードカナロアと時代を代表する短距離馬が勝利してきた歴史ある一戦。今年はどのようなレースが繰り広げられるだろうか。今回はそんなスプリンターズSの歴史を振り返る。

1番人気は好調な一戦

スプリンターズS過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA


ここ5年で1番人気は3勝。ダノンスマッシュが2019年3着、2021年6着と2度敗れているものの、1番人気の信頼度は高いと言える。ただし2016年にはビッグアーサーが12着、2014年にはハクサンムーンが13着に敗れているように、大崩れも少なくないのは事実だ。

さらに二桁人気馬の激走も多く、ここ5年だけでも4頭が馬券圏内に食い込んでいる。特に2018年には2着に11番人気ラブカンプー、3着に13番人気ラインスピリットが入り、2頭のワイドは138.5倍の万馬券となった。

2001年トロットスターの勝利を最後に長らく関東馬の勝利がなかったが、2014年に美浦・高木登厩舎のスノードラゴンが13番人気の低評価を覆して勝利してからは、レッドファルクスやタワーオブロンドン、グランアレグリアといった関東勢の勝利が増えてきている。昨年は関東馬の出走がゼロだったので3連覇とはならなかったが、今年はシュネルマイスター、ナランフレグ、ウインマーベルといった強力な馬たちが参戦を予定。関西馬とのアツい戦いに注目したい。

強力牡馬と海外勢も撃破した名牝カレンチャン

今年は牝馬が人気を集めそうなスプリンターズS。過去にスプリンターズSでは様々な快速牝馬が勝利をあげてきた。

信じられないほど鋭い末脚を見せた2020年のグランアレグリアは記憶に新しいだろう。6歳牝馬ストレイトガールが1番人気に応えた2015年も見応えがある一戦だった。2000年代にはスリープレスナイトやアストンマーチャン、ビリーヴらが勝利し、90年代にもニシノフラワーやフラワーパークが勝利した。そして2011年の覇者カレンチャンもまた、牝馬ながら牡馬を置き去りにした快速馬である。

カレンチャンのデビューは2歳の年末、2月26日と遅く、ダート1200mの新馬戦で2着だった。次走のダート未勝利戦で勝ち上がり、続く芝の条件戦も勝利して重賞フィリーズレビューに挑戦。そこでラブミーチャンやサウンドバリアーらと激突し8着に敗れたが、それ以降は着実なレース選びで安定した戦績を残すようになる。

4歳2月に準オープンを勝利すると、阪神牝馬S、函館スプリントS、キーンランドCと4連勝。特にキーンランドCではジョーカプチーノやビービーガルダン、パドトロワといった強豪牡馬をおさえて勝利し、スプリンターとしての評価を高めた。

2011年のスプリンターズSでは、海外からの挑戦者が注目を集めた。シンガポールのロケットマンは2011年ドバイゴールデンシャヒーンや同年のクリスフライヤーインターナショナルスプリントなどを制した快速馬。それまで連対を外したことのない安定感も評価され、単勝オッズ1.5倍という圧倒的な人気を集めた。さらにラッキーナイン、グリーンバーディーもGⅠ実績を引っ提げて来日した難敵。国内勢のダッシャーゴーゴー、サンカルロといった実力派も集結し、戦前から盛り上がりを見せていた。

カレンチャンはそうした強豪たちを相手に3番人気に支持された。レースでは中団からの競馬を展開。そして第4コーナー手前でポジションを押し上げると、先行勢を外から飲み込み、驚きの5連勝でGⅠを制したのだった。翌春には同厩舎の新星ロードカナロアを撃破して高松宮記念を制するなど、スプリント界を牽引した名牝となった。

ピクシーナイトの復帰を願いつつ

カレンチャンは引退後、重賞活躍馬カレンモエ(父ロードカナロア)らを輩出し牝系を広げていこうとしている。今年の注目馬であるメイケイエールは今をときめくシラユキヒメの一族、ナムラクレアもバゴなどを輩出している海外の一流牝系に所属する。きっと引退後も、競馬界を賑わすことになるだろう。

今年は昨年の覇者であるピクシーナイトが不在。昨年末の香港スプリントで悲惨な事故に巻き込まれ大怪我を負ったが、今もなお復帰に向けて調整している。スプリントGⅠで2馬身差をつけた才能溢れる名馬が無事に復帰することを祈りつつ、今年の快速馬たちの激突を見守りたい。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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