【皐月賞】ここはデシエルトの相手探し 初芝の若葉Sで弥生賞上位2頭と同等の指数を記録
山崎エリカ
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今年は前有利の展開になる可能性も十分
今年の皐月賞出走馬は、末脚を生かす競馬で勝ち上がって来た馬が大半。逃げ、先行馬が手薄となった。中距離以上ではほぼスローペースでしか逃げない岩田康誠騎手のデシエルトが逃げた場合、向正面で捲られる可能性もあるが、今回は枠の並びとテンの速さからビーアストニッシドが逃げ、デシエルトが2番手という可能性が濃厚。ビーアストニッシドは前に行ってしぶとさを生かしたいタイプなので、捲らせないペースで逃げる可能性が高く、その隊列なら前有利の展開になる可能性が高いと見る。
能力値1~5位馬の紹介
【能力値1位 ドウデュース】
昨年9月の小倉新馬戦でラスト2F11秒4-11秒1の加速する流れで差し切り勝ちし、高い素質を見せつけた。その後は期待どおりに成長し、朝日杯FSを制した。前走の弥生賞でも好位の外を追走して2着。ロジハービンに捲られ位置を下げ、4角で外のボーンディスウェイに接触する不利もあった。しかし進路確保はスムーズで、前哨戦としては悪くない走りだった。
今回の皐月賞で有力視されるイクイノックス、キラーアビリティは昨年からの休養明けの一戦。今回は高い能力でどこまで結果をだせるか。前記2頭の本当の狙いは日本ダービーだと推測される。対照的にドウデュースはしっかりと前哨戦から始動し、皐月賞に向かう点は好感が持てる。
しかし同馬の朝日杯FS勝ちは、逃げ馬が揃いレースが緩みなく流れたなか、勝ちにいったセリフォスをマークし、中団外から差し切っての優勝。かなり展開、馬場に恵まれての勝利だった。このあたりは先週の桜花賞で4着に終わったサークルオブライフの阪神JFのレース内容によく似ている。
ドウデュースの成績はまとまっており、強い馬ではある。しかし、勝ちにいって勝てるほど強いかというと、やや微妙に感じる面がある。かつて弥生賞2着から皐月賞馬となったナリタタイシンは、皐月賞本番では「ユタカマジック」と呼ばれた追い込みが炸裂し勝利した。約30年の時を経て、ユタカマジック再現となるか。
【能力値1位 デシエルト】
『2歳馬ジャッジ』で何度も綴ったように、現3歳世代は牡牝ともに芝路線は例年と比較したてやや低調気味に指数が推移してきた。しかし、ダート路線は好指数勝ちの馬が続出するハイレベルな状態。おそらく今年の芝クラシック路線はダート路線からの馬が天下を獲るのではないかと、昨年暮れの時点から思うようになっていた。
そこに現れたのがデシエルト。同馬はダートの新馬戦で折り合いを欠きながら、好指数勝ちした。飛ぶような走法でダート馬に思えないことから、この馬が皐月賞を獲るのではないかと注目していた。年明けのデビュー2戦目ダート1勝クラスも好指数勝ち。まだまだ余裕を感じさせる走りだった。これはデビューからダートを2連勝し、その後皐月賞馬になったヤエノムテキの再来だと思うようになった。
こうなると初芝の一戦となる皐月賞トライアルでは負けて、皐月賞は抽選出走、ノーリーズンのような人気薄での皐月賞優勝に期待していた。しかしデシエルトは初芝の一戦となった若葉Sを逃げて3馬身差の圧勝。能力の高さは知れ渡ってしまった。
同レースで記録した指数は今回のメンバーに入っても全く劣らない。確かに若葉S当日は、内有利の馬場でやや展開に恵まれた面はあったが、高い潜在能力なくして初芝の一戦を楽勝することはできない。岩田康誠騎手がレース後に吠えたのも、この馬の能力の高さに興奮し、それを伝えたかったからだろう。
今回は外枠に入った。これもスタートにやや不安のあるデシエルトにとっては悪くない。スタート直後が遅くともかつてのヴィクトリーのように、1角までには前に行けるはずだ。レースが終わってみれば「デシエルト1強だった」という走りに期待したい。
【能力値3位 アスクビクターモア】
昨年6月の東京新馬戦は上位3頭が強くハイレベルな決着だった。1着ジオグリフ、2着アサヒ、それ以上に外枠から逃げ馬に並びかけ、3角手前でハナに立ち3着になったアスクビクターモアには、強さを感じた。その評価は間違っておらず、その後は着実に成長、前走は弥生賞を優勝した。
ただ前走はクラシック出走権利を掴みにいく仕上げだったはず。今回における状態面での上積みは、そこまで大きくないと見る。それでも前走は勝ちにいく正攻法の競馬で優勝、レース内容は濃く、着差以上に価値は高い。こちらの想定以上に潜在能力が高い可能性も感じた。過大評価もできないが軽視もできない。
【能力値4位 ジオグリフ】
昨年6月のハイレベルな新馬戦を勝利すると、次走で札幌2歳S勝ち。強さとスタミナの豊富さも感じさせた。昨年暮れの朝日杯FSはそれ以来の一戦。五分のスタートを切ったものの、徐々に下がり後方2番手からの競馬となった。札幌2歳Sでは出遅れ後方待機策、そこからさらに距離短縮、これではレースの流れに乗れないのは当然だろう。5着敗戦は仕方のないところだった。
前走の共同通信杯は2列目の中目を追走して2着。稍重で勝ちを意識しての競馬、少し折り合いを欠いてブレーキを掛けながらの2着は高く評価できる。順調に使われている強み、前走で稍重を経験済みなのは、馬場状態がどうなるかわからない今回ではプラスになりそうな気配。能力の高さと順調さを考えれば、上位争いする可能性は高い。
【能力値4位 ビーアストニッシド】
デビュー3戦目の京都2歳Sで逃げて2着と好走。11月の阪神芝2000mは先行馬に厳しい馬場だったが、しぶとい粘りを見せたあたり、豊富なスタミナを感じさせた。その後シンザン記念は外からハナを主張する馬が多く、自分の競馬ができなかったが、共同通信杯ではタフな馬場を逃げて3着。そしてスプリングSを逃げて優勝した。同馬は自分の形で競馬が出来れば、スタミナ豊富でかなり強い。
今回はデシエルトとのポジション争いがどうなるか。デシエルトはハイペースでは逃げない岩田康誠騎手が鞍上だけに、ビーアストニッシドがハナを主張すれば、控える可能性が高い。2頭がともに能力を出し切れる並びになれば、ヴィクトリー、サンツェッペリンの行った行ったで決着した、2007年皐月賞のような競馬になる可能性も十分にあり得る。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ドウデュースの前走指数「-16」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.6秒速い●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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