【スプリンターズS】秋のGⅠ開幕戦! 最有力はメイケイエール、逆転候補ナムラクレアとヴェントヴォーチェ

勝木淳

スプリンターズSインフォグラフィック,ⒸSPAIA

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理想は中団から巧みに立ち回る馬

秋のGⅠ開幕戦・スプリンターズSはシュネルマイスター、メイケイエール、ナランフレグら古馬の実績馬たちにナムラクレア、テイエムスパーダ、ウインマーベルの3歳勢が挑戦するという図式。なかでも写真集が発売され人気急上昇のメイケイエールは、セントウルS快勝を含む今年重賞3勝といよいよその力を競馬で発揮しつつあり、待望のGⅠタイトルへという機運が高まる。

一方3歳馬は昨年、スプリント重賞2着2回のピクシーナイトが07年アストンマーチャン以来久々の勝利をあげた。今年の3頭はすべてスプリント重賞で古馬と互角以上の戦績を残しており、2年連続もありうる。データは14年新潟を含む過去10年間を使用する。


過去10年スプリンターズS人気別成績,ⒸSPAIA


まずは人気別成績。中山芝1200mはオーシャンSなど難解なレースも多いが、ここは比較的堅実で、1番人気【5-1-1-3】勝率50.0%、複勝率70.0%を筆頭にこの10年間の勝ち馬のうち9頭は3番人気以内。

二桁人気馬の1勝は新潟だった14年スノードラゴンで、中山で行われた9回はいずれも3番人気以内が勝利。ただし、昨年10番人気3着シヴァージ、20年10番人気3着アウィルアウェイなど連下候補は幅広くとりたい。


過去10年スプリンターズS年齢別成績,ⒸSPAIA


次に年齢別成績。3歳は昨年まで【0-1-1-13】と不振傾向だったが、ピクシーナイトの勝利で一気に風向きは変わった印象。評価を改めたい。確率的な中心は4歳【3-3-4-16】勝率11.5%、複勝率38.5%だが、5歳【3-5-2-42】勝率5.8%、複勝率19.2%、6歳【3-0-2-28】勝率9.1%、複勝率15.2%と年上の馬も侮れない。スピード勝負の中山芝1200mは同時に器用さも問われるコースであり、レース巧者もチャンスがある。


過去10年スプリンターズS脚質別成績,ⒸSPAIA


逃げ【0-3-1-6】複勝率40.0%、先行【1-3-2-27】勝率3.0%、複勝率18.2%に対し、中団は【8-4-5-48】勝率12.3%、複勝率26.2%。先行有利なイメージが強いコースだが、データ上はスピードで押し切るのは難しく、ここからもレース巧者に利があることがわかる。

後方【1-0-2-50】勝率1.9%、複勝率5.7%の1勝は20年のグランアレグリア。戦歴が似ているシュネルマイスターは果たして決め手ですべてを逆転できるだろうか。ちなみにグランアレグリアは高松宮記念2着とスプリントGⅠ経験があった。シュネルマイスターは1200m初出走。この差は気になるところだ。


逆転候補はナムラクレアとヴェントヴォーチェ

上位人気堅調、年齢差なし、逃げ、先行もいいが、1着となると中団から差す組が優勢。そんな傾向をひと通りつかんだところで、次は前走成績を中心に前哨戦を振り返りたい。


過去10年スプリンターズS前走クラス別成績,ⒸSPAIA


近年のトレンドであるGⅠからGⅠへというローテはここでも有効で、前走GⅠは【2-3-0-8】勝率15.4%、複勝率38.5%。2勝は17年レッドファルクスと20年グランアレグリアで、いずれもGⅠ馬、それもスプリントGⅠ好走実績があった。

今年はシュネルマイスター、ナランフレグ、ダイアトニックが前走安田記念。その成績は【2-1-0-6】勝率22.2%、複勝率33.3%。安田記念3着以内は【2-0-0-1】で2着シュネルマイスターに好材料。とはいえ昨秋は毎日王冠に出走しており、1200m戦への対応をどう考えるか。実に悩ましい。


過去10年スプリンターズS前走サマースプリントシリーズ組レース別成績,ⒸSPAIA


前走GⅠを除くと、サマースプリントシリーズ対象戦が【8-7-8-106】勝率6.2%、複勝率17.8%。サマーシリーズで秋のGⅠに最もつながるのがこのスプリントシリーズだ。

その内訳はセントウルS【6-5-2-43】勝率10.7%、複勝率23.2%がトップ。ここはサマーシリーズというより、スプリンターズS前哨戦という側面が強く、納得できる。ちなみにセントウルSが中京だった昨年も2、1着馬が本番1、2着。しっかり分析したい。


過去10年スプリンターズS前走セントウルS組着順別成績,ⒸSPAIA


今年のセントウルSは前後半600m32.5-33.7、1.06.2。好位から2馬身半差快勝のメイケイエールは文句なし。内容からも、かつての脆さは感じられない。あとは中2週と間隔を詰めた際にどうなるか。懸念材料はそれぐらいか。

セントウルS1着は【2-3-0-4】勝率22.2%、複勝率55.6%で2着【3-1-0-6】勝率30.0%、複勝率40.0%。3着【0-0-0-6】、4着【1-1-0-3】勝率20.0%、複勝率40.0%、5着以下【0-0-2-25】なので、今年はメイケイエール、ファストフォースが候補となる。


過去10年スプリンターズS前走セントウルSを除くサマースプリントシリーズ組着順別成績,ⒸSPAIA


セントウルSを除いたサマースプリント組は【2-2-6-63】。キーンランドC【1-0-5-37】3着5回が目立つ。12、14、15、16年は穴を輩出、かつては穴ローテともいわれていた。キーンランドCも合わせ、人気別で触れた人気薄の3着はこの組から出る。

その着順別成績は4着以内【1-1-5-33】、6着以下【1-1-1-25】。特に6~9着は【1-0-1-12】勝率7.1%、複勝率14.3%となっている。キーンランドCからは1、2着ヴェントヴォーチェ、ウインマーベルと6着エイティーンガール。北九州記念組は2、3着タイセイビジョン、ナムラクレア、7着テイエムスパーダ、アイビスSD7着マリアズハートまで。

これら候補のうち中山適性、器用な立ち回りといったイメージからヴェントヴォーチェ、北九州記念で差す競馬を経験したナムラクレアも自在性を身につけ、レースの巧さを感じる。メイケイエールを逆転できるか。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。


スプリンターズSインフォグラフィック2,ⒸSPAIA



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