【ローズS】いざラスト一冠へ! 陣営の執念を感じるパールコードの物語、アートハウスに受け継がれる

勝木淳

2022年ローズSレース結果,ⒸSPAIA

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完璧でも勝てない、GⅠの厳しさ

忘れな草賞1着、オークス2番人気7着のアートハウスと、サリエラ、セントカメリアら夏に台頭してきた勢力との力比べ。今年のローズSはそんな図式のなかで行われ、アートハウスが2着サリエラ、3着エグランタインを退け重賞初制覇を飾り、スターズオンアースが待つ秋華賞へ向かうことになった。

アートハウスの母はパールコードで、中内田充正厩舎所属、新馬と3歳春フローラS以降、4歳クイーンSまで川田将雅騎手が手綱をとった。3歳秋はフローラS2着以来の出走だった紫苑Sは重賞昇格初年度、馬体重プラス16キロで2番人気5着。ビッシュが勝ち、2着はヴィブロスだった。

2016年秋華賞は桜花賞でジュエラーにたった2センチ差で敗れた以外負け知らずのオークス馬シンハライトがローズS勝利後に故障で離脱。オークスを故障で出走できなかったジュエラーが2番人気に推され、紫苑Sを勝ったビッシュが1番人気、3番人気が同2着ヴィブロス。そしてパールコードは4番人気だった。

ジュエラーが休み明けのローズS11着だったこともあり、新興勢力が中心視されパールコードにも勝機はあった。内枠から折り合いをつけながら中団前目、馬群の外目追走。川田将雅騎手のパールコードへの自信を感じさせる内容。3着に残るカイザーバルを目標に進め、4コーナーではその外に進路を確保し、勝利が見えた。しかし、その背後にヴィブロス。パールコードは格好の目標になっていた。カイザーバルをとらえ、ヴィブロスを振り切りにかかるも、最後の直線で苦しがったのかヨレる場面もあり、ゴール板で半馬身だけヴィブロスに捕まった。レース内容は完璧に近かったが、それでも勝てない。GⅠの難しさを痛感するような競馬だった。

前進を感じるサリエラ、エグランタイン

生涯一度の牝馬三冠レース。出走にこぎつけた最後の一冠秋華賞で、申し分ないレース運びをしながら2着。勝てなかったという関係者の悔いは簡単には拭いきれない。そんなパールコードは三嶋牧場で初仔アートハウスを産んだ。

母と同じ馬主、調教師、主戦騎手。母をGⅠ馬にできなかったからこそ、アートハウスにかける意気込みは強い。それは川田将雅騎手がオークスで桜花賞馬スターズオンアースではなく、アートハウスを選んだ点にあらわれている。なんとしても母の分までアートハウスにタイトルを獲らせたい。

オークスは厳しい競馬になってしまい7着。牝馬三冠最後の秋華賞は奇しくも母がタイトルに手をかけたレース。運命のめぐり合わせを感じる。ローズSの勝利は単に勝っただけではない。前半1000mが1.00.2のスローペース、後半800mが11.8-11.5-11.3-11.7。序盤、先行集団に入って流れに乗り、後半は積極的にペースアップに対応。ねじ伏せるような内容は濃く、秋華賞を睨んだ競馬に映る。できる限り最大限の準備をする。悲願に向けて陣営に余念はない。スターズオンアースに真っ向勝負を挑んでほしい。

2着は6月の東京で派手な追い込みを決めたサリエラ。今回も中団後ろにつけた。前半もう少し流れてほしかったが、前走東京戦に比べると勝負所の反応は改善された印象。それでも爆発力を引き出すまでに時間がかかるところがあるが、今回はゴール前の脚色は目立った。上がり最速33.7を記録しながら2着。秋華賞出走の権利はとれたが、課題も残った。本番は阪神内回り2000m。爆発力だけでは勝てない。しかし、使われるごとに着実に課題はクリアしており、本番での楽しみはある。

3着エグランタインは小倉で1勝クラスを勝った上がり馬。その前走は小倉芝2000mで2番手抜け出しなので、今回はイメージ一新の内容。サリエラの前に位置し、直線までずっとイン狙い。池添謙一騎手が権利獲得という目標を見事にクリアした。控える競馬は以前からしており、驚きでもないが、先行、差しと脚質に自在性があるのは強み。1、2着とはやや差があるように感じたが、内回りの混戦向きで、本番も侮れない。

2022年ローズステークスレース結果,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。

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