【関屋記念】待望の重賞初制覇! GⅠでも楽しみな好素材ウインカーネリアン

勝木淳

2022年関屋記念回顧,ⒸSPAIA

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ウインカーネリアンにお膳立ては整っていた

高速馬場で安定していた新潟の芝は前日夜の雨で朝からやや重発表。関屋記念は軽い馬場、瞬発力勝負にならないのではという読みもあった。だが、当日朝発表のクッション値は8.6。この開催はじめて9を下回ったものの、軟らかいとまでは言えない状態。さすが水はけがいい新潟。馬場の傷みは最小限にとどまった。

さらに前走まで飛ばしてハイペースを演出したレッドライデンが控える作戦を示唆。同厩舎のウインカーネリアンにとって力を発揮しやすい状況がそろった。まして引いたのは7枠12番。関屋記念は過去19年ずっと7、8枠の外枠が好走。コーナー2回、スローペース、長い向正面、枠順なりに内に入ると、窮屈な競馬になりやすく、距離ロス承知で外をスムーズに回る方を優先させたい。ウインカーネリアンにとって願ってもない好機だった。

だからといって勝てるほど競馬は甘くない。なにせ重賞の1番人気はこれまで18連敗中。確勝級も負けてきた。そんなジンクスを知ってか知らずか、ウインカーネリアンはいつも通り逃げるシュリを行かせて、好位2番手外をキープ。スタートを決め、この形を作った時点で勝負あり。シュリが作る流れは前半800m48.4。例年の関屋記念と同様スローの瞬発力勝負は見えていた。それでも新潟外回りでは後ろは動けない。途中でまくろうものなら、最後の直線約650mは乗り切れない。

緩い流れが多いマイルGⅠなら

2番手ウインカーネリアンは競られることなく、前にいるシュリを利用してペースをコントロール。早めに競り落とすこともなく、後半800m44.9、残り600m10.8-10.6-11.6でじわっと接近。残り200mで競り落とし、踏ん張った。手順は理想的であり、そんな競馬を続けてできるウインカーネリアンはハイセンス。思えばコントレイルが勝った皐月賞4着だった好素材。3勝クラス突破後のダービー卿CT取消からツメの不安など自身との戦いが続いた。1年の休養後、谷川岳Sから3連勝。関係者の努力が実を結び、それを三浦皇成騎手が見事にエスコートした。

これでサマーマイルシリーズ王者に王手をかけた。ベレヌスらが出走予定の最終戦京成杯AHの結果にもよるが、あくまで夏の目標は関屋記念だろう。次の大きな舞台に向けてゆっくり英気を養ってほしい。近年のマイルGⅠは飛ばす馬が見当たらず、マイル戦らしからぬスローで流れるケースが多い。特に秋のマイルCSは顕著で、昨年は前後半800m47.6-45.0の瞬発力勝負でグランアレグリアが有終の美を飾った。ウインカーネリアンの流れに乗れる器用さは武器になる。

その昨秋マイルCS以来、久々にダノンザキッドが3着と馬券圏内に入った。これもそういった連動のもとでの結果であり、偶然ではない。ただしダノンザキッドがスローに強いかどうは微妙。今回も伸びてきたのは最後の11.6。その前の10.8-10.6の地点ではちょっと苦しそうな雰囲気。エンジンのかかりに時間を要するタイプで直線の長い競馬場は向くが、反面、瞬時の加速は苦手な様子。好走パターンに合致しそうなレースが少なく、歯がゆい現状が続きそうだ。秋は中距離出走という選択肢もあるのではないか。今回のゴール前の伸びを見る限り、好走は条件次第だが、重賞でもまだ十分戦える力は見せた。

シュリは次走またも恵まれるか

順番が前後するが2着は12番人気シュリ。関屋記念で二桁人気馬が馬券に絡むのは10年10番人気3着リザーブカード以来の記録。この10年1頭もなしを信用するのは正直すぎたか。昨年の谷川岳Sを秋山真一郎騎手騎乗、1番人気で逃げ切った馬ですっかり盲点だった。

レッドライデンが控えるなら、シュリの先手は想像できた。結局、今年の関屋記念はここ2年の谷川岳S勝ち馬のワンツー。やはりこのコースは他場にない独特なものがあり、コース実績には注目すべきだった。シュリはウインカーネリアンに可愛がられた側面も強く、次もまた同じように恵まれる可能性は高くないのではないか。

3番人気イルーシヴパンサーは11着。乗り替わり云々より、ここまで緩い流れで差し切るのは至難だった。最内枠から巧く馬群の外には導けたが、最低でも3着ダノンザキッドと同じ位置にはいたかった。オープン昇級後は前につけられなくなっており、展開待ちの状態がこれからも続きそうだ。


2022年関屋記念回顧展開,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。

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