【ヴィクトリアマイル】ファインルージュは前走ハイパフォーマンスを発揮 良血メイショウミモザも要注意

坂上明大

2022年東京新聞杯トラックバイアス,ⒸSPAIA

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ハイレベルな上位争い

古馬芝マイル女王決定戦・ヴィクトリアマイル。今年は大阪杯2着馬レイパパレやフェブラリーS3着馬ソダシ、長期休養明けの三冠牝馬デアリングタクト、海外遠征帰りのソングラインなどバラエティ豊かな面々が顔を合わせる。

ここでは、前哨戦組の勢力図を整理していきたい。

※記事内の個別ラップは筆者が独自に計測したものであり、公式発表の時計ではありません。

2022年東京新聞杯トラックバイアス画像,ⒸSPAIA


【東京新聞杯】
降雨のない日が続き、非常に乾燥した馬場状態での開催。極端なトラックバイアスは感じないが、末脚のよく伸びる馬場ではあった。レースはトーラスジェミニが軽快に飛ばして前後半3F34.7-34.3。過去10年の平均が35.3-34.2の東京新聞杯としては速めの流れで、先行勢が総崩れしたことからも後有利と評価する。

2着馬ファインルージュは馬体重16キロ増で余裕残しの仕上げ。また、直線ではなかなか進路を確保できず、自身の上がり3Fは11.5-11.3-11.2程度と脚を余す形でもあった。3着馬カラテは次走の中山記念でも2着と好走しており、上位3頭はいずれもハイレベルな走り。流れは向いたが、今回と同コースでこれだけのパフォーマンスを発揮できた点には高い評価が必要だろう。

上位馬以上のパフォーマンス

【中山牝馬S】
逃げ馬の多いメンバーだったが、最内枠の利を活かしてロザムールがハナ。3F別ラップ36.2-35.6-35.0の後傾1.2秒だが、テンの400mで4m以上上るコースレイアウトを考慮すれば決して楽なペースではなく、過去の中山牝馬Sでも前半3F36秒台前半の年は差し馬の台頭が目立っている。今年も結果的に差し馬が上位を独占する形となり、極端ではないものの後有利のレース展開と評価したい。

1着馬クリノプレミアムは中団大外からの差し切り勝ち。父オルフェーヴル×母父Giant's Causewayらしいパワフル、かつ俊敏な馬で、小回りコースはピッタリだ。その反面、大箱コースではワンパンチに欠き、東京芝ではいまだ未勝利。条件替わりに不安は残る。

2着馬アブレイズは馬体重14キロ減で馬体良化。母のSpecial=Thatchの4×5など機動力に長けた馬で、フラワーCと同舞台で復活の兆しを見せた。ただ、本馬も小回り向きの血統であり、福島牝馬Sの走りから揉まれる競馬は得意ではなさそうだ。

3着馬ミスニューヨークは2枠3番から経済コースを走り切る形。それでも、ラスト1Fはクリノプレミアムに伸び負けており、メンバーレベルを考慮しても高い評価は与えられない。

5着馬テルツェットは休み明けで馬体重8キロ増。それでいて、斤量56.5キロのトップハンデを背負い、レースでは出遅れ、かつ発馬直後に他馬と接触する場面も。差し届かなかったが、内容としては上位馬以上のパフォーマンスであった。

GⅠ上位勢を穴馬が一蹴

【阪神牝馬S】
連続開催後半でのBコース替わり初日だったが、良好な馬場状態がキープされており、内外のトラックバイアスは確認できず。レースはクリスティが軽快に逃げて前後半3F35.3-34.7の後傾0.6秒。阪神牝馬Sとしては速めのペースを刻んでおり、後方待機勢にも十分チャンスのある展開となった。

1着馬メイショウミモザは中団待機からの差し切り勝ち。父ハーツクライ(2005年有馬記念、2006年ドバイシーマクラシック)、母メイショウベルーガ(2010年日経新春杯、京都大賞典)、3/4同血の兄メイショウテンゲン(2019年弥生賞)という中長距離血統馬がマイルへの距離延長で一変して見せた。9番人気での激走だったが、フロック視は禁物だ。

2着馬アンドヴァラナウトはキングカメハメハ系×エアグルーヴ牝系というルーラーシップやドゥラメンテなどと同じニックス配合。特にドゥラメンテとは7/8同血の間柄であり、東京の中距離戦がピッタリの配合形といえるだろう。マイルは1F短い印象があるが、極端に速くはなりにくい牝馬限定戦であれば十分に対応可能だ。

3着馬デゼルは後方待機からしなやかな末脚を披露。フランス牝系らしいスローペースに強い中距離馬で、ペースとしては昨年の方が向いていただろう。スローペースならGⅠでも楽しみだ。

5着馬マジックキャッスルは2000mからの距離短縮で追走に苦労し、コーナーでは逆手前になる場面も。それでも、直線に向いてからは上がり3F2位の末脚を披露しており、さらに状態が上がれば昨年同様の好走も期待できるだろう。

秋華賞上位勢に注目

ファインルージュは東京新聞杯が強い競馬。Seattle Slewに焦点を当てた配合形も良く、GⅠでもヒケを取ることはないだろう。アンドヴァラナウトは待ちに待った東京替わり。エアグルーヴ牝系らしいしなやかな末脚を見せてほしい。雨馬場ではメイショウミモザの激走に要注意だ。

注目馬:ファインルージュ、アンドヴァラナウト、メイショウミモザ

ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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