【神戸新聞杯】GⅠ・2着の実績馬ジャスティンパレス 今こそ春2戦の鬱憤を晴らす時だ

山崎エリカ

2022年神戸新聞杯出走馬のPP指数,ⒸSPAIA

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レースが緩みなく流れる傾向にある中京芝2200m

中京芝2000mが舞台だった先週のローズSは、馬場が悪化しなかったこともあり、前半がゆったりとした入りで、かなりのスローでレースが流れた。中京芝2000mはスタート地点がスタンド前の急な上り坂の中間で、最初の1角までの距離が約314mと短くペースが落ち着きやすい。

しかし、神戸新聞杯の舞台となる中京芝2200mは4角出口付近の平坦な地点からのスタートで、最初の1角までの距離は約512mと長い。そのため逃げ馬が多数出走していると競り合いが長くなり、ペースが速くなることもしばしばある。昨年は逃げ馬不在で隊列形成がスムーズだったため、ペースはそこまで上がらなかったが、不良馬場でかなり時計が掛かかったこともあり、差しが決まっている。

今週日曜日は晴れ予報だが、メイショウラナキラやビーアストニッシド、レヴァンジルと逃げ候補が3頭出走している。さらに先行馬も多数のメンバー構成も考慮すると、レースが緩みなく流れる公算が高い。差し有利の決着になる可能性が高いと見て予想を組み立てたい。

能力値1~4位タイ馬の紹介

2022年神戸新聞杯出走馬のPP指数一覧,ⒸSPAIA


【能力値1位 ボルドグフーシュ】
春のクラシックには参戦できなかったが、前走の一宮特別で古馬を相手に完勝し、3勝目を挙げた。前走はややスローペースで逃げ馬が2着に粘る流れを7番枠からやや出遅れ、そこから促されたが進んで行かずに後方2番手からの競馬。3~4角の下り坂を外からじわじわ勢いをつけて、4角出口で大外へ。直線序盤から伸び始め、一気に先頭列まで上がり、ラスト1Fではそのまま突き抜けて2馬身差で完勝した。

これまで後方からの競馬しかしておらず、先行力がないのが弱点。前半のポジショニング能力が低い代わりに、終いは堅実に伸びて来るタイプで、本来はもっと距離がほしいが、芝2200mは守備範囲。中京芝2200mでも京都新聞杯のコンクリートのような馬場で緩みない流れだと分が悪いが、ある程度時計が掛かれば、安定した走りを見せるだろう。

【能力値2位 プラダリア】
デビュー3戦目に重馬場の阪神芝2400m戦で中団の外から追走して、2着に7馬身差をつけて勝利。また、次走の青葉賞では初重賞制覇を達成し、長距離適性の高さを見せつけた。

青葉賞はレースがややハイペースで流れたなか、3番枠からまずまずのスタート。促されて一旦2列目の内を確保したものの、1~2角で下げて好位の内に入った。道中も前2頭が飛ばしていくなか、離れた5番手の最内を追走し、3~4角で前との差を詰め、4角出口で外に出されて直線へ。そこからすっと伸びて4番手、ラスト2Fで一気に2番手まで上がり、ラスト1Fで早め先頭に立ったロードレゼルを競り落として半馬身差で勝利した。

前走の日本ダービーでも5着に善戦。トライアルの青葉賞好走後でやや出遅れ、そこから押して好位の中目まで挽回と、そこまでスムーズなレースではなかったわりに、よく頑張ったと見ている。ただ、それで中団の外々を回るロスがあったジャスティンパレスと0.4秒差なら、逆転されても不思議はない。

【能力値3位 ヴェローナシチー】
昨夏の小倉、ピースオブエイトが勝利したハイレベル新馬戦の3着馬。そこから着実に力をつけ、京成杯3着、若葉S2着、京都新聞杯2着と好成績を残している。2走前の京都新聞杯は緩みない流れを11番枠からやや出遅れ、後方2番手辺りを追走。3~4角では1F11秒台の速い流れの中で、外々から位置を押し上げ、4角では先頭からしぶとく踏ん張った。ラスト1Fでは食らいつくアスクワイルドモアに半馬身差で交わされたが、ボルドグフーシュには1.1/4馬身差つけて先着した。

