【神戸新聞杯】春の実績馬vs新興勢力 2、3着にもキセキら後のGⅠ馬ズラリ

緒方きしん

神戸新聞杯過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA

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今年は面白そうな新興勢力が参戦

ローズSはアートハウスが勝利。2着には素質馬サリエラ、3着には夏に覚醒したエグランタインが入り、楽しみな3頭が秋華賞への権利を掴み取った。

さて、今週は菊花賞トライアル・神戸新聞杯が行われる。過去の勝ち馬を見ても、オルフェーヴルやゴールドシップ、ディープインパクトやキングカメハメハ、コントレイルなど、歴史的名馬がズラリと並ぶ。また、先日この世を去ったゼンノロブロイもここを制している。

今年も菊花賞を目指す素質馬たちが集結。コントレイルの全弟サンセットクラウド、2戦2勝のパラレルヴィジョンなど、強力な新興勢力が参戦する。さらに、京都新聞杯の1〜4着馬が再度ここで激突。中でも、勝ち馬アスクワイルドモアや同レース2着ヴェローナシチーは、母父がゼンノロブロイとドラマを感じさせる。今回はそんな神戸新聞杯の歴史を振り返る。

1番人気は高い信頼度

神戸新聞杯過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA


ここ5年、1番人気馬は3勝。2021年シャフリヤール、2018年エポカドーロはいずれも4着に敗れているが、1番人気の信頼度は高いと言えるレースで、直近10年に範囲を広げるとサトノダイヤモンドやワンアンドオンリー、エピファネイア、ゴールドシップなどが勝利し、7頭が1番人気に応えている。

最後に1番人気で掲示板を逃したのは2007年のフサイチホウオー。さらにその前となると、1990年のダイタクサンビーム(7着)まで遡る。ディープインパクトやキングカメハメハ、シンボリクリスエスも1番人気に応えてきた。

しかし、昨年は10頭立てながらも2着に単勝26.5倍の5番人気レッドジェネシス、3着に単勝41.1倍の8番人気モンテディオがきたように、中穴〜伏兵の好走も少なくない。特に2020年に単勝112.7倍の14番人気で3着に好走したロバートソンキーは記憶に新しく、3番人気2着ヴェルトライゼンデとのワイドは165.2倍の万馬券となった。2014年も2着サウンズオブアース(8番人気)と3着トーホウジャッカル(9番人気)のワイドが万馬券になっている。

菊花賞への着実なステップとした2017年キセキ

例年、春のクラシック実績馬と夏の上がり馬との激突に注目が集まる神戸新聞杯。ここ4年は1、2着が春クラシック出走馬であり、3着にクラシック未出走馬がくる構図が続いている。そんな中、ダービー馬レイデオロの2着と連対したのが、2017年のキセキだ。

2017年の春クラシックは波乱から始まった。皐月賞は牝馬のファンディーナが1番人気となり、勝ったのは9番人気アルアイン。1〜3番人気馬は掲示板外に敗れ、三連単は100万馬券となった。しかしダービーは1〜3番人気で決着。スワーヴリチャード、アドミラブルを撃破したレイデオロはサンデーサイレンスの血を持たず、当時から種牡馬価値の高さも話題になっていたほどの馬だ。

そんなレイデオロの秋始動戦が神戸新聞杯だった。当然のように1番人気はレイデオロ。そして2番人気に支持されたのが、7月8月に条件戦を連勝していたキセキだった。きさらぎ賞、毎日杯2着のサトノアーサー、皐月賞3着ダンビュライト、ダービー4着マイスタイルらを抑えての2番人気だった。

キセキの祖母は桜花賞2着馬ロンドンブリッジ。引退後は生産牧場の下河辺牧場に戻り、繁殖牝馬としてオークス馬ダイワエルシエーロや今年の新種牡馬として活躍中のグレーターロンドン、アーリントンC勝ち馬ビッグプラネットらを輩出。キセキもまた下河辺牧場で生まれ、その素質を磨いてきた1頭だった。

神戸新聞杯はアダムバローズが逃げる展開。レイデオロは好位、キセキは出遅れて後方からの競馬となった。全体的に緩やかなペースとなり、好位から抜け出したレイデオロが横綱競馬で快勝。キセキは後方から上がり最速の脚で追い込み2着とすると、続く大雨の菊花賞で栄冠を手にしたのだった。その後は2年連続で宝塚記念2着などGⅠ戦線を長きに渡り盛り上げる人気者となった。その最初の重賞連対が2017年の神戸新聞杯だった。

2、3着にも後のGⅠ馬がズラリ

キセキが大いに活躍したように、神戸新聞杯は勝ち馬だけでなく2着馬にも名馬がズラリと並ぶ。サイレンススズカ、マヤノトップガン、カツラギエース、ミッキーロケット、アサクサキングス……。いずれも、競馬界を盛り上げた名馬たちである。

3着馬にはトーホウジャッカルやビッグウィーク、オウケンブルースリにソングオブウインドなど、菊花賞を制した馬が多く名を連れる。2019年菊花賞馬のワールドプレミアも神戸新聞杯は3着だった。

今年はどんな馬が優勝し、そして2着、3着にくるのか。クラシック出走馬か、クラシック未出走馬か──。伝統の一戦に集結した素質馬たちの激突を見届けたい。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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