【キーンランドC】ワイド配当に妙味ありのスプリント戦 名馬タイキシャトルの血を引く牝馬に注目

緒方きしん

過去5年のキーンランドC優勝馬,ⒸSPAIA

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カレンチャンやダノンスマッシュも制した重賞

好メンバーが揃った札幌記念はジャックドールが勝利。2着パンサラッサや3着ウインマリリンなども良い走りを見せ、ここから秋のGⅠ戦線で活躍する馬が多そうな一戦となった。

さて、今週はキーンランドC。連覇を狙うレイハリア、昨年2着で一昨年の覇者エイティーンガールといった実績馬が参戦を予定している。さらには2006年覇者のチアフルスマイルを母に持つヴァトレニも、志摩S(3勝クラス)、青函S(OP競走)と連勝の勢いに乗って参戦。非常に面白いメンバー構成となった。こちらも秋に向けて楽しみなメンバーと言える。

過去にはカレンチャンやダノンスマッシュ、ワンカラットといった名スプリンターたちが勝利。2着馬にもタワーオブロンドンやストレイトガール、3着馬にもレッツゴードンキやセイウンコウセイ、キンシャサノキセキらがいる、ハイレベルなスプリント重賞だ。今回はキーンランドCの歴史を振り返る。

近年は1番人気がやや苦戦?

過去5年間のキーンランド優勝馬,ⒸSPAIA


ここ5年間で1番人気は2勝。しかし2020年1番人気ダイアトニックは15着、2021年1番人気メイケイエールは7着と掲示板外に敗れている。2008年~2016年までの9年間、1番人気馬は掲示板を外さず、7度馬券に絡むという安定感を見せていたが、2017年モンドキャンノが6着に敗れて以来、やや傾向に変化が見られる。

一方で変わらない傾向といえば、牝馬が強いこと。重賞に昇格した2006年の第1回キーンランドCは1着チアフルスマイル、2着シーイズトウショウ、3着ビーナスラインと3頭全てが牝馬だった。昨年も1着レイハリア、2着エイティーンガールと牝馬のワンツー。ここ5年で馬券圏内に入った15頭のうち、9頭が牝馬である。

ここ数年、馬券的に荒れがちなのはワイド。昨年の1着レイハリアは3番人気、2着エイティーンガールは7番人気、3着セイウンコウセイは9番人気だった。馬連の配当は45.5倍だったが2着3着のワイドは76.1倍と、ワイドの配当が上回った。他にも2020年に1着エイティーンガール(5番人気)と3着ディメンシオン(9番人気)で33.8倍、2017年1着エポワス(12番人気)と3着ナックビーナス(5番人気)で30.0倍など、30倍台の配当がつくケースは少なくない。

懐かしの洋芝巧者・タニノマティーニ

近年ワイドが荒れがちなキーンランドCだが、たった1頭の好走で大荒れになった年もある。その立役者が2008年の勝ち馬、タニノマティーニ。2着には2番人気ビービーガルダン、3着には1番人気キンシャサノキセキが入ったが、16番人気のタニノマティーニが勝ったことで、三連単は5616.1倍、馬連は718.8倍、1着2着のワイドも146.2倍という波乱の結末となった。

ウォーニング産駒のタニノマティーニは、洋芝を得意とする馬だった。初めて北海道でレースに出走したのは3歳9月のこと。当時3連敗中だったが、札幌の条件戦・礼文特別で逃げ切り勝ち。さらに翌年には函館で3連勝した。オープン馬となってからも、2006年函館スプリントSで4着、2007年UHB杯(OP競走)で勝利など定期的に北海道で好走。それでも2008年は函館スプリントSで12着、UHB杯で5着とこれまでよりも苦戦していたことで、続くキーンランドCでは16番人気と評価を落としていたのであった。

キーンランドCで逃げたのは当時3連勝中だった4歳馬ビービーガルダンで、その秋にはスプリンターズSで3着となり翌年のキーンランドCを制する実力派だった。8歳馬タニノマティーニはそんな相手を4番手からの競馬で差し切ると、翌年の函館スプリントSでも2着に食い込むなど相変わらず洋芝適性を見せつけつつ、10歳まで現役を続けたのだった。

名馬タイキシャトルを忘れない

8月17日、名スプリンターであり名マイラーだったタイキシャトルがこの世を去った。28歳、大往生と言えるだろう。現役時代の大活躍はもちろんのこと、引退後も、サンデーサイレンスやその子供たちが人気を集める中、種牡馬として多くの活躍馬を送り出した。

タイキシャトル産駒のうち、2005年フェブラリーS勝ち馬メイショウボーラーは、2017年JBCスプリント勝ち馬ニシケンモノノフを輩出。そのニシケンモノノフの初年度産駒が今年デビューを迎えている。そのうちの1頭デステージョは、門別のJRA認定フレッシュチャレンジで9馬身差をつけ圧勝し、3戦目も勝利するなど期待を集めている。今後、タイキシャトルの血を繋げていく存在となってくれるかもしれない。

そして、キーンランドCにもタイキシャトルの血を受け継ぐ馬が出走を予定している。母父タイキシャトルの5歳牝馬、オパールシャルムだ。これまでタイキシャトルの血を持つ馬としては、2013年にストレイトガール(母父タイキシャトル)が2着と好走している。名スプリンターの血が北の大地で騒ぐのか、注目したい。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。



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