【マイラーズC】ベステンダンクが作る激流で真価見せたソウルラッシュ! いざ安田記念へ
勝木淳
ⒸSPAIA
またも4連勝で重賞制覇の4歳馬
朝から雨に見舞われた阪神の芝は、この春開催22日目。芝のレース数を抑えるなど工夫されてはいるものの、傷みは進む。開催残り1週という時点での降雨は厳しかった。
悪条件のレースをさらに厳しいものへ昇華させたのが逃げて4着のベステンダンク。道悪、阪神外回り芝1600mで緩めのペースも予想されるなか、先手を奪った同馬は番手に人気のホウオウアマゾンがいたこともあり、序盤からしっかりしたラップを刻む。前半800mは12.5-10.7-11.4-11.5、46.1。力のいる馬場でこのラップは厳しかった。パワーとスピードの持続力を試す流れを作り、状態のよくないインを通り、坂をあがってあわやという場面まで作った。レースレベルを引き上げた影の立役者といっていい。
前半からキツい流れになったことで、力のない先行勢は脱落していき、後半800mは11.4-11.7-11.6-12.5、47.2。ベステンダンクが限界を迎えるまで踏ん張り、急坂をあがるまで11秒台をキープ。残り200mは一気に時計を要する極限の世界。後方で脚をためたソウルラッシュにとって流れは確かに味方した。だが、たとえそうであっても、最後まで伸びるのは難しい状況。それを克服した以上はホンモノとみたい。
前走条件戦出走馬がマイラーズCを勝つのは90年メジロワース以来の記録。4連勝でGⅡ制覇。今年の4歳は中長距離のジャックドール、テーオーロイヤル、マイルのイルーシヴパンサーなど珍しく連勝馬が豊作。好メンバーが集いそうな安田記念もイルーシヴパンサーともども楽しみだ。得意の道悪なら上位陣逆転もある。
血統のよさが出てきた3着ファルコニア
ベステンダンクが演出した流れを番手から2着に粘ったホウオウアマゾンもなにかきっかけをつかんだ印象。これまではどちらかというとスローペースを先行して好走という結果だが、今回は相当キツい流れを耐えた。昨年勝ったアーリントンCは重馬場で前後半800m47.0-47.2と3歳にとって厳しい展開。似た状況で結果を出したということは、道悪適性はこちらも非常に高い。ただし、良績は阪神に集中しており、東京新聞杯は12着惨敗。本番はコース適性の壁を越えられるか、注目したい。できればハイペース希望だろう。
3着ファルコニアもイメージ一新の印象。これまではディープインパクト産駒らしく緩い流れの阪神外回り1600、1800mが適条件という戦績。事前の予想では展開利がありそうだったが、実際は厳しい流れ。川田将雅騎手がコメントしたように馬場も得意な状態ではなかった。それでもホウオウアマゾンと最後まで競り合い、3着確保。母カンビーナで全兄は長距離で活躍するトーセンカンビーナ。上がり35.8と時計を要する流れは血統的にも適性ありとみたい。兄に似つつあるという意味では折り合い次第で中距離もこなせそうだ。今後は評価を改めたい。
折り合いでいえば、6着レッドベルオーブは速い流れになっても、中盤まで折り合いに難しさを見せた。折り合いをつけようと馬群に入ったことがよくないのか、そもそも走りのリズムがマイルに合わないのか。最後は差を詰めてきており、前半で体力を消耗、能力を発揮できなかったようだ。デイリー杯2歳SレコードV、朝日杯FS3着の実力馬。もうひと花咲かせてほしい。
5番人気5着エアロロノアは道悪が合わなかったようで、2番人気7着カラテは4コーナーで追走一杯。ある程度時計を要する道悪は得意なクチなので、こちらは阪神が合わなかったか。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。
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