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【皐月賞】展開を味方に完璧だったジオグリフ、展開に泣いたドウデュース 思いは早くも日本ダービーへ!

2022/04/18 10:59
勝木淳
2022年皐月賞のレース結果,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

あえて先手を奪ったアスクビクターモア

牡馬クラシック戦線は抜けた馬が見当たらず、実力差が少ないまま、第一冠・皐月賞を迎えた。舞台は中山芝2000m。紛れやすい難コースで力差なしとなれば、カギを握るのは展開だ。

弥生賞ディープインパクト記念(以下、弥生賞)は2番手からアスクビクターモアが抜け出し。スプリングSはビーアストニッシドが逃げ切り。若葉Sもデシエルトの逃げ切り勝ち。各トライアルを逃げ、先行型が勝った。裏を返すと、それだけ鋭い決め手をもった馬がいないのではないかという見方もできる。そして本番は当然ながらこの3頭が顔をそろえる。活気ある流れになるのか、推理しがいのある展開だった。

決まった枠順はアスクビクターモアが1枠、ビーアストニッシドとデシエルトが7、8枠。結果としてこれが明暗をわけた。外枠2騎が1コーナーまでに先手をとりに内へ寄せていけば、各馬コーナーの入り方が難しくなる。だからこそ、被されることを嫌ったアスクビクターモアが最短距離を行ける利点をいかして先手を主張した。スタートでつまずいたデシエルトも無理に競りかけはしない。アスクビクターモアの逃げがレースの流れを左右したといっていい。

飛ばす必要がないアスクビクターモアがハナに行き、外からデシエルト、その背後にビーアストニッシド、インからコーナリングで前を目指すボーンディスウェイで隊列はすんなり。これでは動けない。前半1000mは12.6-11.0-11.6-12.2-12.8。向正面、ペースを落とし、息を入れながら進む。この時点で、控えた組は早めに動かないと厳しい。馬場のいい外を狙った2着イクイノックスも、馬場の悪い内側を走ることになったキラーアビリティも行きたがる素振りをみせ、リズムを乱す。アスクビクターモアと田辺裕信騎手が作るペースに苦労した。


計算ずくだったジオグリフと福永祐一騎手

後半1000mも12.3-12.3-12.0と、3コーナーに突入してもペースはあがらず、淡々とした皐月賞だった。逃げて5着アスクビクターモアは弥生賞で残り800mから上昇する持久力戦を勝った馬。前走より溜めた分、切れ味で負けた印象。ペースが上がったのは4コーナー手前、残り400mから。ゴールまで11.4-11.5。これでは勝負圏内は限られてしまう。

勝ったジオグリフはスタートを決め、内に入らず、かつ好位へ。勝つならここしかない。福永祐一騎手の確信がみえる。左前方に2着イクイノックスがおり、仕掛けのタイミングも計りやすかった。そのイクイノックスは道中で行きたがる場面があり、リズムを勝負所までに整え、極力、仕掛けを待った。だからこそ、残り400mまでペースは上がらなかった。イクイノックスの仕掛け次第で、後ろの組にもチャンスはあった。ジオグリフはイクイノックスの仕掛けに合わせられる位置にいた。なにもかも計算ずくのレースはお見事としか言いようがない。

かつては横綱級の評価

思えばジオグリフは6月東京の新馬戦でアスクビクターモアを破り、勝利。次走札幌2歳Sでは2着アスクワイルドモアに4馬身差をつける圧勝。この時点で世代屈指の横綱クラスといった評価だった。だが、初のマイル戦朝日杯FSで流れに乗れず、最後は猛追するもドウデュースの5着。ここで評価が揺らいだ。現役時代に短距離で活躍した新種牡馬ドレフォンの仔。皐月賞はもしや距離がとの思いもよぎる。しかし、マイル戦での前半の走りは明らかに中距離型のもの。評価を下すのは早かった。

年明け初戦、共同通信杯はダノンベルーガの2着。これもダノンベルーガが際立ち、着差以上の評価を相手に与えることになった。この2戦を冷静に分析したかった。これで前走共同通信杯は2012年以降【6-0-2-9】、その勝率35.3%。東京芝1800mでのパフォーマンスは能力をストレートに示す。2着から皐月賞を勝ったのは15年ドゥラメンテ以来。当時は皐月賞フルゲート割れに助けられたが、ジオグリフは賞金面の不安なし。もはやトライアルは2月共同通信杯まで含めて考えなければいけない。ジオグリフ優勝のヒントはたくさんあった。反省したい。

日本ダービーで巻き返すドウデュース

2着イクイノックスは久々で気持ちが高ぶっていた印象。それがレースに影響した。ここを使って状態は上向くだろう。ドレフォンと同じく新種牡馬、キタサンブラックが父。父は日本ダービー大敗だが、仔は東京スポーツ杯2歳Sの内容から問題ない。間隔が詰まるのは好材料ではないか。新種牡馬のワンツー、木村哲也厩舎のワンツー。今度は同厩ライバルを逆転できる。

3着ドウデュースは前後半1000m1.00.2-59.5、レース上がり34.9の中を4コーナー14番手、明らかに展開に泣いた。上がり33.8はメンバー最速。スタート直後、内から外から前に入られて位置を下げたのは痛かったが、強引な勝負を挑まずあえて直線勝負に徹したフシがあり、武豊騎手が次走に向けて仕込んでいた印象がある。

次走という意味では、4着ダノンベルーガは緩い流れ、一団で進む展開になり、馬場状態が悪い内側を走らされた。能力を発揮していない。13着キラーアビリティも終始インコースを走り、外に出すタイミングがなかった。大敗は気になるが、位置取りも悪く、リズムを乱し、流れに乗れなかった。日本ダービーでホープフルSのように先行できれば、巻き返す余地はある。なんとなくロジユニヴァースを思い出す敗戦だった。



2022年皐月賞のレース展開,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。



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