【皐月賞】“世代最高”の2歳戦は東スポ杯イクイノックス キラーアビリティは前走のトラックバイアスに注意

坂上明大

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世代トップのパフォーマンス

牡馬クラシック第一戦・皐月賞。朝日杯FS勝ちのドウデュースとホープフルSを制したキラーアビリティが地力では上位だが、東京スポーツ杯2歳Sを勝ったイクイノックスや共同通信杯勝ち馬ダノンベルーガなど多くの有力馬とはまだ勝負付けが済んでいない。まずは、参考レースを分析しながら各馬の地力と適性を見極めていく。

2022年皐月賞の参考レース,ⒸSPAIA



【東京スポーツ杯2歳S】
Cコース替わり初日の高速馬場で、同日2Rには2歳レコードが更新された。レースはナバロンがハナを切ったが、アルナシームが抑え切れずに競りかける形。前半800mは48.6秒と落ち着いたが、後半1000mは57.6秒というハイレベルなスピード勝負となった。

1着馬イクイノックスは後方のインで脚をタメ、残り400m強からスパート開始。自身の上がり3Fは32.9秒と2位アサヒに0.6秒差をつけており、ラスト1Fの数字からもこのメンバーでは力が違ったようだ。また、2歳時の芝1800m戦で後半1000m57.6秒以下を計時したのはコントレイルの2019年東スポ杯2歳Sとジオグリフの新馬戦に次ぐ3例目(注:その後、サリエラが勝った新馬戦も後半57.6秒)。勝ち時計や個別ラップを考慮すると、コントレイル>イクイノックス>ジオグリフといったところか。本世代の2歳戦で最もレベルの高いパフォーマンスであった。

4着馬ダンテスヴューは序盤でリズムを崩しはしたが、後方待機勢としては末脚に物足りなさを感じる結果。GⅠとなると大幅な成長が求められる。



トラックバイアスに注意

【ホープフルS】
馬場の傷みは強かったが、トラックバイアスは内有利と評価。レースはグランドラインが気風良く逃げて前後半1000m60.1-60.5。ただ、2番手以降は同60.7-59.9と例年のホープフルSと同程度のペース。内の先行馬に有利なレースとなり、次点が内々で脚をタメた馬に向いた形だ。

1着馬キラーアビリティはスッと好位のインにつけ、道中は折り合いもピッタリ。レースセンスの良さが目立った反面、トラックバイアスに恵まれた感も否めないか。

2着馬ジャスティンパレスは道中でゴチャつきながらもキラーアビリティと差のない末脚を披露。速い脚はないが、末脚の持続力はGⅠでもヒケを取らない。ただ、心身ともに幼さが目立っただけに、前走からの成長は必須要件だろう。

3着以下は上位2頭にやや力差を見せつけられた形か。ただ、6着馬マテンロウレオは大外を回している分、着順以上の評価が必要だ。



負けて強しの2歳王者

【弥生賞】
リューベックがハナを叩き、前半1000m61.1秒の弥生賞らしい緩い流れ。ロジハービンのマクリでペースは上がったが、その後の同馬の失速で後続、特にドウデュースとラーグルフは後手を踏む形となってしまった。先行馬にうまく抜け出された形で、前有利と評価したい。

1着馬アスクビクターモアは2番手で流れに乗り、しぶとい末脚で粘り込み。展開に恵まれた感は否めないが、本番でもハマる可能性はあるだろう。

2着馬ドウデュースは先述の通り勝負どころで後手を踏む形に。前哨戦仕上げでもあり、敗れたとはいえ負けて強しの競馬であった。ただ、ラスト1Fで大きく失速したあたり、距離は1600~1800mがベターか。

4着馬ジャスティンロックは3角で挟まれる不利。トラックバイアスも向かず、巻き返しに期待したい。



血統面の魅力も大きいイクイノックス

ここまでに見せてきたパフォーマンスでは、東京スポーツ杯2歳Sのイクイノックスと共同通信杯のダノンベルーガを上位に評価。小回り適性も考慮すると現状はイクイノックスが一枚上手か。母シャトーブランシュ(15年マーメイドS)、半兄ヴァイスメテオール(21年ラジオNIKKEI賞)という血統から初の小回りコースにも難なく対応してくるだろう。馬場が渋ればデシエルトにも要注意。

注目馬:イクイノックス、デシエルト

※記事内の個別ラップは筆者が独自に計測したものであり、公式発表の時計ではありません。

ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。


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