【福島牝馬S】まくって新味アナザーリリック、前へ攻めたクリノプレミアム 福島重賞らしい猛ペースの脱落戦!

勝木淳

2022年福島牝馬ステークス回顧,ⒸSPAIA

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時計を要するタフな馬場

5月ヴィクトリアマイル前哨戦ながら、中山牝馬Sとの結びつきが強調される福島牝馬Sは、今年も中山牝馬S1着クリノプレミアムが2着。またもつながった。中山と福島の芝1800mは共通項も多いが、最後の急坂など相違点もある。

また時期的に天候の影響を受け馬場が悪化しやすい中山牝馬Sと、創設以来、良馬場以外だったのが09、10年のたった2回しかない福島牝馬Sでは同じ年でも問われる適性が違うこともある。たとえば20年の中山牝馬Sは不良、福島牝馬Sは良馬場。それでも結果はフェアリーポルカの連勝。好凡走の出し入れも必要だが、直結することも多い。見えない糸でつながっているのか。

今春の福島芝は例年以上にタフ。開幕週芝1200mは最初の芝だった土曜2R3歳未勝利1.10.3が最高タイム。平坦のわりに上がりがかかり、差しが決まる状態だった。ある程度上がりを要する馬場ということで、今年はことさら中山牝馬Sとつながるお膳立ては整っていた。

ハイペースを前から攻めたクリノプレミアム

だが、実際にはそこまで類似点の多い競馬ではなかった。中山牝馬Sはロザムールが逃げて1000m通過1.00.2。逃げ先行型がそろった組み合わせだったが、さほど速い流れではなかった。対して福島牝馬Sは短距離型キタイが参戦。ロザムールのハナを叩く形で注文をつけた。番手ロザムールが3コーナー付近で早々に脱落したように、1000m通過58.6は力のいる馬場状態を考えると、猛ペース。福島の重賞らしく小回りハイペースの脱落戦になった。

こういった流れを考えると、2着に敗れたクリノプレミアムの価値は高い。前走は外をまくってきたが、今回は1枠2番。動けない公算もあった。前半はインにいたが、前が飛ばし、馬群がばらけたところで、あえて前に出て外のスペースをとった。ペースが速いとわかった上で下げずに追いかけながらスペースを作った騎乗に馬への信頼を感じる。

結果的に後ろから差されたが、あたかも前走の再現のような競馬。クリノプレミアムの力はしっかり出せた。ちょっとだけ流れが速すぎた。改めて小回りをねじ伏せるような競馬が合う。

小回りで動いたアナザーリリック

そのクリノプレミアムを差し切ったアナザーリリックは通算8戦目で重賞初制覇。大事に使われてきた印象が強い。一方で新潟外回り2戦2勝と瞬発力勝負型の印象も強かった。スタート遅れ気味、道中は後方2番手ながら、構えすぎず3、4コーナーで積極的に攻めた結果、最後の直線でクリノプレミアムを射程に入れられた。この形ならば、今後は展開に泣く競馬も少なくなるのではないか。

優先権を獲得した本番はまだわからないが、東京のマイル戦となればNHKマイルC7着以来。当時の印象ではマイル向きではなく、スピードの持続力で見劣ったが、今回の流れで結果を出したことでどう変わるか。注目したい。

3着は引退レースのサトノダムゼル。勝負所で機動的に立ち回った1、2着に対し、こちらは後方から直線まで動かず、終い勝負にかけた。その分、距離ロスを抑えて回ってきた。昨秋復帰後から2戦0.3差、0.2差と異なる条件で着差を詰めていたように充実期にあった。母ダリシア、その父アカテナンゴ、ドイツ血脈の成長力を改めて証明。産駒に引き継がれてほしい。

5着ルビーカサブランカは大きな出遅れが痛かった。後半800m12.0-12.4-11.8-12.2と時計を要する流れを味方に最後は5着に突っ込んできた。やはり昨年暮れから充実期にある。小回り向きではなく、中山牝馬S、福島牝馬Sと振るわなかったが、舞台替わりで巻き返すだろう。

2022年福島牝馬ステークス回顧展開,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。

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