京都新聞杯で能力を出し切ってしまったために、多少疲れが残ってしまったようで、前走の白百合ステークスでは1番人気に応えられなかった。しかし、勝ちに行く競馬で2着ならば悪くないし、勝利したフェーングロッテンの後の活躍ぶりを見れば、評価を落とす材料にはならないだろう。今回は立て直しての巻き返しを期待できる。

【能力値4位 パラレルヴィジョン】
デビュー戦となった4月中山の未勝利戦では13番枠からやや出遅れ。そこから促されるとすっと中団外まで上がったが、追っつけながらの追走になった。3角過ぎからスパートすると一気に上昇し、4角では2列目まで上がり、そのまま長く良い脚を使って勝利した。ラスト2Fは12秒4-12秒2。とても優秀な内容で余力も感じさせる走りだった。

しかし、驚きはデビュー2戦目となった6月東京の1勝クラス。デビュー戦同様に8番枠から出遅れ、そのまま後方待機の競馬。3~4角でひとつ外を通し、直線では馬場の良い外に出しながら、最後までしっかり伸びて2着に3馬身差をつけた。指数は2クラス上の3勝クラス通用レベルのものを記録した。

デビュー2戦目でここまで高い指数を記録できるとは、相当な素質の持ち主なのだろう。ただあまりに急激な指数上昇はその次走で伸びないこともある。また前走は前が引っ張った展開に恵まれた面もある。今回は休養明けなので疲れは取れているだろうが、勝ちを意識する競馬をした場合には、意外に伸びない可能性もある。3戦3勝で菊花賞の大本命馬誕生のストーリーにするには、かなり高い潜在能力が要求される。

【能力値4位 ジュンブロッサム】
デビュー2戦目の東京芝2000mの未勝利戦をレコードタイムで勝利。ユイノゴトクが暴走気味に後続を引き離して逃げるなか、離れた好位の外から長くいい脚を使っての快勝で、未勝利クラスとしては優秀な指数を記録した。この時点でその後の活躍を期待させる馬となり、共同通信杯4着、アルメリア賞は好指数で2着、アーリントンCは4着と良い走りが続いた。

2走前は3回中京の開幕週で超高速馬場。逃げ馬がマイペースで逃げ切る展開を、折り合いに専念するあまり絶望的な位置になった。メンバー中最速の上がり3Fを駆使しながらも前との差を詰め切れず4着と、流れに乗れず脚を余す結果となった。しかし前走の出雲崎特別ではしっかり巻き返して、2勝クラスをレコード勝ちした。

前走はレコード勝ちとは言っても、2回新潟開幕週の超高速馬場でのもの。指数上は2勝クラス並レベルなので、そこまで高く評価できるものではないが、着実に成長していることを感じさせた。ここで勝ち負けするにはさらなる上昇が要求され、好走は簡単ではない。ただし乗り方を工夫すればチャンスは出てくるだろう。

穴馬は春2戦の鬱憤を晴らしたいジャスティンパレス

新馬戦、黄菊賞を連勝し、デビュー3戦目のGⅠ・ホープフルSでは緩みない流れを好位の中目を追走と正攻法の競馬で2着と好走した。その後は休ませて皐月賞に直行。スタートでアオって後方2列目の外から、15番手のドウデュースの前まで押し上げに行って、3~4角で中団の外々、4角でもかなり外を回る競馬。結果、レースの流れに乗り切れず9着に敗退した。

次走の日本ダービーでは、五分のスタートを切って、そこから中団やや前目の位置についた。道中も折り合いを意識しながらの競馬で中団の外、3~4角でアスクビクターモアが単騎気味というなかで、外々から動いて行く形。直線序盤では3列目まで上がってきたが内に刺さった。ラスト2Fで少し甘くなり、最後はジリジリ。結果、ここでも9着だった。

直行でGⅠに出走すると、休養明けからしっかり仕上げようとする意識が働きすぎるのか、その次走で意外と伸びないことがある。春ではそういう面も出たのかもしれない。結局、春のGⅠ戦線では能力を出し切れないまま終わってしまった。よってエネルギーは相当溜まっているはずだ。デビュー3戦目にGⅠで2着した潜在能力はここでは見劣りしない。今回で溜まりに溜まったエネルギーが開放されれば、当然勝ち負けになるだろう。


※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ボルドグフーシュの前走指数「-17」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.7秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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