【桜花賞】1番人気は7連敗中、牝馬三冠初戦の歴史　令和でも活躍する桜花賞馬の血

2022/04/05 06:00

緒方きしん

ⒸSPAIA

この記事のレース

桜花賞

GⅠ

4月10日(日)　阪神11R

バラエティ豊かな血統馬が集結

大阪杯では1番人気エフフォーリアが9着に敗れる大波乱。フェブラリーSのレッドルゼル（6着）、高松宮記念のレシステンシア（6着）に続き、今年の中央GⅠでは1番人気馬が3連敗となった。

今週は桜花賞。牝馬三冠の初戦に、今年も多くの素質馬が集まった。ハービンジャー産駒ナミュールをはじめ、ロードカナロア、キズナ、エピファネイア、シルバーステートやロゴタイプの産駒など、様々な血統の馬たちが桜の女王を目指す。

昭和にはワカクモやテスコガビー、ハギノトップレディらが、平成にはアグネスフローラやキョウエイマーチ、ブエナビスタらが制した伝統の一戦。近年もグランアレグリア、デアリングタクト、ソダシといったスターホースを多数送り出している。今回は、桜花賞の歴史を振り返る。

1番人気は7連敗中

桜花賞、過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA

ここ5年、1番人気馬は未勝利。最後に1番人気馬が桜花賞を制したのは2014年ハープスターで、そこからは1番人気が7連敗している。かわりに、2018年からはアーモンドアイ、グランアレグリア、デアリングタクト、ソダシと2番人気馬が4連勝中だ。

1番人気馬は連敗中とはいえ大きく崩れているわけではなく、2021年サトノレイナスや2020年レシステンシア、2018年ラッキーライラックは2着、2017年ソウルスターリングが3着と馬券圏内には入っている。ここ5年で最も着順が悪かった1番人気馬は2019年ダノンファンタジーだが、それでも4着と掲示板は確保した。

ただし上位3頭すべてが人気馬で決まるかと言えばそうではなく、2021年3着ファインルージュは8番人気、2020年3着馬スマイルカナは9番人気、2019年2着馬シゲルピンクダイヤは7番人気と、近年は8番人気前後の伏兵が好走する例も多い。2017年の勝ち馬レーヌミノルも8番人気で、2着の3番人気リスグラシューとの馬連は170倍という高配当となった。

悲運の名牝、ラインクラフト

2005年はフィリーズレビュー勝ち馬ラインクラフトが勝利。それまで福永祐一騎手が鞍上を務めたシーザリオ、ラインクラフトの2頭が1、2番人気となったレースで、福永騎手が騎乗したラインクラフトがアタマ差でしのぎ切った。シーザリオは猛追及ばず2着だったが、ハイレベルな桜花賞を盛り上げた。ラインクラフトはその後NHKマイルCでも勝利し、秋華賞や高松宮記念でも2着に食い込むなど才能豊かな走りを見せていた。

しかし悲劇は突然訪れる。4歳の夏、放牧先での調教中に急性心不全を発症しこの世を去ってしまったのである。世代屈指のスピードを持っていただけに、その急逝は非常に大きな損失だった。

彼女の無念を晴らすかのように、桜花賞で競いあった同期の牝馬たちは競走馬としても母としても、大いに活躍した。

桜花賞の2着馬シーザリオはアメリカンオークスを制すると、母としてエピファネイアやサートゥルナーリア、リオンディーズといったGⅠ馬を輩出。稀代の名繁殖牝馬として、歴史に名を残した。また、同レースで3着のデアリングハートも孫世代から、無敗の牝馬三冠を達成したデアリングタクトを送り出している。

4着エアメサイアも、朝日杯FS、マイルCS、フェブラリーSなどで2着の実力派エアスピネルらを輩出。それ以外でも11着馬ペニーホイッスルの孫として東京ダービー馬エメリミットが、13着馬ショウナンパントルの仔としてNZT勝ち馬ショウナンアチーヴなどが生まれた。

令和でも輝く、桜花賞馬たちの血

先週のダービー卿CTで勝利したのはタイムトゥヘヴン。母は2006年の桜花賞を制したキストゥヘヴンであり、母父アドマイヤベガは、1993年桜花賞馬ベガの子供である。桜花賞馬の血が豊かに流れる一頭が、マイル重賞で馬連346.1倍の波乱を巻き起こした。

他にもメジロラモーヌのひ孫グローリーヴェイズや、キョウエイマーチの孫で昨年のBCディスタフを制したマルシュロレーヌなど、桜花賞馬の子孫たちは近年も活躍している。

今年の桜花賞に挑戦する馬たちの中にも、桜花賞馬の血を持つ馬がいる。キョウエイマーチを曽祖母に持つのがチューリップ賞勝ち馬ナミュールだ。マルシュロレーヌの偉業で勢いに乗る牝系の出とあって、より一層、注目が集まる。

バリエーション豊かな種牡馬たちの産駒、桜花賞馬の子孫たちによる好勝負を期待するとともに、各馬が無事に現役時代を走りきり、母としても活躍することを願う。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。