【オールカマー】ジェラルディーナ、挑戦者らしい競馬で重賞初制覇! 6着デアリングタクト悲観は不要

勝木淳

2022年オールカマーレース結果,ⒸSPAIA

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いかにもオールカマーらしい立ち回り

GⅠに向け東西で組まれた重要なステップレースは3歳馬と古馬で対照的な流れの競馬になった。オールカマーは古馬の前哨戦らしく、序盤から各馬折り合いとリズムを重視したことで、大人びた落ち着いた流れだった。1年7カ月ぶり復帰戦のバビットが大外枠からすんなり先手を奪い、前半1000m通過1.01.1。時計のかかる馬場で、極端なスローとはいえないが、このレベルの馬たちにとって楽に追走できた。

この日の中山の馬場は天候に恵まれ、前日、不良馬場まで悪化した馬場はみるみる回復。午後には良馬場まで戻った。乾きはじめた馬場はCコース替わりも手伝い、インが優勢。オールカマーも1~3着は馬番2、1、3番。逃げて4着のバビットを含め、勝負所を内から攻めあがった馬たちが上位を占めた。先行力か内を立ち回れる器用さが求められる競馬は、いかにも古馬同士のレースらしいスキのないものだった。

理想的な運びだったジェラルディーナ

ジェラルディーナはここが重賞初V。秋の大舞台に立つためには賞金加算が求められる立場。ここにかける意気込みは実績馬たちとは違う。つまり挑戦者の立場であり、そういったシチュエーションになったときの横山武史騎手はなお一層輝きを増す。枠順を最大限にいかし、3列目のインコースという最高のポジションにおさめた。

後半は残り800mから11.9-11.8-11.7-12.1。坂下にかけてじわじわとペースがあがり、最後の200mで踏ん張り合う、いかにも中山の中距離戦らしいレースラップ。中山で重賞を勝ったバビットは“らしさ”を十分みせた。どの馬も苦にしないラップもまた、位置取りと通ったコースの差が出た要因だろう。

ジェラルディーナは後半も理想的な運び。インにいた分、勝負所で待つ場面もあり、中山で何度も目撃した武史スペシャルだ。直線も最小限の動きで進路を確保。重賞であとひと押し足りなかったジェラルディーナの力を引き出した。

大仕事をしそうな予感がする2、3着

2着はオープン昇級初戦のロバートソンキー。2年前の神戸新聞杯では1勝クラスの身ながら3着に入り、権利獲得。菊花賞6着と善戦後は間隔をとりながらじっくりレースに出走。大事に使われながら1勝クラスから再出発、今夏OP入りを果たした。こうした戦績をたどってOPに戻り、重賞で好走できる馬はそうそういない。いかに陣営が大切に育てあげたか。まずはそれを称えたい。

レース内容はジェラルディーナと同じく枠をいかし、勝ち馬の背後というポジション。目の前の勝ち馬の動きに合わせ、その進路をなぞるような立ち回りは2年前の神戸新聞杯を思い出す。レース巧者で、伊藤工真騎手もその持ち味を熟知していた。このコンビ、まだまだ大仕事をしそうだ。

3着ウインキートスは昨年のオールカマーで前が狭くなる状況ながら抜け出し2着。その昨年は前半1000m通過1.00.7、後半800m11.8-11.5-11.7-12.1で今年と似た流れ。スロー寄りの前半から後半早めにレースが動き、最後にスタミナを問う流れはウインキートスにとって得意な形でもある。今年は目黒記念で逃げた分、先行できた。松岡正海騎手が再び騎乗して2戦、先行力を発揮できるようになった。丹内祐次騎手もウインキートスの能力を引き出したが、松岡騎手がさらにそれを進化させつつある印象。こちらもどこかで大きな仕事をしそうな予感がする。

デアリングタクトを信じたい

5着テーオーロイヤルは休み明け、久々の中距離戦出走を考えれば、上々のすべり出し。秋はなかなか適条件がなく、難しいところだが、タイトルホルダーを追った天皇賞(春)は忘れていない。来春に向けて順調にいってほしい。

6着デアリングタクトは悲観しなくていいのではないか。さすがに休養が長かったので、休み明けからGⅡで全開とはいかない。ましてイン有利な馬場状態であっても、下手に馬群に入れて、負荷をかけるような競馬をここではできない。大外進出は致し方なしではないか。そういった意味でも実績馬の始動戦らしい競馬を象徴する敗戦だった。宝塚記念3着のダメージが心配だが、今年最大級の激戦だった宝塚記念好走はその力の証だ。信じたい。

2022年オールカマーレース経過,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。

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